つまり、クエストを受けたプレイヤー、この場合は浅野燼自身だけが炎ネズミを倒して炎鼠の毛皮をドロップさせることができる。他のプレイヤーは入手できず、当然直接購入することもできない。さらに他人とパーティを組んで狩りをすると、ドロップ率が下がってしまう。人数が多いほどドロップ率は低くなるのだ。
ダニエルから後続クエストを受け取った後、燼は彼の家から出て扉を閉めて振り返ると、すぐに周囲から注がれる視線の数々を感じた。多くのプレイヤーが足を止め、燼を指差して見つめている。
先ほど燼がこの家に入った時点で、多くのプレイヤーが気づいていた。そのため、この一帯には普段よりも多くのプレイヤーが集まっていた。彼らは燼が出てくるのを待ち、様子を見ようとしていたが、その多くは純粋な好奇心からではなかった。
前世も今生も、燼は非常に明確に理解していた。この世界には「匹夫無罪、懐璧其罪」という言葉通りの人間が多いということを。序盤の隠しクエストは大ギルドでさえ重視するものだ。もしこれらのプレイヤーが単なる見物人だと言うなら、誰も信じないだろう。
燼は数人が自分に向かって歩いてくるのを見た。彼はフードを被り、再び顔を上げると、周囲を見渡してから階段を降りた。
「通してくれ」燼は淡々と言った。無表情のまま、彼は混雑するプレイヤーたちの間を抜け、手慣れた様子で脇道の路地に入っていった。
近くにいたタイタンフォールギルドの盜賊は、二人の仲間を連れて燼が路地に入るのを見て、眉をひそめ、嘲笑した。
「こいつは勇敢なのか、それとも馬鹿なのか。自分から路地に入るとは」
そう言うと、彼はすぐに二人の仲間と共に人ごみを掻き分け、後を追った。
榮耀の剣では、システム都市でも絶対的な安全区域というわけではない。ここでのPK争いは衛兵に逮捕され罰せられるが、争うことそのものが禁止されているわけではない。むしろ、衛兵の巡回がない路地では、毎日のようにプレイヤー同士の衝突による流血事件が起きている。
燼のような新米魔導師が積極的に路地に入るとは、無知なのか無謀なのか分からない。
路地に入った燼は絶えず周囲を見回しながら、記憶の中の光景を少しずつ思い出していった。まるで地図のように、それらは彼の頭の中に鮮明に刻まれており、本能的に燼の動きを導いていた。彼は数回曲がり、狭い地下通路を抜けると、町の広場に出た。
前世で燼は、この場所で何度も敵の追跡から逃れた経験があった。そのため、多くの都市の路地について詳しく覚えていた。鋭い洞察力と冷静な判断力のおかげで、燼はいつも危機を脱することができた。タイタンフォールギルドが町全体を封鎖して彼を追い詰めても、町から逃げ出して活動することができたのだ。
本来なら燼のような実力者は、多くの顧客から依頼を受けられるはずだった。しかしタイタンフォールとの関係で、帝國陣営の巨大ギルドの怒りを買うことを恐れ、誰も彼に仕事を依頼しなかった。そのため燼は単純な金策や素材集めをし、匿名で販売して日々を過ごすしかなかった。
何人もの追っ手を巧みに振り切った後、燼はカソ町の西門から出て、野外へ向かった。大通りに沿って進んでいく。
炎ネズミは、カソ町の西方にいるLv0のモンスターだ。攻撃力が極めて高く、防禦力が極めて低い群れで生活するモンスターである。その強さのため、システムから与えられる經驗値も相当高く、二三級のプレイヤーたちのレベリングスポットとなっている。