あっという間に、姫宮様の誕生日がやってきた。
前世では、この宴会で大事件が起きた。
誰もが期待していた三皇子が、薬を盛られ、人妻を犯してしまい、都の笑い者となったのだ。
しかし、主人公の光環があまりにも強く、三皇子は辺境で修行し、蛮族を打ち破ったことで、これらの噂は自然と消えていった。
私は目を閉じた。おそらく今世は、全てのことを元通りにするためにあるのだろう。
原作では、三皇子は薬を盛られたものの、最後まで手を出すことはなかった。
姫宮様の誕生日の日、鈴木邸の人々は皆参列したが、私はこっそりと忍び込んだ。
私はある機会を待っていた。三皇子を救う機会を。
宴会では杯が交わされ、下臣たちが贈り物を献上し始めた。
藤原修が献上したのは、私が両面刺繍で刺した童子の一対だった。
姫宮様は今や三十を過ぎているが、まだ子供に恵まれていない。
仙童の絵を献上するのも、一つの祝福の形だろう。
「皇太子は心遣いが良いですね」
姫宮様の声は低く沈んでいた。彼女を知る者なら、これは怒っている証だと分かるはずだ。
しかし藤原修はこの叔母とあまり親しくないため、気付かなかった。
私は宮女の衣装を着て宴会に紛れ込み、三皇子が侍女に支えられて出て行くのを見た時、チャンスが来たと悟った。
「三皇子様、私はずっとお探ししておりました」
その侍女は後ろめたそうに、私が来るのを見るとすぐに逃げ出した。
私は予め解毒薬を用意しており、人目につかない場所で三皇子に飲ませた。
三皇子は徐々に意識を取り戻し、複雑な眼差しで私を見つめた。
「お前か」
私は今世で三皇子に会った記憶はないが、もはやそれは問題ではなかった。
「臣女、三皇子様にご挨拶申し上げます」
三皇子は私の礼を止めた。
「何が欲しい?」
私は三皇子を見つめた。彼は風格があり、気品に満ちていて、確かに天下を担う器の男だった。
作者が彼を主人公に選んだのも無理はない。
藤原修など、とても釣り合わない!
私は笑いながら言った。
「殿下は仁徳深く、帝位につかれましたら、きっと民を安らかに暮らさせることができるでしょう」
「臣女もその力になりたく存じます。成功の暁には、大和の素晴らしい山河を巡りたいと思います!」