Baixar aplicativo

Capítulo 14: 第十四話 道長の苦悩

 査問会の判決が下されたその夜、藤原家の屋敷は重苦しい空気に包まれていた。蓮麻呂は自室で荷物をまとめながら、明日の出発に備えていた。持参できるのは最小限の私物のみ。長年住み慣れた部屋ともお別れだった。

「若様……」

 小菊が目を真っ赤に腫らして現れた。昼間の判決を聞いて以来、ずっと泣いていたのだろう。

「荷造りを手伝わせてください」

「ありがとう、小菊。でも、君まで涙を流すことはない」

 蓮麻呂は優しく微笑みかけた。しかし、その笑顔の奥には深い悲しみが隠されていた。

「私は若様を信じています」

 小菊は震え声で言った。

「若様が妖怪と契約を結ぶような方ではないことを」

「小菊……」

「だから、きっといつか真実が明らかになって、戻ってこられるはずです」

 その純粋な信頼に、蓮麻呂の胸が熱くなった。この世界で、心から自分を信じてくれる人がいる。それだけで、どれほど救われることか。

「君の気持ちは嬉しい。でも、僕はもうこの家には戻れないだろう」

「そんなことありません」

 小菊は強く首を振った。

「若様は必ず偉大な陰陽師になられます。そして、この家に栄光をもたらされるのです」

 その時、襖の向こうから足音が聞こえた。重く、威厳のある歩調。道長だった。

「小菊、少し席を外してくれ。父上が来る」

「はい」

 小菊は深く頭を下げて退室した。父と息子、二人だけの最後の対話が始まろうとしていた。

 道長は部屋に入ると、しばらく無言で蓮麻呂を見つめていた。その表情には、複雑な感情が入り混じっている。

「すまない」

 最初に出た言葉は、意外にも謝罪だった。

「父上?」

「今日の査問会で、お前を庇うことができなかった」

 道長の声には深い後悔が滲んでいた。

「父親として、情けない限りだ」

 蓮麻呂は父の苦悩を理解していた。政治的立場と家族への愛情の板挟みになった時、道長は政治を選ばざるを得なかった。

「お気になさらないでください。父上のお立場を考えれば当然のことです」

「当然……か」

 道長は苦笑いを浮かべた。

「しかし、父親として、これほど辛いことはない」

 道長は懐から小さな包みを取り出した。

「これを持って行け」

「これは……?」

「古い霊石だ。代々藤原家に伝わる秘宝の一つだが、お前に渡しておきたい」

 蓮麻呂は包みを開いた。中には美しい青色に光る小さな石が入っている。触れた瞬間、豊富な霊力を感じ取ることができた。

「父上、このような貴重なものを……」

「お前にこそふさわしい」

 道長は息子の肩に手を置いた。

「この石は、真に優秀な陰陽師にのみその力を示すと言われている」

「でも、今の僕は追放の身です」

「追放されようと、お前は私の息子だ」

 道長の声に力がこもった。

「藤原の血を引く者として、誇りを忘れるな」

 父の言葉に、蓮麻呂の目頭が熱くなった。政治的には息子を見捨てざるを得なかった道長だが、父親としての愛情は変わらずにあった。

「実は」

 道長が続けた。

「今回の件について、私なりに調べてみた」

「調べる……ですか?」

「証拠品の出所、証人の身元、契約書の筆跡……全てが巧妙すぎる」

 蓮麻呂は驚いた。父も陰謀の存在に気づいていたのだ。

「やはり、仕組まれたものだったのですね」

「間違いない。しかし、相手が巧妙すぎて証拠を掴めない」

 道長の拳が握り締められた。

「政治的な立場上、公然と異議を唱えることもできない」

「犯人の見当は?」

 道長は躊躇してから答えた。

「橘家が関与している可能性が高い。しかし……」

「しかし?」

「身内にも協力者がいる可能性がある」

 その言葉に、蓮麻呂の血が凍った。身内とは、兄たちのことを指しているのだろうか。

「兄上たち……ですか?」

「確証はない」

 道長は苦しそうに言った。

「しかし、お前の実力向上に対する彼らの反応は異常だった」

 蓮麻呂は思い返した。確かに、兄たちの嫉妬は想像以上に深刻だった。それが陰謀への加担につながったとしても、不思議ではない。

「父上、僕はどうすればいいのでしょうか?」

「生き延びろ」

 道長の答えは明確だった。

「鬼ヶ島は確かに危険な土地だ。しかし、お前なら必ず道を見つけられる」

「そんな根拠は……」

「根拠はある」

 道長は微笑んだ。

「お前の本当の実力を、私は信じている」

 その瞬間、蓮麻呂は悟った。父は全てを察していたのだ。隠していた実力も、現代科学との融合理論も。

「父上……」

「詳しくは聞かない」

 道長が手を上げて制した。

「しかし、お前が特別な才能を持っていることは間違いない。それを信じて、新天地で花を咲かせろ」

 父の信頼と期待が、蓮麻呂の心に勇気を与えた。追放という絶望的な状況だが、全てが終わったわけではない。

「分かりました。必ず、父上のご期待に応えてみせます」

「うむ。そして、いつか必ず戻ってこい」

 道長は立ち上がった。

「その時は、堂々と藤原家の門をくぐるのだ」

 父が部屋を出て行った後、蓮麻呂は霊石を大切に懐にしまった。これは単なる石ではない。父の愛と信頼の証だった。

 翌朝の出発まで、あと数時間。蓮麻呂は最後の夜を、故郷への想いと共に過ごした。辛い別れではあったが、それは同時に新たな冒険の始まりでもあった。


next chapter
Load failed, please RETRY

Presentes

Presente -- Presente recebido

    Status de energia semanal

    Rank -- Ranking de Poder
    Stone -- Pedra de Poder

    Capítulos de desbloqueio em lote

    Índice

    Opções de exibição

    Fundo

    Fonte

    Tamanho

    Comentários do capítulo

    Escreva uma avaliação Status de leitura: C14
    Falha ao postar. Tente novamente
    • Qualidade de Escrita
    • Estabilidade das atualizações
    • Desenvolvimento de Histórias
    • Design de Personagens
    • Antecedentes do mundo

    O escore total 0.0

    Resenha postada com sucesso! Leia mais resenhas
    Vote com Power Stone
    Rank NO.-- Ranking de Potência
    Stone -- Pedra de Poder
    Denunciar conteúdo impróprio
    Dica de erro

    Denunciar abuso

    Comentários do parágrafo

    Login