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その夜、佐藤俊介はなかなか帰宅しなかった。
深夜12時になってようやく、彼からのメッセージが届いた。
「琴子ちゃん、会社の仕事がまだ終わらなくて。先に休んでいいよ。明日の朝8時に、音楽会に行くために必ず迎えに行くから」
このメッセージを見ても、私は返信しなかった。
なぜなら朝の6時には、システムによってこの世界から完全に連れ出されるからだ。
そして今夜、私は間違いなく眠れないだろう。
午前3時、システムは別荘の周囲にいる全ての無関係な人々を排除した。
午前5時、システムは前もって用意しておいたガソリンを、別荘全体に撒き散らし、どの場所も確実に行き渡るようにした。
午前6時、カーテンはシステムの制御下で落下し、揺らめく炎の塊が私の目の前に突然現れた。
私は自分がもうすぐ去らなければならないことを知っていた。
「ホスト、攻略を終了させることを確認しますか?」
そのとき、システムの声が最後に響いた。
目の前の炎を見つめながら、私はためらうことなく答えた。「確認します!」
次の瞬間、炎は突然カーテンに燃え移り、続いて部屋全体が一瞬のうちに大火に包まれた。
一方、会社で一晩を過ごした俊介の携帯電話がまもなく鳴り始めた。
それは彼が昨夜前もってセットしておいたアラームだった。
携帯を手に取り、彼は私にメッセージを送った。
「朝食は外で買っておいたよ。すぐに家に迎えに行くね」
いつもなら彼のメッセージにはすぐに返信していたのに。
しかし今回、彼が受け取ったのは私の返信ではなく、警察からの電話だった。
「佐藤さんですか?奥様が家で火災に巻き込まれました。現場には焼け焦げた衣服が一つだけ残されています。すぐに戻ってきてください」