บท 12: 好きにすればいい

「疲れているようね」アリアはケインの書斎に入りながら言った。彼女は盆を持っていた。「おやつとお茶を持ってきたわ。休息が必要よ、私のアルファ」

アリアは白いドレス姿で美しく見えた。彼女は奴隷として生まれたにもかかわらず、まるで群れの高位の獣人のように見えた。過去3年間、彼女がケインの傍にいた唯一の女性だったため、人々は彼女をケインの女として敬意を払っていた。

彼女が群れの未来のルナになるだろうと言う者さえいて、アリア自身もそう考えていた。

アルファ・ケインのメイトは第一子とともに亡くなっており、二度目のメイトを得る可能性は極めて低かった。

二度目のメイトを見つけることは奇跡に等しかった。非常に稀であったが、全く前例がないわけではなかった。

しかし、彼らは早急に群れを安定させる必要があり、ルナの存在はアルファがその地位を永遠に空席にはしないという安心感を人々に与えるだろう。それは血統の保証にもなるはずだった。

「ありがとう、アリア」ケインは目の前の書類から顔を上げることなく言った。それらはすべて、二つの群れの統合に反対する請願書だった。この大陸の勢力バランスが崩れるというのが理由で、ケインにとってはおかしな話だった。

彼らは、ケインの群れがブルームーンパックに吸収されそうになった時には気にも留めなかったのに、今になって彼が同じことをしようとすると騒ぎ立てているのだ。

「このお茶で良く休めるわ」アリアは茶葉を入れ始めた。

「良い休息なんて永遠にないさ」ケインはそれらの馬鹿げた請願書への返答を書くことに集中したまま言った。本当なら正式な言葉遣いの代わりに呪いの言葉でも書き込みたかったが、現状では彼の民は新たな戦争を起こす余裕はなかった。

クーデターは両陣営から多くの優れた戦士たちの命を奪っていた。彼がこの地位に就くために、多くの者が命を落としたのだ。

「はい、まずこれを飲んで」アリアは彼の手から書類を取り上げ、お茶を差し出した。「5分だけ休憩して、必要なのよ」

アリアは彼の後ろに回り、凝り固まった肩をマッサージし始めた。ケインがお茶を飲む間、彼女は彼をリラックスさせた。これは奴隷時代に、ジェラルドの愛人たちが彼を神のように扱っていた様子から学んだものだった。

彼女は、ジェラルドが喜んでいた様子を覚えており、ケインにも同じように感じてほしかった。