鈴木の父は唾を飲み込む音が静かな家の中ではっきりと響いた。彼は下品な目つきで南奈を見つめ、口元から卑猥な笑い声が零れた。
ベルトを外しながら一歩一歩南奈に近づいていった。「お前は葵のクラスメートだな。おじさんがたっぷり可愛がってやるよ」
南奈は状況が分からないふりをして、彼が近づいてきた瞬間に、ブランドのLVのバッグから赤い札束を取り出してテーブルに投げた。恥ずかしそうに笑いながら「おじさん、ありがとう。これはほんの気持ちです。受け取ってください」
鈴木の父は脱ぎかけていたズボンを一瞬で素早く留め直した。もはや自分が何をしようとしていたのか記憶さえなく、そんなことよりも目の前のお金の方が魅力的だ。
彼は下品な態度を一変させ、お金を撫でながら目が見えないほど笑い、媚びるような表情で言った。「中村さんは気が利くね。おじさんを訪ねてきてこんなにたくさん持ってきてくれるなんて」
南奈は淡々と微笑んだ。「とんでもありません。葵のお父さんですから。葵はいつも私に『お父さんはすごく優しい』と言っていますし、『お父さんのような方が父親で、前世からの福』だとも」
鈴木の父の笑顔はさらに大きくなった。あの娘が外で悪口を言っていないだけでもよかった。南奈の言葉は彼の気分を良くした。
「ただ……」南奈は少し眉をひそめ、言いかねる様子を見せた。
鈴木の父は眉間を動かし、できるだけ優しい表情を作った。「ただ何?」
南奈はため息をついた。「おじさんがこんなに生活に困っているとは思いませんでした。先週、葵に60万円渡して、おじさんに孝行するように言ったんですけど、もう使い切ってしまったんです?おじさん、決して節約しないでください、あのお金は私からのプレゼントなんです」
鈴木は大いに驚き、顔が青ざめた。「何だって?60万円?あの娘は一銭も渡してないぞ!」
南奈は細い指で赤い唇を覆い、驚いた様子で叫んだ。「えっ?この3年間で私が彼女に貸した何百万円も全然渡していないんです?彼女が使っているバッグは数十万円もするのに……葵がおじさんへの孝行のお金でそんなものを買うわけないと思っていました。彼女はとても親思いで、いつもおじさんが優しいって褒めているんですよ」