霊能見習いの職業を解放した後、白木芙は明らかに意識が澄み渡り、一瞬、俗世を超越したような感覚さえ覚えた。
これが精神とインスピレーションが向上した証なのだろうか。
霊能見習いの上限はLv10で、レベルが上がるごとに得られる属性ポイントは「無職」の倍だ。
芙は満足げにステータス画面を開いた。
【メイン職業】:無職 Lv3(0/1000)、霊能見習い Lv1(0/300)
[副職業]:なし
[HP]:70/70
[霊能値]:25/25
【属性】:力5、敏捷3、体質7、知力3、精神5、インスピレーション5
[スキル]:
狂熱 Lv1 - 対象の身体一部を【狂熱】状態にする。持続中は1分ごとに霊能値を1消費。クールタイム2秒。
硬化 Lv1 - 対象の小範囲の皮膚を【硬化】状態にする。持続中は5秒ごとに霊能値を(1-3)消費。クールタイム1秒。
霊視 - 霊能感知で対象の情報を探知する。詳細度はレベル差に依存。
[天賦]:なし
[属性ポイント]:2
新しく追加された霊能値は、霊能流派の力の源で、時間とともにゆっくり回復する。インスピレーションを高めれば上限も上がり、アイテムや装備、スキル、天賦などでも強化できる。
三つの新スキルはどれも実用的だ。「狂熱」は攻撃力向上、「硬化」は防御力向上、「霊視」は相手の実力探知に使える。
実際、『三分でわかる霊能祈祷入門』は芙に新しい職業を与えただけでなく、霊能修行の注意点も教えてくれた。
【注意!むやみに他人へ霊能祈祷を使用するのは厳禁!さもないと極めて悪質な影響を及ぼす可能性あり!】
彼女はもう帰ろうとしていたのだが。
しかし、注意書きの「厳禁」という文字が目に入ると、彼女の眼差しは鋭くなった。
この言葉は「FBI Warning」と同じく、ある種特別な魅力を放っている。
言わなきゃよかったのに。一度言われてしまった以上、この禁断の力をしっかり研究しないわけにはいかない。
芙はその場に座り込み、実例を読み始めた。
【とある学校の男子学生が、冗談のつもりでルームメイトの手首に「硬化」を使おうとしたが、誤ってルームメイトの股間に照準を合わせてしまった。翌朝、寮の管理人に発見され、近くの病院の肛門科へ緊急搬送された。絶対に真似しないこと!】
手首に使うつもりが、なぜ股間に照準が合うんだ?
わざとか? それとも不注意か?
芙はこの件に何か裏があると感じた。
彼女は続けて実例を読み進めた。
後の事例はさらに恐ろしいものばかりだった。
たとえば、試合前にわざと分厚い靴を履き、丸三日間足を洗わず、舞台に上がるとすぐに相手に嗅覚強化の祈祷をかけ、自分は靴を脱いだため、相手が臭さで失神したという例もあった。
芙はうなずきながら読んだ。
なんて卑怯な手口だ!
彼女はずっと考えていた。彼女のような無害な子羊が、廃棄冷却工場のような悪党の巣窟に迷い込んだら、どう生き延びればいいのかと。
力だけでは足りない。武術の達人ですら、卑劣な罠で命を落とすことがある。
希望をすべてプレイヤーに託すこともできない。芙が出した結論は、「卑怯で卑怯を制す」だった。
相手のあらゆる手段を知ってこそ、その害から身を守れる。
悪く言えば、将来もし彼女が誰かの卑劣な罠に掛かり、逃げ場がなくなったとしても、相手と交渉するための十分な切り札を持つことができる——
「あなたも私と一緒に爆発したくはないでしょう?」
「汚れたモップ」は本多忠勝(ほんだ ただかつ)のごとき威力を持つが、私も同じように汚れたモップを取り出せば、相手はどう出るか?
戦略兵器は使わなくても、持っていなければならない。
芙は物足りなさを感じながら本を閉じた。
もっと多くの実例を参考に学びたかった。
残念ながら、この小さな書庫は狭すぎて、蔵書のほとんどは「人生に役立つX冊」シリーズのようなものばかりだ。
彼女は別の道を選ぶしかなかった。
本から役立つ知識を学べないなら、実践から悟るのみ。
書庫の門番に挨拶をして、芙は家路についた。
彼女の留守中、安藤雅はすでに家をきれいに掃除していた。
子供ながら、とても気が利く。
「親分、私たち……本当にあの海老名昇のところへ借金取りに行くの?」
ボロ布で作ったエプロンを掛けた雅が、台所から出てきて心配そうに尋ねた。ねた。
「もちろんよ。彼から取り立てなきゃ、お金はどこから来るの?ねえ、昼間に助けたあのよそ者、覚えてる?今こそ、よそ者の真価を見せるときよ!」
NPCとして、プレイヤーに手伝わせてモンスターを倒させたり、素材を集めさせたりしないで、どうしてまともなNPCと言えるだろう?
芙は雅を呼び寄せ、細かく指示した。
「明日、あなたはこうやってよそ者たちを誘導するの……」
「本当に……うまくいくの?」
雅は信じられない様子だったが、親分が言うことだから、全力を尽くすしかなかった。
天に二日なく、彼女の心には親分という太陽が一つだけ輝いている。
...
翌日、午前10時過ぎ。
【謎の少女X、只今参上】と名付けられた配信ルームで、発掘姫は視聴者たちと共に、消えた謎の少女Xを探していた。
【このゲーム、NPCの好感度上げたら結婚できる?】
【公式サイトに書いてないから多分無理じゃない?】
【酷評だな、アズールレーンにすら及ばないとは。ハーレムが欲しい、ラブLabが欲しい!】
【アズールレーンといえば、このゲームの女性NPCみんな小さくない?】
【バカか、普通のプロポーションを小さいとか言うなよ】
【謎の少女X見つからなかったら死ぬ】
【掘り師、俺の宝、後ろ見てみろよ】
「後ろ? また板切れで股間を叩き合ってるのか?」