第7話:復讐の舞台
[雪乃の視点]
創星エンタープライズの株式公開記念パーティー会場は、まばゆいばかりの光に包まれていた。
シャンデリアの煌めき、ゲストたちの華やかなドレス、そして舞台上に立つ玲司の姿。
私は会場の隅で、夫のスピーチを聞いていた。
「創星エンタープライズがここまで成長できたのは、皆様のご支援と、そして何より私の妻のおかげです」
玲司の声が会場に響く。
観客席からは拍手が起こった。私に向けられる視線を感じる。
「実は、私の妻は現在妊娠しております」
会場がざわめいた。
私の心臓が激しく鼓動する。
「今後は副社長を辞め、家でゆっくりと過ごす予定です」
その瞬間、私の血が凍りついた。
副社長を辞める?
私の同意もなく、公の場で?
「私は妻を心から愛しています」
玲司は私を見つめて微笑んだ。
その笑顔が、どれほど偽りに満ちているか、私だけが知っている。
拍手が鳴り響く中、玲司がステージから降りてきた。
そして――沙耶を連れて、私の前に現れた。
玲司の顔には、悪意に満ちた笑みが浮かんでいる。
「どうだった、俺のスピーチは?」
彼の声には明らかな挑発が込められていた。
「お前が言うことを聞かないなら、これからは沙耶がその役を引き継ぐことになる」
創星エンタープライズ。
私が心血を注いで築き上げた会社を、人質に取るつもりか。
玲司の傲慢さが、私の怒りに火をつけた。
「そう」
私は静かに答えた。
「でも、一つ忘れていることがあるわ」
玲司の眉がひそめられる。
私は彼の手を振り払い、沙耶の髪を掴んだ。
「きゃっ!」
沙耶の悲鳴が会場に響く。
私は彼女の顔を無理やり上げさせ、玲司に向けた。
「玲司、この女性は誰?」
玲司の顔が青ざめた。
「雪乃、何をしている」
「答えて」
私の声は氷のように冷たかった。
「この女性との関係を、みんなの前で説明して」
その時――
私が合図を送ると、ステージ上のプロジェクターが一斉に点灯した。
巨大なスクリーンに、玲司と沙耶の写真が映し出される。
ホテルの部屋で抱き合う二人。
キスを交わす二人。
ベッドで絡み合う二人。
会場が騒然となった。
「止めろ!」
玲司が叫んだ。
「すぐに止めろ!」