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時間はいったい、どれくらい過ぎたのだろう? ただ、まるで別世界にいるかのような、そんな錯覚があった。
果てしない海原を、ゆらりゆらりと漂っているみたいに、終わりがない。
この感覚は不快じゃない。むしろ、心が解き放たれて自由になった気分。精神病院に送られてからというもの、毎日が恐怖と緊張の連続だったから。
殴られ、無理やり薬を飲まされ、それにあの獣みたいな男性医師……地獄のような日々に、生殺しの目に遭わされてきた。
これで、あの継母もようやく願いが叶ったことだろう。二十年にもわたる陰謀と策略が、ついに実を結んだのだから。
この馬鹿げて汚らわしい一生は、すべてあの継母からの「贈り物」だ。
そして、あの所謂精神病院は、地獄よりもおぞましい場所だった。目に映るすべてが死を思わせる白で、魑魅魍魎が跋扈するように患者たちが舞い、医者たちは陰湿で邪悪だった。
体なんて、とっくの昔にあの連中に弄ばれて、何も感じなくなっていた。
逃げ出すたびに、もっと恐ろしい罰が待っているだけ。
そして、彼女は死んだ。最も壮絶で、極端な方法で――全員を道連れにして。
思わず狂ったように笑いたくなる。なんて凄惨な幕引きだろう、数百人が私のために命を落としたのだ! ただ、憎い! この怨念は晴らせない! こんな目に遭わせた元凶どもが、まだのうのうと生きている!
あいつらを粉々に砕いてやりたい……骨の髄まで、灰になるまで!
……
暗闇の中、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。
ずっと虐げられてきたけれど、それもようやく終わりを迎えたのだ。
ふと、心が安らぐのを感じて微笑んだ。自分では見えないけれど、きっと、これまでの人生で初めて浮かべた笑み。
魂はもうすぐ天に昇り、雲の奥深く、一番輝いている場所へ向かう。そこはきっと天国だ。
お母さんも、そこにいる。何年も経ってしまったけれど、やっと、会えるんだ。
長いこと、空虚な真空の世界にいた。痛みも感じず、音も聞こえず、魂は形もなく、何の束縛もない。
静かに、ずっと待っていた。身体はどんどん軽くなっていくはずなのに、どうしてだろう、逆に重くなっていくような……
頭が、割れるように痛い……
耳元の喧騒が、少しずつ大きくなってくる。誰かのひそひそ話す声、ハサミとトレーがぶつかる甲高い音、そして、耳障りな車輪の軋む音。がらんとした廊下に、その音は何度も何度も反響していた……
ここは、どこ? まるで、また俗世に戻ってきてしまったみたい。
まさか、死んでないの? 目を開けて確かめたいのに、見えるのはただ、茫漠とした白だけ。
数百人の血でこの手を汚したから、魂は天国へ行けないのかもしれない。
たとえ地獄に堕ちたって、怖くなんかない。生きている間に、とっくに地獄の苦しみは味わい尽くしたのだから。
耳元は、また真空のような静寂に包まれたみたいだ。まるで、音のない水が辺りに満ちて、耳や喉を塞ぎ、聴力を奪っていくよう。息が詰まる。
しばらくして、誰かに移動ベッドへ乗せられたような感覚。そのまま遠くへ押されていき、やがて、光の差す場所でぴたりと止まった。身体がだんだん暖かくなってくる。水に溺れるような息苦しさは、もうない。
その時、周りの音が一層騒がしくなった。二つの声が会話しているのが聞こえる。
「詩織はまだ目を覚まさんのか?」冷徹さと威厳の滲む、中年男性の声だった。
「旦那様、お嬢様はまだお目覚めになりません」
男はそばの椅子を引き寄せ、腰を下ろした。声が、すぐ耳元で響く。
「いったい、どういうことだ」
「それは……」返事をする者は、ためらっている。「お嬢様を発見した時には、すでに水に落ちてからしばらく経っておりました。おそらく、その、誤ってプールに転落されたかと」
「ふん! 命拾いしただけでも僥倖だ。どこまでもそそっかしい! 燦にも言っておけ、一人でうろつくんじゃないと。大人に心配をかけるな!」
「かしこまりました」