章節 7: 俺がお前の叔父だ
編輯: Pactera-novel
詩織はその言葉を聞いた瞬間、ありえないものを突きつけられたように目を見開いた。彼、彼はいま……何を言ったの！？
「俺はお前の叔父だが──何か問題でも？」
拓海は詩織をじっと見た。細く切れ長の瞳の奥で、暗い影がかすかにきらめいた。
詩織は何か言おうとして、自分の唾を誤って激しく咳き込んだ。彼がふいに手を伸ばしたのを見て、詩織は反射的に背を座席に押しつけ、カバンを抱えて盾のように構えた。
拓海はしばし無言のまま詩織を見つめた。
彼女の様子に、拓海は苛立ったように襟元を軽く引き、前方のルームミラーに目をやった。東山の視線がどこか不自然で、それを見た拓海はさらに眉間の皺を深めた。
「降りろ」
彼は冷たく言い放った。
東山はすぐに車を路肩に寄せて停め、背中に冷たい汗がにじんだ。
詩織は、自分に「降りろ」と言われたのだと思い込み、胸をなで下ろした。そして車が完全に停まる前に、慌ててドアを開けようとした。彼が叔父？――そんなの、絶対に信じられない。信じられるはずがない。
実際のところ、あんな相手を──どうして受け入れられるはずがあっただろうか。
彼女はなおさら信じたくなかった。こんな人が──まさか自分の叔父だなんて。
彼が以前自分にしたことは今でも鮮明に覚えている。もし本当に彼が叔父だというのなら──詩織は豆腐に頭をぶつけて死にたくなるほどだった。
車が停まるやいなや、東山は重荷を降ろされたように飛び出した。えっ……？じゃあ自分の予想は外れたのか？この子はボスの女じゃなくて──まさか、ボスの姪だったのか！？
いや、違う──彼女は “ボスがずっと想い続けてきた相手” のはずだ！
東山の頭の中は一瞬で大混乱に陥った。
詩織は必死にドアノブを押したが、どうしても開かなかった。
詩織は慌てて振り返り、彼がスーツの上着に手をかけたのを見た。降りた運転手と、そしてこの男の動きを見比べた瞬間、血の気が一気に引いた。「な、何をするつもりなの！？」
今や車内には二人きり。何をされるのか、何を考えているのか──そして本当に、この人が自分の “叔父” だなんてあり得るのか！？
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