Bölüm 7: 彼氏はいません
Editör: Pactera-novel
他の審査員たちも次々と頷き始めた。素人目にも、オーラや演技の良し悪しは何となく伝わるものだ。藤原先生が認めるのなら、この娘には確かな実力があるのだろう。
しかし誰も最終判断を下せず、視線は自然と岩崎彰仁に集まった。
彼の表情は穏やかだが、深い瞳は菜月をしっかりと捉えている。
「もしこの役を得られたら、このドラマの話題性と宣伝力で一気に知名度が上がる可能性が高い。君はまだ学生だ。学業や生活に支障が出ることを心配しないのか？」
菜月は答えた。「有名になるかどうかはわかりません。役をいただけたなら、ただその役をどう演じるかだけを考えます」
「村上さんはそう考えても、彼氏さんは同じように考えるだろうか？これからは人目を気にせずデートすることも難しくなるかもしれない」
「私には彼氏がいません」菜月はきっぱりと言い切った。
岩崎彰仁の動作が一瞬止まり、その眼差しはさらに深みを増した。
……
オーディションが終了し、結果は一週間以内に通知されることになった。
藤原美穂はこの新人の娘を気に入っていたが、脚本家は新人起用のリスクを懸念していた。他の面々は意見を控えていた。誰もが察していた、岩崎彰仁が村上菜月という娘に特に厳しく接していることを。岩崎が口を開く前に、皆巧みに沈黙を守った。
工藤社長が近づいて尋ねた。「岩崎社長、いかがでしょうか？」
岩崎彰仁は膝の上で優美な指を軽く数回叩くと、藤原美穂に問いかけた。「彼女が歌っていたのはどの作品か？」
「『和泉式部日記』の山崎千鳥の一節です」
「では、彼女の役は？」
脚本家が答えた。「劇団の女形の助演です。侍女や側室のような役で、出番は2、3話程度です」
岩崎彰仁はそれきり質問をやめ、沈黙した。しばらくして携帯が鳴り、画面を見ると衣服を整えて立ち上がった。「今日はここまでにしよう。会社に用事が少しある」
工藤社長は慌てて見送りに立ち上がり、残された面々は顔を見合わせた。
山崎珠美は考え込むように言った。「劇中では脇役なのに、主役の部分を歌ったわね。岩崎さんの意図は…不満だったのかしら？」
皆もそう考え、頷きながら菜月の名前をリストから外そうとした。
その時、工藤社長が戻ってきて、秘書に手招きした。「あの歌を歌った娘の連絡先を調べてくれ」
山崎珠美は不思議そうに尋ねた。「上野由美（うえの ゆみ）の役を彼女に決めたのですか？」
「いや、まだ検討中だが…」
山崎珠美がほっとしたのもつかの間、工藤社長の呟く声が聞こえた。「今から女優を交代させることは可能だろうか…」
その言葉に、部屋中の人々は驚愕した！
……
わずか一週間で、工藤社長は悩みすぎて白髪が増えた。
彼は岩崎彰仁の最後の言葉の真意を考え続け、あの娘に主役を与えよという暗示だったのではないかと悩んだ。しかし元々内定していた主役は岩崎社長の噂の彼女、木村沙織だ。どちらも敵に回すわけにはいかない。確かなのは、岩崎社長があの歌を歌った娘に何らかの関心を持っていることだけだった。これまで送り込んだ美女たちには一切興味を示さなかった男が。
頭を抱えていると、突然ニュース速報が目に飛び込んできた……
*
「岩崎彰仁、新人モデルとゴルフクラブから出てくるところをキャッチ。木村沙織（きむら さおり）との破局が疑われる。昨夜、木村沙織は救急車で搬送、失恋による自殺未遂と伝えられ…」須藤景子は読み進めるのを止めた。「あの女、本当にバカね。どのPRが考えたのか知らないけど、あんな幼稚な作戦。これで同情を引けるどころか、批判が集中するだけよ」
菜月は上の寝床で布団をたたみながら、手を止めた。「どこの木村沙織？」
「噂だけで地位を築いたあの彼女よ。あなたも彼女とCM撮ったじゃない？この間の話よ」
菜月は思い出した。CM撮影の日、木村沙織は岩崎彰仁のワールドマーキスで現地入りし、周囲の羨望を集めていた。あの時の華やかさと言ったら…それが一夜にして…
「もしかしたら、彼女は同情を買うためじゃなく、本当にあの男性を好きだったのかも」菜月はため息をついた。
「それなら尚更バカよ。男ってのは、泣き叫んで自殺騒ぎを起こす女が一番苦手なの。岩崎彰仁だって34歳よ。数多の女性を見てきた男が、そんな小細工に引っかかると思う？」
菜月の目の前に、黒いスーツに白いシャツ、高級腕時計をした男性の姿が浮かんだ。そして、彼の指が自分の肩に触れたときの温もりも。
その場限りの演技…そうね、あんな男性に本当の心なんてあるはずがない。
話している最中、菜月の携帯が鳴った。彼女は須藤に「ちょっと待って」と手振りで伝え、廊下に出て電話に出た。
「村上菜月さんですか？炎呈エンターテインメントでございます。オーディションご合格おめでとうございます。正式な契約書にご署名いただきたいのですが、お時間の調整をさせていただけますでしょうか」
「……」
「村上菜月さん？」相手は彼女が返事をしないため、再び呼びかけた。
「あ、はい」菜月はようやく我に返り、信じられない気持ちでいっぱいだった。
結果発表の一週間はとっくに過ぎ、炎呈から何の連絡もなかったため、もう諦めていた。
「契約日を金曜日とさせていただきますが、よろしいでしょうか？」
「は、はい、大丈夫です」
「斎藤文香の台詞や歌詞はかなり多く、撮影開始まで時間もあまりありませんので、台本に慣れておいていただければと」
「ちょっとお待ちください」菜月は相手が電話を切るのを止めた。「何か誤りではないですか？私が受けたのは上野由美の役で…」
「あ、それは…」相手はやや躊躇した。「あの日のオーディションで歌われた歌姫の部分が高く評価され、皆様があなたと斎藤文香の役のイメージが合うと判断されました。他の方ですと、撮影前に歌姫の特訓が必要ですし。ご存知かもしれませんが、元々の主役であった木村沙織様がこの数日でご入院され、予定通り現場入りが難しくなりまして」
つまり…自分は単なる代役ということか。
だが、木村沙織が入院したとしても、主役が自分に回ってくる道理がない。
菜月は心の中に疑問を抱きつつも、それ以上は追求しなかった。
……
真珠島シティのとある私立病院。
バン！—木村沙織は食事のトレイを床に叩きつけた。床は汁物でぐちゃぐちゃになった。
「この炎呈、ひどすぎる！私が入院したばかりなのに女優を変更するなんて！責任者も顔を出さないの？」
「先方は静養の邪魔をしたくないとのことですが、お体調が良くなられましたらご挨拶に伺うとのことです。この業界、ご存知の通り、皆様子見です。あなたが岩崎様と別れたと聞いて、すぐに風向きを変えたのです」
「ふざけるな！渡辺監督に電話して！私のいない間に這い上がってきたのがどんな小娘か見てやる！」
マネージャーはその通りにし、しばらくして振り返った。「渡辺監督は会議中です。お手伝いの方によると、女優は新人で、これまで業界で顔を見せたことがないそうです」
「どんな新人にそんなことができっこない！彼女のバックは誰なの？」
「…演劇学院の学生で、まだ卒業していないそうです。特にバックはいないとのことです」
「ありえない！誰かの後ろ盾なしに主役が回ってくるわけないでしょ！少しは頭を使いなさいよ！」木村沙織は顔を蒼白にして怒り狂い、少し落ち着いてから尋ねた。「今日、岩崎さんに電話した？向こうは何て？」
「岩崎さんは番号を変更されました。会社にお電話したところ、受付の方から岩崎さんとの面会は予約が必要だと…」
「ああああ！—」
マネージャーが言い終わるか終わらないうちに、水の入ったコップも木村沙織に投げつけられた。
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