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私の荷物や家財道具はすべて梱包して売り払い、着替え用の服を数着だけ残しておいた。
命が尽きようとしている人間にとって、多くの荷物は必要ない。
愛への思い出が、私のすべてを満たしていた。
行き先も決めずに適当に切符を買った。終点がどこであろうと気にしないし、途中で何に出会おうとも構わない。
ただ限られた命で、祖国の美しい山河をしっかりと見ておきたかった。
仮の賃貸アパートのドアを開けて外出しようとした時、目を赤く腫らし、憔悴しきった須藤麗が外に立っているのを見て驚いた。
私がドアを開けると、彼女は興奮して抱きつこうとした。
しかし私は一歩後ずさり、彼女を避けた。
私が避ける様子を見て、麗の心は一瞬で痛み、哀願するような目で尋ねた。「愛の死は私のせいだってわかってる。でも、許してくれないの?私、できる限りのことをして償うわ!」
「償う?愛はもう死んでしまったんだぞ?どうやって償うつもりだ?」
娘の墓前での彼女の後悔に同情心を抱くことはなかった。
私の心の中で、麗に対する愛情はすでに消え失せ、ただ強い不満と憎しみだけが残っていた!
この世に私が憎む人間がいるとすれば、目の前の麗がその一人で、彼女の元彼氏である高橋隆が二人目だ!
私は彼女が家族を無視したことを憎んでいる!
私は彼女が娘の命を救うお金を持ち去ったことを憎んでいる!
彼女さえいなければ、娘は死ななかったはずだ!
彼女と心中したいくらいだ!
しかし理性が私に告げる、そんなことはできない、愛もそんな光景を見たくはないだろう……
この女から離れ、彼女を私の人生から消し去り、二度と会わないことこそが、私にとって最高の慰めだ。
しかし麗はそうは思っておらず、まだこの結婚を諦めようとせず、私を取り戻そうとしていた。
そのとき、玄関に高級車が現れた。
まぶしいヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計をつけた高橋隆が近づいてきた。彼は特に左手を胸の前に置き、さりげなく金の時計を私に自慢していた。