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26.92% 二十年の愛を結婚式で断ち切る / Chapter 7: 第7話:綺麗だね

Chương 7: 第7話:綺麗だね

第7話:綺麗だね

[雪音の視点]

結婚式まで四日。

私がキッチンで朝食の準備をしていると、リビングから冬夜の声が聞こえてきた。

「紅、見てくれよ。ウェディングフォト、すごく綺麗に仕上がってる」

ビデオ通話の音声が響いている。

私は手を止めて、そっとリビングを覗いた。

冬夜がタブレットを手に持って、画面に向かって嬉しそうに笑っている。画面の向こうで、紅も同じように微笑んでいた。

「本当ね。私たち、お似合いに見える?」

「当たり前だろ」

冬夜の声が弾んでいる。

私が今まで聞いたことのない、心の底からの幸せそうな声だった。

タブレットの画面には、白いウェディングドレスを着た紅と、タキシード姿の冬夜が映っている。二人は自然に寄り添って、まるで本当の夫婦のように見えた。

かつて私が冬夜と撮るはずだった写真。

「雪音」

冬夜が振り返った。

「おはよう。ちょっと見てくれよ、ウェディングフォト」

彼はタブレットを私に向けた。

画面に映る二人の姿を見つめる。紅は確かに美しかった。冬夜も、私が知らない表情で笑っている。

「確かに、綺麗だね」

私は静かに答えた。

嘘じゃない。本当に綺麗だった。

でも、それを見ても、もう何も感じなかった。胸の奥が空っぽになったような感覚だけが残っている。

紅の妊娠を知った日を境に、冬夜への愛情は完全に消え去ってしまった。今の私には、他人の結婚写真を見ているのと変わらない。

「そうだろ?」

冬夜が嬉しそうに頷いた。

「最近、雪音からの連絡が少ないから心配してたんだ。結婚準備で疲れてるのかと思って」

私は何も答えずに、キッチンに戻った。

冬夜は気にした様子もなく、再び紅との会話に戻っている。

「今度は新婚旅行の写真も撮ろうな」

「楽しみ」

二人の声が遠くから聞こえてくる。

私はパンを焼きながら、カレンダーを見上げた。

あと四日。

結婚式の前々日、私は病院に向かった。

研究室に入る前に必要な薬をもらうためだ。

受付で手続きを済ませ、薬局に向かう途中、産婦人科の近くを通りかかった。

「冬夜さん、ありがとうございます」

聞き覚えのある声に足を止める。

振り返ると、冬夜と紅が産婦人科の前に立っていた。紅は検診を終えたばかりらしく、母子手帳を大切そうに抱えている。

「雪音?」

冬夜が私に気づいた。

「こんなところで会うなんて、偶然だな」

私は無言で二人を見つめた。

紅が私を見つめて、急に膝をつこうとした。

「雪音さん」

涙を浮かべながら、紅が震え声で言った。

「お願いします。この子を産むことを、許してください」

冬夜が慌てて紅を支えた。

「紅、立って。体に良くない」

「でも......」

紅の目から涙がこぼれ落ちる。

「私、雪音さんに申し訳なくて......でも、この子は冬夜さんの子供なんです。どうか......」

冬夜が私を見つめた。

「安心して、これが俺たちの結婚式には影響しない」

その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが完全に壊れた。

冬夜は本当に何もわかっていない。自分を愛していないからこそ、こんなことが言えるのだ。

「わかった」

私は静かに答えた。

冬夜の表情が一瞬戸惑いを見せた。もっと激しく反応すると思っていたのだろう。

でも、もう何を言われても、私には関係ない。

私はその場を去ろうとした。

「雪音さん」

背後から紅の声がした。

振り返ると、紅が追いかけてきていた。

階段の踊り場で、私は足を止めた。

「白鐘(しろがね)」

紅の声が変わった。

さっきまでの涙声とは全く違う、冷たい声だった。

「あなたは自分の婚約者が他の女性と子供を作るのを見て、どんな気持ち?」

紅が私を見上げて、薄く笑った。

「惨めでしょうね。五年も付き合って、やっと結婚が決まったのに、別の女に先を越されて」

私は何も答えなかった。

「でも安心して。冬夜さんは優しいから、あなたとの結婚も続けてくれるわよ。形だけだけど」

紅が一歩近づいてきた。

「私の子供が生まれたら、あなたの立場なんて......」

「もういい」

私は紅の手を振り払った。

その瞬間、紅が意図的によろめいて、階段に倒れそうになった。

私は反射的に紅の腕を掴んで支えた。

「紅!」

階段を駆け上がってきた冬夜の声が響いた。

冬夜は私が紅を支えている光景を目撃して、顔を青ざめさせた。

「雪音、まさか君がそんな人だったとは思わなかった」

冬夜の声が震えていた。

「今すぐ紅に謝りなさい」


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