気温が徐々に下がってきた。
この頃、藤原修はほぼ毎日私を訪ねてきて、お菓子を持ってきてくれる。
彼が来られない時でも、必ず誰かを遣わして私の好きなお菓子を届けてくれる。
柳田雪乃が私の傍に座り、羨ましそうな表情を浮かべている。
「和子、ほら、皇太子様があなたをどれだけ大切にしているか。私も将来、こんな風に接してくれる夫に巡り会えたらいいのに」
私は微笑んだが、その目には笑みの色はなかった。
「ご両親が紹介してくれた優秀な若者たちの中に、気に入った人はいなかったの?」
柳田雪乃は首を振り、冗談めかして私を見つめた。
「皇太子様があなたをこんなに大切にしているのを見て、私も皇太子様のような夫が欲しくなったわ」
私も冗談めかして言った。
「私たち姉妹、長年一緒に暮らしてきたから、離れ離れになるのは寂しいわね。皇太子様に私と一緒にあなたも連れて行ってもらおうか」
柳田雪乃の表情が凍りつき、まるで虐められたかのように言った。
「和子、私はあなたを実の姉妹のように思っているのに、どうして私を側室にしようとするの!」
私が何か言う前に、入り口から藤原修の声が聞こえた。
「何をしているんだ?」
私が口を開く前に、藤原修は私の罪を決めつけた。
「皇太子殿下、雪乃ちゃんもあなたの私への愛情を羨ましがっているので、私たち姉妹を一緒に娶ってはどうかと思いまして」
藤原修の表情が一変した。
「そんなことは絶対にありえない!」
もちろんそうだろう。彼が正室の座を柳田雪乃のために空けておくことは分かっていた。
「はい、はい、無理なら無理で結構です。殿下は勅許を得られましたか?」
勅許の話になると、藤原修の顔が青ざめた。
私は眉を上げた。どうやら天皇は承諾しなかっただけでなく、彼を叱責したようだ。
「殿下、勅許が得られなくても大丈夫ですよ」
私は涙を浮かべて悔しそうにした。今、天皇の薬の使用が深刻化しており、聞くところによると、大蔵卿を交代させる意向があるらしい。
そして最有力候補が、私の父だという。
藤原修がこの美味しい話を逃すはずがない!