家の物を買い揃えようとすると、すぐに何台分にもなる。
幸い配送してもらえる。
詩織は選ぶことに専念するだけでいい。
着信音が鳴った。通路には彼女一人だけ。表示された名前を見た瞬間、頭が少し痛くなった。「……うん?」
「松田詩織、いつ帰国したの?あなたのウェイボーを見なかったら、死ぬまで連絡する気なかったでしょ?」電話の向こうで女性が怒った声を上げた。
報告しようと入ってきた秘書さえも脇に立たされている。
「松田詩織、ずいぶん図々しくなったじゃない。ファンたちに言っちゃおうか? みんなが憧れてる西村志乃が、裏でどんな人か教えてあげようか」
「あぁ、やめてよ菜摘姉御!ちゃんと話そうよ。同じ会社なんだし、助け合わなきゃね?昨日家に着いたばかりで、疲れて一晩寝てたくらい、いいでしょ?電話しようと思ってたのに、まさか先にかけてくるなんて、さすが息ぴったりだね」菜摘姉御は、彼女が盛世にいた頃の担当者で、今でも彼女が心から尊敬している人物だった。
「出てけ!」
「へへっ、菜摘姉御。やっぱり一番優しいのは姉御だね」
「今夜、蘭亭クラブのいつもの場所ね。来なかったら、誰かに縛らせてでも連れてくるから」
姉さん、ここは法治国家ですよ。
言い終わる前に、ツーツーツーと電話は切れてしまった。
家に配送された物を片付け、ミルにもたっぷり食べさせた。
こののんびりした午後、詩織はハンモックに身を預けていた。お腹いっぱいのミルも外に連れ出して日向ぼっこさせる。「ねぇ、いつ大きくなるの? 大きくなったら、一緒にベッドで抱っこして寝られるのにね」
(ミル:私が大きくなる頃には、君は別の男の腕の中にいるんだろうね)
午後4時か5時頃、LINEの通知音が鳴った。
真上からの陽光が少しずつバルコニーの外へ移り、影の中にいた彼女は手を伸ばして光の中でひらひらと振った。
気分良く携帯を開いた。
友達追加のメッセージだった。
名前は「私の社長はちょっとカッコいい」
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なんてあからさまなお世辞。
追加メッセージは「お金を返す」。
詩織は「承認」を押してから1分後、金を送られた。
多くも少なくもなく、ちょうど1000円。
その後にもう一つメッセージが来た。
私の社長はちょっとカッコいい「助けてくれてありがとう。いい人には、きっと幸せが訪れるよ」
詩織「……」
あぁ!
お金も返してもう関わることはないだろうと思い、削除しようとした。だが、プロフィールを開いた瞬間、彼女の視線は紹介欄に釘付けになった。
星遠グループという4文字が彼女の視線を強く引きつけた。
少し手が震えながらその人のLINE VOOMをタップした。
相手は頻繁に投稿しているようだった。
最新の投稿はちょうど数時間前のものだった。
「今朝、社長に車から降ろされたけど、今日も変わらず社長に全力でエールを送る一日!」
詩織は今朝の出来事を思い出し、思わず「ぷっ」と吹き出した。
次々と下にスクロールした。
「社長と一緒に帰国。あぁ、やっぱり祖国の懐ってあったかい!」
日付は29日、つまり昨日?
なんて偶然。彼女も昨日帰ってきたのか。
「海外生活も3ヶ月目。社長がなんでそんなにM国にこだわるのか分からない。もう全部片付いたのに。稼ぎすぎて飽きたのかな。でも隣が映画会社だから、毎日いろんな金髪碧眼のお姉さんを見放題」
M国の映画会社?場所を見ると、彼女がこの半年以上働いていた場所ではないか。
「今日は社長の機嫌が最悪。大事にしてた花瓶まで放り投げちゃった。外はザーザーの大雨。お願い、私のボーナスだけは無事でいて……」
日付は去年の11月11日。
なぜそんなに覚えているかというと、その日に友達に無理やり合コンに連れて行かれたからだ。