瑞穂は城西区の農場にやってきた。農場のように見えるが、実際には彼女の実験室だった。
瑞穂は午後いっぱいかけて、白石洋一、田中心、そしておばあさんの解毒薬を作り上げた。
寺田啓二は瑞穂の流れるような製薬過程を見て、嘆息してやまなかった。「ボス、俺に生きる道を残してくれないんですか?あなたは凄すぎます。医学教授でさえあなたほど医術に長けていないですよ」
瑞穂は解毒薬を容器に入れた。「残りの工程はあなたに任せるわ。薬が完成したら知らせて。そうしたら実験のために戻ってくるから」
啓二は何度もうなずいた。「ボス、ご安心を。何かあったらすぐにお知らせします」
小島文也が入ってきて言った。「ボス、先月の収益をあなたの銀行口座に振り込みました。高橋昴が魚の目を真珠と間違えたことを知ったら、きっと吐き気を催すでしょうね」
啓二は軽蔑した様子で言った。「自業自得だ!もしボスが常に彼の尻拭いをしていなかったら、あの会社なんて何度破産していたことか。今はいい気味だ。ボスを怒らせたんだから、破産して当然だ!」
瑞穂は顔を上げた。「高橋昴が破産したの?」
文也は答えた。「もうすぐです。あなたの実の父親が彼に手を出しました。それに加えて、あなたが彼の会社との協力関係を解消したんですから、あんな無能が会社をうまく経営できるわけがない。状況を逆転させられるとでも?」
啓二は言った。「ちょうどいい機会だ。高橋昴に見せつけてやろう。高橋家の金の鯉は誰なのかをね!」
瑞穂は二人の言葉に笑みを浮かべ、薬をバッグに入れると、にこやかに言った。「じゃあ、先に帰るわ」
瑞穂は車を走らせて家に戻った。家に着いたときには、すでに午後5時だった。
家に着くなり、瑞穂は白石雨子と田中心の笑い声がリビングから聞こえてきた。
母は優しく、娘は孝行、なんと温かい光景だろう。
瑞穂が入っていくと、白い肌、整った顔立ち、生まれながらの気品、すべてが白石家のお嬢様の威厳を示していた。
使用人は瑞穂を見ると、恭しく挨拶した。「お嬢様、おかえりなさいませ」
この「お嬢様」という一言に、雨子の表情がわずかに凍りつき、心は針で刺されたようだった。
雨子は率先して前に出て、愛想よく挨拶した。「お姉さま、お帰りなさい」