午前中、明石遥はホテルを出てヘアサロンに行った。
派手な爆発頭を真っ直ぐにして、毛先だけ軽く巻いた。
Tシャツとジーンズに着替えると、全体的に爽やかな印象になった。
スマホの通知音が鳴り続けている。
明石遥は物憂げな表情でスマホを取り出して確認した。
松尾一輝からすでに十数件のメッセージと七、八回の着信があった。
——遥、昨夜は緊急事態だったんだ。もし俺がご主人に見つかってたら、信濃川で身を清めても疑いは晴れなかっただろう。
——許してくれるよね?理解してくれるよね?俺が君を見捨てたわけじゃない、君のためを思ってのことだったんだ!
——昨夜は心配でほとんど眠れなかったよ。ご主人は君に何もしなかった?離婚に同意したの?
——君たちには愛がなく、彼は君を無視し続けてきたと主張するんだ。離婚したら財産の半分をもらえるようにしなきゃ!
——ねえ、どうして電話にも出ないしメッセージも返さないの?
——遥、愛してる。俺の愛は滔々と流れる川のように途切れることなく、海が枯れ石が朽ち果て、天が崩れ地が裂けようとも、決して変わることはない!
——遥、もし俺をまだ愛しているなら、いつもの場所で会おう!
これらのメッセージを見て、明石遥は吐き気を催した。
こんなありきたりで気持ち悪い告白、本当に嫌らしくて嘔吐を催すわ!
明石遥はすぐにブロックしようとしたが、考えを変えた。
彼女は物憂げな姿勢でヘアサロンの入口の石柱に寄りかかり、指先が素早くスマホの画面を操作した。
しばらくして、コードでリンクを作成し、一輝のスマホに送信した。
松尾一輝は明石遥が何を送ってきたのか分からず、疑いながらリンクをタップした。
中身はアニメーションだった。
醜い男が桜の木の下で仙女に告白するシーン。使われていたのは、彼が先ほど彼女に送ったそのままの言葉だった。
女性は桜の木に寄りかかり、だるそうに言った。「ガマガエルが白鳥の肉を食べようだなんて!」言い終わると、腰を曲げて吐き出した!
アニメーションを見終わった松尾一輝の顔色は青ざめていた。
「一輝兄さん、どうだった?昨夜、お姉さんと親密な関係になれたの?」
松尾一輝は知らなかったが、明石遥が送ってきたアニメーションにはウイルスが仕込まれていた。
彼がリンクをタップしただけで、明石遥は遠隔で盗聴できるようになっていたのだ。
松尾一輝は振り返り、彼に近づいてくる女性を見た——
明石恵は男性が好む初恋の顔立ちをしており、清純で美しく、黒髪が肩に柔らかく整然と流れ落ち、白いワンピースを着て、風に吹かれそうな儚げで可憐な様子は、男性の保護欲を極限まで刺激するものだった。
松尾一輝は明石恵の熱烈な崇拝者であり、彼女のためなら何でもする覚悟だった。
明石恵が古賀四男と結婚したいなら、彼は明石遥を片付けて、古賀四男に嫌われるようにしてやる!
「話さないでくれ。昨夜は気持ち悪さを我慢して彼女を抱こうとしたんだが、突然ご主人が現れて、うまくいかなかった!」
昨夜の古賀鳴人に女を用意する計画を、松尾一輝は明石恵に話していなかった。明石遥に知られて疑われるのを恐れたのだ。
結局のところ、今の明石遥はまだ明石恵が自分に取って代わり、古賀奥様になろうとしていることを知らないのだから!
明石恵の柔らかな美しい顔に喜びの表情が浮かんだ。「昨夜、四男様が行ったの?」
普段、四男様は神秘で、会うことすら難しく、ましてや明石遥の不倫情報を提供するなどなおさらだ。
昨夜、松尾一輝と明石遥がホテルでデートしていた時、彼女は記者を呼び、明石遥と松尾一輝の不倫のニュースをスクープさせようとした。古賀四男に明石遥がみだらで放蕩であることを知らせ、早く捨てさせようとしたのだ。
彼女は今日早くから起きてニュースをチェックしていたが、明石遥と松尾一輝の不倫報道は見当たらず、こっそりマネージャーに記者たちに問い合わせさせた。
結果、記者たちは口を閉ざし、彼女のマネージャーを叱りつけ、虚偽の情報を提供したと非難した。
記者たちは何も撮影できなかったが、四男様が自らの目で目撃したなら、これは明石恵にとって最高のニュースだった!
明石遥はもうすぐ評判も地に落ち、四男様に追い出されるのを待つだけだ!