Chương 10: 龍鞅

Biên tập viên: Pactera-novel

二人は皇帝の持病を思い出し、顔色を失った。次の瞬間、医師を待つ間も惜しんで、そろって書斎へと駆け込んだ。

扉を開けると、龍鞅（りゅうおう）が柔らかなクッションを敷いた椅子に身を預けていた。顔色はまだ青ざめていたが、意識ははっきりしており、思ったよりも容体は安定しているように見えた。

彼はただ静かに座っているだけだったが、長年の統治によって培われた圧倒的な威厳が、言葉ひとつ発さずとも全身から滲み出ていた。その存在感だけで人を圧し、無意識のうちにひざまずかせたくなるほどの力があった。

書斎の中は、針を落とせば響くほどの静寂に包まれていた。空気は重く張りつめ、まるで低気圧の中にいるかのような息苦しい不安が漂っていた。

鞅の漆黒に沈んだ瞳は、感情の欠片もなく冷ややかに、向かいの椅子に座る少女を見据えていた。

「そんな目で見ないで。――さっきの私の行動が、あなたのためになるとでも思ってるの？」少女の声には苛立ちが滲んでいた。そのとき、扉の開く音がして、彼女はそちらを振り向いた。

「涼微、なんて口の利き方をするんだ！」我に返った廷琛は状況をよく理解していなかったが、とっさに眉をひそめて叱りつけた。その声音は鋭く聞こえたものの、実際にはどこか甘さが残っていた。

廷琛の姿を見つけた涼微は、すぐに立ち上がって彼の腕をつかんだ。「お兄様、ちょうどいいところに戻ってきたわ。ここはあなたに任せるから、私は先に帰るね」

そう言い残すと、彼女はくるりと背を向け、外へと歩き出した。

しかし、彼女が一歩を踏み出すか踏み出さないかのうちに、黒い影がさっと前に立ちふさがり、無表情のまま彼女を見下ろした。

涼微はちらりとその顔を見た。相手がまだ幼い少年だとわかると、言い争う気も失せ、軽く手を伸ばして押しのけようとした。「どいて」

「涼微、気をつけろ！」廷琛が慌てて制止の声を上げたが、その時にはもう遅かった。

涼微は腕に鋭い痺れを感じたかと思うと、正体のわからない力で弾き飛ばされ、床に倒れ込んだ。

涼微は目を見開き、驚きのあまり初七の方を見た。

この子はまだあどけない年頃に見えるのに――まさか、これほどの武の力を持っているとは思いもしなかった。

涼微がまだ呆然としているうちに、廷琛はすぐに身をかがめて彼女を抱き起こし、初七に鋭い視線を向けて眉をひそめた。「どういうつもりだ？」

初七はゆっくりと顔を上げ、無表情のまま淡々と言った。「ご主人様は、彼女を行かせてよいとはおっしゃっていません」

廷琛は眉をひそめた。先ほどここで何があったのか知らない彼は、涼微が鞅に対して無礼を働いたのだと早合点し、慌てて頭を下げた。「陛下、妹が無作法をいたしました。もしご不快にさせてしまったのなら、どうかお許しください」

涼微は、兄がその男をそう呼ぶのを聞いても、特に驚く様子はなかった。

震国公邸の嫡女である以上、涼微もこれまでに宮中の宴席へ何度も顔を出してきた。そのため、彼女の記憶にはしっかりと刻まれている――目の前のこの男こそ、現皇帝・龍鞅であることを。

あのとき彼は危篤の状態で、涼微には余計なことを考える余裕などなかった。助け起こしてからようやく、彼女は改めてその顔をじっくりと見ることができた。

龍鞅――大商国の現皇帝。伝えによれば、彼は十三歳の若さで国難のさなかに即位し、以来十七年にわたって帝位に就いている。その才能は抜きん出ており、決断は雷のように鋭い。彼の治世のもとで大商国はかつてないほどの繁栄と強さを誇り、周辺諸国は大商を恐れて常に警戒を怠らないという。噂では、鞅が玉座にあるかぎり、大商を狙う国々は決して軽々しく手を出せない――そう言われている。

ただ残念なことに、天は才ある者を妬むという。鞅は外見こそ壮健で威厳に満ちているが、実際には長年病を抱えており、その命はすでに限られていると噂されていた。さらに彼にはいまだ嗣子がなく、やむを得ず兄の息子――遅を皇太子に立てたのである。

涼微は思考を断ち切り、改めて書机の向こう側に座る男へと視線を向けた。

男は今年でちょうど三十歳になる。その顔立ちは立体的で、まるで刀で削り、斧で刻んだように精緻だ。眉目のあいだには、成熟した男ならではの気品と深みが漂い、どこか文雅な風格さえ感じさせた。

その瞳に宿る威厳と、近寄りがたい冷たさ、そして人を拒むような距離感さえなければ――この男は、間違いなく多くの女性を惹きつける魅力を持っていた。

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