Bölüm 7: 「ティーパーティーは戦場」
最後のエリサンドラ面接が終わると、いよいよ命名式の時がやって来た。三、四世紀も前に遡るというこの慣習は、おとぎ話において重要な役割を担うプリンセスやプリンス、その他の主要人物に新たな公式名を与える儀礼である。始まりは単純だった――「ジョナス王子」や「クラリス女王」では退屈すぎる、物語は「ディアンサ姫」や「スペクトラス王」のように響きのある名で語られるべきだ、という美意識から生まれたのだ。
その結果、エリサンドラ面接をくぐり抜け、在学が確定したプリンセス候補のすべてに、将来それぞれの物語を演じる際に用いるロマンティックな新名が授けられる――はずだった。だが時の流れとともに、命名委員会はどうやら名案の在庫切れを起こしたらしい。独創性と耳馴染みの良さが尽きると、いつしか委員たちは不必要に長く、覚えづらく、妙に入り組んだ名前を量産するようになっていった。
「ジェサミン！」名を呼ばれた親友が壇に進むと、アイズリンは歓声と拍手で送り出した。やることは、進み出て名を受け取り、戻る――ただそれだけ。にもかかわらず、ジェサミンの肩はこわばっている。数週間の付き合いで、アイズリンは彼女が人前に立つのを酷く苦手としていると知った。王国が誰かに奪われてしまえば、王宮の廷臣たちの前で座して采配を振るうより、むしろその方が気が楽なのでは――そんな不謹慎な想像が、アイズリンの脳裏をかすめる。
壇上のエリサンドラは、進み出る一人ひとりに慈愛を帯びた微笑を向ける。脇には大学の学長が控え、両腕で巨大な儀礼書を抱えていた。ジェサミンが足を止めると、学長は厳かに宣言する。
「今より、汝の名はアスペリアンナとする」
再び歓声が上がり、拍手が広がった。席に戻ったジェサミンの口から、安堵の吐息がこぼれる。――だが、式はまだ緒についたばかりだ。在校するすべての女子に名が授けられるのが本日の予定。滑稽なほど長い儀式になるのは、最初から目に見えていた。
やがて「コラライン」の名が呼ばれる。以来、ほとんど言葉を交わしてはいないが、あの偶然の邂逅以来、彼女はアイズリンに一切の関心を示していない――おそらく一瞬の“友情”など、彼女の中では無かったことになっているだろう。それでもアイズリンは、彼女を励ます気持ちと、得体の知れない誇らしさを抱きつつ、拍手を送った。
学長が宣言する。
「今より、汝の名はエメリア＝エルドリアとする」
コララインは優雅なカーテシーを捧げ、淀みなく席へ戻った。
その後しばらくは、顔も名も知らぬ女子ばかりが呼ばれ、アイズリンは一人ひとりに礼儀正しい拍手を送った――が、退屈を覚えたのも事実だ。
そして、ついにアイズリンの番が来た。彼女が挑むような笑みでエリサンドラを見やると、老プリンセスは目に見えて身を竦めた。どうやら、あの一件以来、彼女はまだアイズリンを恐れている。
学長は分厚い大冊の頁をめくりながら、アイズリンの前にそびえ立つ。溜めに溜めた劇的な沈黙ののち、宣言が落ちた。
「今より、汝の名は――エルサンドリエル＝アナイスとする」
アイズリンはむせそうになった。彼女の人生で耳にした中で、最も長く、最も愛想のない――そう断じたくなる響きだった。
席に戻ると、会場から割れるような拍手。ジェサミンが跳ねるように立ち上がり、熊みたいな抱擁をくれる。
「おめでとう、**エルサ……エルサンドリ……**ええと、もう一回何て言ったっけ？」
アイズリンはどさりと椅子に沈み込み、呆然と呟いた。
「私にも分からない。もう覚えられないわ。どうやって、こんな途方もなく長い名前を忘れずにいられるっていうの」
――季節は進み、冬が近づくにつれて雨は頻度と量を増した。キャンパスを覆う陰鬱な霧雨に、アイズリンはうんざりし、いっそ雪になってくれればと思う。一方で、中間試験が近づくにつれ、どの授業もじわじわと難度を上げていった。
ある朝、アイズリンとジェサミンは同じ校舎に連なる同じ時間割を辿って、並んで教室へ向かっていた。世界はまた冷たい雨に濡れている。薄手のサンドレスに身を縮め、アイズリンは、寒さに適したドレス系の衣類を十分に買い足せなかったことを悔やみ、震えた。
ちょうどアイズリンの一言でジェサミンが笑い声を上げたその時、聞き覚えがあるのに他人行儀な声が、二人の間に割り込む。
「やあ、エルサンドリエル＝アナイス」
どこからともなく現れたように、コララインが言う。「最近はどう？」
アイズリンは、彼女が唐突に“友情”を再開してきたことにも驚いたが、フルネームでの呼びかけにこそ度肝を抜かれた。しばし口をぱくぱくさせてから、ようやく声が出る。
「どうやって全部覚えたの？」
「友達でしょ！」コララインは、からかうようにアイズリンの肩をつまんだ。「友達の名前くらい覚えてるに決まってるじゃない。私がどういう人だと思ってるの？」
ジェサミンの口は半ば開いたまま固まっている。コララインがアイズリンに親切だったことなど一度もないのを知っているだけに、二人が突然談笑している理由が飲み込めないのだ。
アイズリンは咄嗟に言った。
「アイズリンでいいのよ」――ほかに気の利いた返しが思いつかなかった。「プリンセス名、あんまり気に入ってないし」
コララインは眉をひそめ、それからどうでもよさそうに肩をすくめた。
「あなたがそう言うなら。――で、楽しみでしょう？」
「何が？」
「舞踏会に決まってるじゃない！」当然のことのように、コララインは嬉々として言う。「見落としてないって言わないで？ 今期の王子たち全員と会える、最初の機会よ。恋に落ちて、年末に自分を助けてくれる相手を見つけるの。合格通知をもらってからずっと、その日を待ち焦がれてたの。まさか、もうすぐだって知らなかったなんて言わないわよね？」
アイズリンはぎくりとして、同室者に視線を送る。ジェサミンはすかさず助け舟を出した。
「アイズリンは合格書類を、ほとんど読んでないの。ここで行われてる行事の多くをよく把握してないけど、私たちみんなでフォローしてるから」
コララインはジェサミンに軽蔑の一瞥をくれ、完全に無視してアイズリンだけを見る。
「今の見た？」ジェサミンが怒りを噛み殺した囁きで言う。
空気を和らげるため、アイズリンは拙いやり方で場をつないだ。
「コラライン、ルームメイトを紹介するわ」ジェサミンを手で示す。「彼女はジェサミン。キャンパスに慣れるまで、ずっと助けてくれてる。彼女がいなかったら、本当にどうなってたか分からない。――ジェサミン、こちらはコラライン。学期の初めに知り合った友達よ」
ジェサミンはいつも通り礼儀正しく手を差し出し、「お会いできて光栄です」と囁く。コララインは目だけ笑わない笑顔で応じた。
「こちらこそ。エメリア＝エルドリアって呼んで」
「やだ、時間！」アイズリンは逃げ道を見つけたかのように声を上げた。「雨宿りも兼ねて、そろそろ教室に行かないと」
アイズリンは駆け出し、ジェサミンが理工学棟までついて来てくれることを期待する。――だがどうやらコララインも同じ棟に用があるらしい。三人は肩を並べて小走りになる。理工学棟の入り口が近づくと、ジェサミンはわざと大きな水たまりへ飛び込み、跳ねた水でコララインを濡らすつもりだった。狙いは外れ、濡れたのは自分だけ。
アイズリンは完全に白旗を上げ、階段を駆け上がって屋内へ逃げ込んだ。――数分以内に物理的な衝突が起きるのは避けられない、と直感したからだ。
それから一週間あまり、ジェサミンは見事な黒あざを片目の下に戴きながらも、一切口を割らなかった。当然だ。学内での私闘は即時退学の処分対象なのだから。
頬の黒い痕を見るかぎり、アイズリンはジェサミンが敗北したのだと思い、数日間心から同情していた。
――だが、次にコララインを目にしたとき、本当の勝者は一目瞭然だった。彼女の顔と腕には引っかき傷が走り、右耳のすぐ後ろにはごっそりと毛の抜けた地肌がのぞき、鼻梁はどう見ても折れていたのだから。
Haftalık Güç Durumu
-- Güç
Sıralaması 
-- Güç
Taşı