บท 13: 第13章黙って損を受ける

葉棲遲の一言で、皆が驚愕した。

この瞬間の威厳は、誰にも及ばないものだった。

周若棠はその場に立ち尽くし、呆然としていた！

おそらく夢にも思わなかっただろう、葉棲遲がこれほど強気な一面を見せる日が来るとは。

記憶の中では、彼女を見るたびに隠れるしかできなかった臆病な少女だったのに、今は王妃になったとはいえ、突然こんなに凄みのある人物に変わるはずがない。

さらによく考えてみれば。

葉棲遲の言葉には威厳があるだけでなく、反論の余地さえ与えなかった。

碧清が言い続けていたのは「夫人」の簪を壊したということで、彼女はもちろん碧清の言う「夫人」が自分自身だと知っていた。この数年間、彼女は尚書府の後屋を管理し、権力をますます拡大させ、家の使用人たちは彼女を「夫人」と呼んでおだてていた。心の中では当然喜んでいたが、表向きはずっと遠慮していた。しかし時が経つにつれ、「夫人」という呼称に誰も異議を唱えず、秦夢兮さえも何も言わなかったので、彼女は半ば推され半ば受け入れていた。

何年も呼ばれ続け、彼女はそれに慣れてしまっていた。

思えば葉棲遲がまだ嫁に行く前から、彼女を「夫人」と呼ぶことは始まっていたのに、今突然大げさに取り上げられた。

一度大げさに取り上げられると、それは彼女が婦道を守らず、家の規則や礼儀を遵守しなかったということになる。

大泫國では、尊卑関係が何よりも重要！そのような罪名を着せられるわけにはいかない。

だから、彼女は碧清の言う「夫人」が自分だったことを認めることなどできなかった。

ただ、この怒りを黙って飲み込むしかなかった！

周若棠は無意識のうちに拳を握り締め、怒りを抑えながら目の前の女性を見つめていた。

葉棲遲が目を上げる。「周おばさまと庶妹はよく理解できましたか？」

あまりにも見下すような表情に、葉芷嵐は思わず叫び出しそうになった。

本来は葉棲遲を困らせるために訪ねてきたのに！

まさか逆に彼女に一喝されるとは思わなかった。

「私の誤解でした」周若棠はすぐに態度を変えた。

「母上…」葉芷嵐には周若棠の深慮と忍耐力がなかった。

葉棲遲の鋭い眼差しに、

葉芷嵐は驚いて胸がどきりとした。

彼女は慌てて言い直し、本能的に「おばさま」と呼んだ。

葉棲遲は少し笑ったが、それは皮肉に満ちていた。

葉芷嵐は葉棲遲の表情を見て、前に出て彼女を絞め殺したいほど腹が立った。

まさか葉棲遲の一瞥で威圧されるなんて！

まさか葉棲遲を恐れるなんて！

「王妃様とお姉様のお邪魔をしました。これで失礼します」周若棠は礼をした。

「下がりなさい」葉棲遲は手を振り、直接屏風の内側へと歩いて行った。

周若棠は葉棲遲のあまりに堂々とした背中を見て、歯ぎしりしながら人々を連れて去った。

葉芷嵐はこの怒りを抑えられなかった。

周若棠の部屋に戻るなり、彼女は爆発した。「葉棲遲は自分が何様だと思っているの？！私を平手打ちする権利があるの？母上にあんな態度を取れるの？王妃になっただけじゃない？本当に自分が偉くなったと思ってるの！」

「もういい！」周若棠の顔色も極度に悪かった。

長い間こんな屈辱は受けていなかった。

彼女の目に憎しみが宿り、手を振り上げて碧清の顔を強く平手打ちした。

碧清は打たれて地面に倒れ、口角を噛んで血が出たが、泣き叫ぶことすらできなかった。

「役立たずの犬め！」周若棠は全ての怒りを碧清にぶつけた。

「奴婢が悪うございました。奴婢が間違った言葉を申しました。どのような罰でも受けます」碧清はすぐに地面に膝をつき謝罪した。

「連れて行って二十発の平手打ちを与えなさい」周若棠は命じた。

碧清は許しを乞う勇気もなく、そのまま引きずり出された。

部屋の外から恐ろしい平手打ちの音が聞こえ、部屋の中の侍女たちは息をするのも恐ろしかった。

「母上」葉芷嵐にはもうこれが当たり前だった。どの奴隷が彼女たちの機嫌を損ねても、叩くだけだった！

周若棠は怒りをぶちまけた後、少し冷静になり、厳しく言った。「宸王様にお前を側室として迎えさせる。急ぐべきだ！」

葉芷嵐の顔にも陰険な表情が浮かんだ。「嫁いだら、必ず葉棲遲を見返してやる！」

「今日の怒りはひとまず我慢しなさい。今日はお前の父上の誕生日だ。とりあえず今日を乗り切ってから考えよう」周若棠はやはり理性的だった。

「はい」葉芷嵐は急いで頷き、さらに言った。「それにしても、今日の葉棲遲はとても念入りに装っていたようだわ」

「どれだけ美しく装ったところで何の役に立つ？琴棋書画、どれをとってもお前に敵うはずがない！今日彼女が賢明に内眷の宴席に参加しなければいいが、もし参加したら、彼女を完全に恥をかかせてやる！」周若棠は悪意をもって言った。

葉芷嵐は起こりうる場面を想像すると、心の中で快哉を叫ばずにはいられなかった。

彼女はこれまで葉棲遲を眼中にも置いていなかったのだから！

……

葉棲遲が周若棠と葉芷嵐を叱責した後、秦夢兮と綠柚、そして部屋にいるすべての侍女たちは驚きの表情を浮かべていた。

「なぜそんな顔で私を見るの？」葉棲遲は呆れた様子だった。

秦夢兮はしばらくしてから反応した。「棲児、もしかして何かに取り憑かれたの？」

これはもはや彼女の棲児ではなく、まるで別人のようだった。

「私は魂が抜け出したのよ」葉棲遲は率直に言った。

嘘をついているわけではない。

本当に魂が抜け出て葉棲遲になったのだから。

「この子ったら」秦夢兮は葉棲遲が冗談を言っていると思い、微笑んだ。「宸王様に嫁いでから、あなたは随分変わったわね。宸王様があなたに多くのことを教えてくれたのでしょう」

「……」あの狂人が、一日彼女を殺そうと思わなければあみだぶつだわ！

葉棲遲はそれ以上説明しなかった。

彼女はただ秦夢兮の化粧が整った姿を見つめていた。

秦夢兮はまだ35歳で、尚書府では愛されていなかったが、食べ物や衣服は一般の家よりはるかに良く、また結婚の際の持参金も少なくなく、浪費さえしなければ一生使えるだけあった。そのため彼女の肌は非常によく手入れされており、老けた様子は全く見られなかった。特に今日は念入りに装っており、まさに絶世の美女と呼ぶにふさわしかった。

かつて秦夢兮が未婚だった頃は、求婚者が秦邸の門をほぼ踏み破るほどだった。

また当時の葉正德の風流で才能豊かな姿が秦夢兮を惹きつけ、最後に彼女は彼に嫁ぐことを選んだのだった。

葉棲遲の美しさのほとんどは秦夢兮から受け継いだものだった。

「奥様、とても美しいです！」綠柚は思わず感嘆した。「王妃様と同じくらい美しい。本当に瓜二つです」

部屋の中の全員も称賛の言葉を惜しまなかった。

秦夢兮も銅鏡の中の自分をじっと見つめた。

彼女は自分の姿に驚いていた。

葉正德に嫁いでからのこれらの年月、彼女は自分自身をじっくり見ることもなかった。

かつて彼女が、人々に手のひらの上で大切にされる宝石のような存在だったことをほとんど忘れていた。

「母上」葉棲遲は言った。「今日はあなたの出番よ」

秦夢兮の目が赤くなりかけたが、感情を落ち着かせ、娘を見返した。「棲児の言いたいことは？」

「今日の内眷の宴で、あなたには場を圧倒してほしいの！」葉棲遲は口角を上げて笑い、言葉には威厳が満ちていた。