「服を買いに来たのよ!」
竹内真琴は堂々と認めた。
「真雪、これはあなたの双子の妹だね?」と三浦彰人が尋ねた。
「うん!」真雪はうなずいた。
「じゃあ彼は君の義弟だね!」彰人は微笑みながら言った。
「そうよ!彼は私の夫、丸山陽斗よ!」
真雪が口を開く前に、真琴が一歩前に出て、親しげに陽斗の腕を組み、幸せそうにうなずいた。
「あ...妹、これは...」真雪はその場で呆然とした。
なんてこった、元カレがどうして義弟になってるんだ?
「ダメよ!どうしてあなたたちが一緒になれるの?」
状況を理解した真雪は、すぐにかんかんに怒った。
「なぜ私たちが一緒になれないの?あなたたちはもう別れたじゃない。それに、私はあなたたちの関係が終わった後、正々堂々と告白したの。陽斗も受け入れてくれたわ!」
真琴ははっきりと言った。
「あなた...あなたたち二人...」
真雪は怒り心頭だったが、反論できなかった。
こんなドロドロ展開、誰だって受け入れられないよ!
「うわぁ!」
傍らにいた彰人は口を開けたまま、驚きのあまり固まっていた。
と同時に、彰人が陽斗を見る目には羨望と嫉妬と憎しみが込められていた。
くそっ、こいつはまさに犬も歩けば棒に当たるとはこのことだ。姉妹両方とも手に入れてしまうなんて!
俺こそが金持ちの息子なのに、なぜか妙に哀れに感じるんだよな?
周りの客や店員たちはこの光景を見て、思わず目を見開き、ぽかんとしていた。
「うわっ、こいつマジで幸せすぎだろ」
「くそっ、姉妹両方と付き合ったやつじゃねえか!ちょっと拝ませてくれ、運気を分けてもらいてえ!」
「人と比べると腹が立つな。俺はまだ童貞なのに、こいつはもう姉妹丼かよ」
「あり得ない!こんなに地味な服装のやつが、何の取り柄があるんだよ?理解できねえよ!」
「顔がいいからでしょ!この時代、顔こそ正義!どうしようもないよ」
その場の野次馬たちが一斉に議論し始めた。
「真琴、あなたは私の実の妹よ。どうして私の元カレと一緒になれるの?」真雪は怒り心頭だった。
「なぜダメなの?さっきも説明したでしょ。それに、私たちが一緒になることは違法なの?」真琴はまったく引けを取らず、逆に問いかけた。
「あなた...」
真雪は目を見開いたが、反論できなかった。
「お姉ちゃん、あなたが貧乏を嫌い、金持ちに走って陽斗を見下していたことは知ってる。あなたが別れを切り出そうとした時、私も止めたわ」
「もしあの時、あなたが私の言うことを聞いていたら、陽斗への好意は心の奥深くに隠して、絶対にあなたたちの邪魔はしなかった。でもあなたはどうしても別れたがった。あなたが捨てたものは、私にとっては宝物なのよ」
「だから聞きたい、私たちがなぜ一緒になってはいけないの?」
「それに、私は陽斗と入籍したわ。今や彼は私の夫であり、あなたの義弟でもある」
普段は穏やかな性格の真琴だが、この瞬間は珍しく強気だった。
「何?あなたたち...結婚したの?」真雪は再び呆然とした。
冗談じゃないよね?
昨夜別れたばかりの元カレが、今日は義弟になってるなんて?
「そうよ!」真琴はうなずき、笑った。
「結婚証明書が家にあるから、見せられないけど。あっそうだ、あなたがアパートに残した服はすでに整理してあるから、時間があったら取りに来て」
「今日から、あそこは私と陽斗の家よ!」
真雪は呆然として、何と言っていいかわからなかった。
陽斗は黙ったままだった。
以前は真雪が別れを強く主張したのだから、彼は真雪に対して悪いことは何もしていない。
今や真琴こそが彼の妻なのだ!
「旦那さん、服を着替えてくるわね!」真琴はこれ以上の説明は面倒くさいと思い、陽斗に一言告げて着替えに行った。
「陽斗、どうしてあなたは私の妹と...」
真雪はまだ怒りおさまらず、矛先を陽斗に向けた。
「なぜダメなんだ?」
陽斗は冷笑しながら真雪の言葉を遮った。「真琴はすでにはっきり説明した。もう余計な言葉は無駄だ」
「あなたって...」
真雪は胸が上下するほど怒ったが、突然、自分と陽斗の別れは間違いだったのかと疑問に思い始めた。
いや!
私は間違っていない!
誰だって、より良い生活を求める権利がある。私だってそうよ!
陽斗は地方出身で、家庭環境も普通。
確かにルックスはいいけど、それは大学での恋愛にしか適していない!
一度、現実の生活に直面したら、いわゆる「見た目」が何になる?フェラーリに乗せてくれる?豪邸に住まわせてくれる?ブランド品を着させてくれる?
答えはノーだ!
だから、陽斗と別れるのは絶対に正しい決断だった!
そう考えると、真雪はもう何も言わず、そのまま立ち去った。
彰人は目を細め、彼女の後を追った。
ショッピングモールの外で。
彰人は言った。「真雪、陽斗は人の弱みに付け込む最低な男だよ。彼のことで腹を立てる価値なんてないよ」
「もうその話はしたくないわ」真雪は手を振って、冷たく言った。
このとき、彰人の目が光った。「わかった、彼の話はやめよう。代わりに、もっとワクワクする話をしよう!」
「うちは佐野市でも少し名の通った家柄でね。最近、ビジネス界の内部情報を手に入れたんだ。ブラックロック・テクノロジーの株価が急騰する可能性が高いらしい。今買っておけば間違いなく儲かるよ」
「本当?」真雪は目を輝かせた。
「もちろんさ!」彰人は笑顔で言った。
「でも私、今あまりお金がなくて...」
そう思うと、真雪は急に暗い表情になった。
彼女は卒業して仕事も得たが、典型的な「使ったら終わり族」だった。
それに、陽斗と一緒にいた時も、陽斗の給料に頼ることがあった。
彼女の母親も貯金はほとんどなく、継父はお金を持っていてもあまり彼女たち母娘には与えず、たまに表面上の家族関係を維持する程度の出費しかしなかった。
結局のところ、継父には実の息子がいたのだ。
「方法は問題より多いさ!友達や親戚から少し借りてみたら?どうせ儲かる話だから、返せないということはないよ。それに、これは千載一遇のチャンスだよ」と彰人はアドバイスした。
「そうね!考えてみる」真雪はうなずいた。
先ほどの小さな出来事のせいで、真雪はもう買い物をする気分ではなくなり、すぐに彰人と一緒にその場を後にした。
ショッピングモールの衣料品店。
真琴は服を整理し終えると、真雪の姿が見当たらず、尋ねた。
「真雪は?」
「帰ったよ」
「じゃあ私たちも帰りましょう!」
真琴は大人しく陽斗の腕に手を添えた。