「彼女に付き添って、ゆっくり話をしてあげなさい」
「結婚式が終わってから戻ってきても遅くはないわ」
「その頃には数ヶ月も経って、都の風も変わっているでしょう」
はいはい、姫様のおっしゃる通りです。
私は気にしていません。
損をするのは北鎮若侯爵様ですから。
私は結婚するつもりはありません。都のあの家柄のよい若様たちの誰が兄様に及ぶというのでしょう。
良い人がいないなら、結婚しないほうがまし。
「月華、何を考えているの?そんなに物思いに耽って」
従姉が私の目の前で手を振った。
「従姉、未来の義兄様とは相思相愛なの?」
「お馬鹿さん、この世にそんなに多くの相思相愛なんてないわよ」
「私はまだ会ったこともないの。ただ顔立ちが整っていて、品行方正な人であることを願うばかり」
従姉の表情には少し寂しさが漂っていた。
これから迎える結婚に少し怯えているようだった。
おそらく母上が私に従姉に付き添うよう言ったのも、そういう意図があったのだろう。
顔も知らない相手との結婚、すべては親の命令と仲人の取り持ちによるもの。
従姉の心の不安を、私は少し理解できた。
私は彼女を助けたいと思った。
こっそりと人を遣わして未来の義兄様を尾行させた。
彼が誰かと舟遊びの約束をしていることを知った。
南洲というこの地は水が多く、遊覧船の商売が特に盛んだった。
私も一艘の船を借りた。
船頭の娘は琵琶の名手だった。
私たちも心ゆくまで楽しんだ。
「月華、どうして急に舟遊びをして曲を聴いてお茶を飲もうと思ったの?」
従姉は典型的な良家のお嬢様だった。
お茶の作法は一級品で、一挙手一投足が美しすぎるほどだった。
「束の間の暇な時を楽しむのよ」
あちこち見回してようやく未来の義兄様の船を見つけた。
私は船頭に近づくよう合図した。
思いがけず、その船の上では三人の男が一人の娘を取り囲んで手を出していた。
娘の助けを求める声が聞こえてきた。
「お父さん、早く離れて!」
「あれはあの人たちの船よ」
琵琶を弾いていた少女は恐怖の表情を浮かべ、身を屈めて避けた。