章節 3: 転生後の最初の謀り3
編輯: Inschain-JA
鈴木錦乃は眉をわずかに上げた。前世では「救援」があまりにも遅いと思っていたが、今生では逆に動きが早すぎると感じていた。
錦乃は体を硬くして、必死に溺れているふりをしながら、助けが来るのを待った。
また見知らぬ下男に触れられるかと思うと、錦乃はぞっとした。しかし考える間もなく、大きな手が彼女の首に絡みついた。
かすかな白粉の匂いが鼻先に入り、錦乃はむず痒さを覚えて思わず身じろぎした。
「バレされたくなければ動くな」低く力強い声が錦乃の耳に響いた。
錦乃はびくりと震え、ぎゅっと目を閉じて死んだふりをした……
やがて錦乃と鈴木佳世はともに岸へ引き上げられた。錦乃が船に戻るとすぐ、乾いた衣が肩に掛けられた。
それでも春風は冷たさを含み、錦乃の体を震わせた。なんとも言えない「ぞくぞく感」だった。
その直後、自分より悲惨な佳世を思い出し、錦乃は気持ちが落ち着いただけでなく、むしろ痛快に感じた。
錦乃を助け上げた人物は、彼女の腹を軽く押した。
錦乃はその圧迫を感じるや口を開き、あらかじめ含んでいた水を吐き出した。
成沢匡（なりざわ ただし）は目を閉じた瞬間、顔に温かいものを浴びた。錦乃の唾が混じった湖水がそのまま彼の顔を濡らしたのだ。
匡は静かに顔を拭いながら、聖人の言葉を思い返していた。天下に養いがたきは女子と小人のみと言われている。なるほど、まさしく嘘ではない。
「ごほ、ごほっ……」錦乃はようやく「目を覚まし」、感謝に満ちた瞳で匡を見上げた。「助けてくださったのは……お嬢さん、ですよね？」
「そうだ」匡は錦乃の目に一瞬、悪戯めいた光がよぎるのを見逃さなかった。どうやら先ほどの「彼女」から受けた脅しを、密かに意趣返ししているらしい。
「お嬢さんは本当に美人で、心まで美しいのですね。これからもっと栄養を取れば……きっと万人を魅了する方になりますよ」錦乃は意味ありげに匡の胸を軽く叩きながら言った。
実のところ、助けられた際に匡の胸に触れた錦乃は、その平らさに驚いていた。まるで荒野のように何もなく、飛行場よりさらに平坦だったのだ。
匡は錦乃より背も高く、年齢も上のはず。それなのに錦乃の方はすでに小さな膨らみを見せ始めており、比べると匡の「発育」はあまりにも遅れているように思えた。
救いの恩に礼を述べたあと、錦乃はすぐさま振り向き、佳世に目を向けた。
そこに横たわる佳世は、力なくぐったりとしていて、白い顔をわずかに傾け、首筋の線をさらしている。淡い緑の外衣はいつの間にか解け、下から覗くのは白い肌着と、その奥にちらりと見える薄紅の胸当て――薔薇の蔓模様があしらわれ、いかにも艶やかな趣を漂わせていた。
その姿を目にした名家の令嬢たちは、皆息を呑んで立ち尽くした。
錦乃が女性に救われたこと自体は何の問題もなかった。だが佳世を助け上げたのは下男たちだ。
濡れ衣が肌に貼りつき、体が触れ合ったと言われても不思議ではない。
ましてや――今や佳世の肌着まで、複数の男たちにまざまざと見られてしまった。これでは噂になるのは避けられまい。
「お姉さん！ お姉さん、大丈夫か？ どうか目を開けて！」錦乃はすぐに佳世の上へ身を投げ出し、自分の体でそのはだけた姿を覆い隠した。
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