第7話:運命の再会
[鬼塚詩織の視点]
結婚式が終わり、私たちは暁の家へ向かった。
車の中で、私は窓の外を眺めながら今日の出来事を振り返っていた。晃牙の醜い姿、そして暁の優しさ。まるで夢のような一日だった。
「疲れただろう」
暁の声が聞こえた。
「少し」
私は正直に答えた。
「でも、思っていたより平気だった」
暁の家は想像以上に大きく、それでいて温かみのある造りだった。玄関を入ると、清潔で上品な香りが漂っている。
「ここが君の家でもあるんだ」
暁が振り返って微笑んだ。
「自由に使ってくれ」
私は頷いたものの、心の中では不安が膨らんでいた。
リビングに座ると、暁がお茶を入れてくれた。丁寧な手つきで、まるで私が大切なお客様であるかのように。
「あの...」
私は意を決して口を開いた。
「もし私の過去が気にさわるなら、すぐに離婚することもできるから」
暁の手が止まった。
「なぜそんなことを言うんだ?」
「だって...」
私は俯いた。
「私、あなたに釣り合わない。今日だって、あんな恥ずかしい姿を見せてしまって」
自分の声が震えているのがわかった。
「私なんかと結婚して、後悔してるんじゃないかって」
暁がカップを置いて、私の前に座った。
「詩織」
彼の声は優しかった。
「俺が結婚式で言った言葉、全部本心だった」
私は顔を上げた。暁の瞳が真っ直ぐに私を見つめている。
「お前はもっと幸せになるべき人間だ」
彼の手が私の頬に触れた。
「俺がお前を選んだのは、お前が素晴らしい女性だからだ。過去なんて関係ない」
暁の腕が私を包み込んだ。温かくて、安心できる抱擁だった。
「ありがとう」
私は彼の胸に顔を埋めた。
「でも、どうして...どうして私なんかを」
言葉がうまく出てこなかった。感謝の気持ちでいっぱいなのに、それを伝える術がわからない。
暁が小さく笑った。
「お前の口下手は小さい頃と変わらないな」
その瞬間、私の心臓が止まった。
小さい頃?
記憶の扉が音を立てて開いた。
田舎の祖母の家。一人ぼっちだった私の前に現れた、優しい少年。
「アキ...」
私は震え声で呟いた。
「あなた、アキなの?」
暁の表情が柔らかくなった。
「やっと思い出してくれたか」