篠原景吾は完全にその場に凍りつき、表情が顔に固まり、道化師のように滑稽だった。
「会長……それはどういう意味ですか?」
篠原会長は彼を無視し、むしろ背後の秘書に手を振った。
「読み上げなさい」
秘書が一歩前に進み、二つの書類を続けて読み上げた。
一つは、私と深町スタジオの独占的戦略的提携協定。
もう一つは、アークスの親会社、つまり篠原家の背後にある多国籍メディア帝国による、深町スタジオへの出資契約書だった。
出資金額は天文学的数字だった。
さらに、文書には明確に、深町時也が新会社の独立会長に就任し、絶対的な決定権を持つことが記されていた。
これは、深町時也が無名の独立プロデューサーから、アークスと肩を並べ、あるいはそれを超えるメディア界の新興勢力になったことを意味していた。
そして篠原景吾といういわゆる「御曹司」は、彼のお父さんに完全に権力を奪われ、骨抜きにされたのだ。
彼が手中にあると思い込んでいた相続権は、彼自身の手によって断ち切られた。
前世では、景吾は加藤家を吞併した後、もはや利用価値のない深町時也を蹴り飛ばし、さらには陰で妨害して彼の名声を失墜させた。今世では、私は単に深町時也が受けるべきものを、前倒しで彼に返しただけだ。
「時也、何をぼんやりしている?契約の良い時間を逃さないように」
篠原会長は慈愛に満ちた眼差しで深町時也を見つめた。その視線は、自分の最も誇らしい作品を見るようだった。
「はい、会長」時也は小声で応じた。
彼は振り向くと、私の少し乱れた襟元を整え、それから慎重に私の手を取り、すでに脇で待機していたもう一台の長いベントレーへと歩いた。
エンジン音が鳴り響くまで、景吾はようやく夢から覚めたかのように、狂ったように追いかけてきて、窓を叩いた。
「星蘭、行かないで……お前が愛しているのは俺だ!」
「わかってる、お前は俺が詩織のために冷たくしたことに腹を立ててるんだ。だから腹いせに彼を選んだんだろう!冷静になれば、絶対に後悔するぞ!」
「お前が詩織を好きじゃないなら、今すぐ彼女との契約を解除する!アークスのすべてのリソースをお前に与え、お前をアークス唯一の女王にしてやる、どうだ?」
時也は私の顔色が暗くなるのを見て、すぐに窓を上げ、あの吐き気を催す顔を完全に遮断した。