章節 12: 第12章 向かい合っても気づかず
李阿囡にとって今回の復試は、初めて時間の切迫感を覚えた試験だった！
李阿囡は思考しながら、草稿用紙に大まかな構想を走り書きし、起承転合を考えて、すぐに清書用紙に書き始めた。
李阿囡は全神経を集中させていた。顧硯が彼女の隣に移動して日光を遮ったが、李阿囡は文章を書くことに没頭し、まったく気にしなかった。
今回は集中しているふりではなく、本当に他のことに気を回す余裕がなかったのだ。
時間があまりにも足りない！
ここまで試験を受け続け、どれほどの苦難と恐怖を味わってきたことか！
秀才になれるかどうかが彼女たち姉弟五人の生死を左右するのだ。彼女たちにとって、この秀才の資格は泰山より重い！
どうしても、この文章を書き上げなければならない、上手く書き上げなければならない！
何があっても、ここで失敗するわけにはいかない！
顧硯は立ち止まり、李阿囡をじっくりと観察した。
眉毛が少し太すぎる、おそらく描いたものだろう。彼女の兄の眉はきっと彼女より太いはずだ。この眉は見苦しい。自分で描いたのか、それとも姉が描いてやったのか？
痩せすぎだ、肌も黒すぎる。この髪も整えられておらず、めちゃくちゃだ。この手は、小さな黒い鶏の爪のようだ。
顧硯の心に痛みが走った。
かつて彼女が彼に付き添って最後まで頑張った時、あの手も今目の前にあるものよりわずかにましだった。彼女の幼少期は彼女が語ったよりもずっとずっと苦しかったのだ。
日光がずっと遮られている。つまり、この人は動かずに立っているということだ！
李阿囡は緊張して筆を止め、おそるおそる顔を上げて顧硯を見た。
顧硯は彼女がようやく顔を上げたのを見て、気持ちが高ぶり、彼女の視線に応えて明るく微笑んだ。
まぶしい朝日が顧硯の金の冠と華やかな服に反射し、その服からさらに反射して李阿囡の目に飛び込んだ。
李阿囡は朝日に向かって目を開いていたため、目の前は眩しく金色に輝き、目の前の人物の金の冠は朝焼けのように輝き、全身が光を放ち、金の冠の外側は黒っぽく見えた。
金の冠と朝焼けの光が李阿囡の目を刺すように痛めつけた。李阿囡はまばたきをして、無表情で頭を下げると、試験用紙の上で金色の星が乱れ飛んで見えた。
李阿囡は手の甲で目をこすり、何度か強くまばたきをして、目の前の金色の星の乱舞をわずかに和らげ、急いで筆を走らせ続けた。
あの線香は短くて太く、とても速く燃えている。彼女は全力を尽くさなければならない！
この文章は彼女が秀才になれるかどうかの鍵であり、一家の命と未来がかかっているのだ！
李阿囡は彼を一瞥し、無表情で頭を下げた。顧硯の顔の笑みはたちまち凍りつき、恥ずかしさと腹立たしさが同時に湧き上がった。顧硯は唇をきつく結び、無意識のうちに周囲を見回した。
周りの受験者たちは皆懸命に筆を走らせており、誰も顔を上げず、彼に注目する者もいなかった。
顧硯の心はわずかに和らぎ、目を細めて李阿囡を斜めに見つめ、しばらく見た後、サッと折り扇を広げ、さらに前に進んだ。
綠袖なら決してこんな態度はとらないだろう。この小娘は何かおかしい。
李阿囡は最速で文章を書き上げ、清書を終えた。あの短く太い線香は、もうほんの少ししか残っていなかった。
線香が消えると、二、三十人の書記官が一斉に前に出て、秋風が落ち葉を掃うかのように容赦なく、受験者たちから答案を回収した。
大成殿の前では嘆きの声が響き渡った。
一本の線香の間に文章を書くなんて、どうして可能だろうか！
彼は誰もが尉家のような大才子だと思っているのか！誰もが馬につかまりながらも千の言葉を書き連ねる天才だと思っているのか？
あまりにも酷すぎる！
しかし、受験者たちは嘆くことはあっても、罵ることはできなかった。
あれは尉学政、尉大才子なのだから！
およそ一時刻ほどで、この復試の結果が貼り出された。
この成績表は前回のものと比べて、人数が半分にも減っていた。
李学棟の順位は、前回の三十七位から、二十一位に上昇していた。
洪振業は前回の九十七位から、合格圏外に落ちていた。
順位を確認すると、李阿囡は李金珠の手を引いて急いで逃げ出した。
復試前の名簿が貼り出された後、李文華は李阿囡と李金珠を見つけられなかったが、二回目の成績表が出たとき、李金珠が通りすがりに彼を一度引っ張り、やっと二人を見かけて、急いで二人の後について宿に戻った。
「どうだった？聞こえたのは番号だけで、名前はわからなかった」李文華は走ったり歩いたりしながら、何とか二人に追いつき、首を伸ばして尋ねた。
「宿に戻ってから話します」李金珠は李阿囡を引っ張り、二人とも前を向いたまま早足で歩いた。
「落ちたなら落ちたでいい。あの秀才たちはみな裏があるんだ、普通の人じゃない！明日の朝早く帰ろう、田んぼも忙しいしな」李文華は李金珠と李阿囡が二人とも縮こまった様子を見て、きっと落ちたんだろうと思い、言葉を終えると心が痛んだ。
この旅で、四月の府試を含めると、前後あわせて十両の銀が水の泡になった。
なんという無駄遣いだ！
宿に入ると、李阿囡はまっすぐ部屋に向かい、李金珠は足を止めて李文華を見て笑いながら言った。「道では人が多くて、三叔父に詳しく言えなかったけど、学棟は二十一位で、明日も試験を受けることになったの」
「え？ああ！二十一ですって？それはすごい！わあ、うちの学棟はやるね！」李文華は目を丸くした。
「三叔父、声を小さくして。先生が言ってたでしょう、自慢しないほうがいい、福が減るって」李金珠は急いで注意した。
「わかってる、わかってる！安心して！早く行って、学棟にお茶を入れてあげなさい！俺はおいしいものを買いに行くよ。うちの学棟は何が好きだっけ？それとも、夜は外で食べようか？そうだ、そうだ、学棟は明日も試験があるんだから、俺は番頭に良い料理をいくつか作らせよう！」李文華は喜びを抑えられなかった。
院試の第四場の大復試は、高さんの説明によれば、本試験に次ぐ重要な試験だった。
大復試も寅時初（午前3時）に入場し、前日の復試と同様に、机は大殿の前に並べられていた。
空が明るくなる頃、試験問題が配られた。全部で五枚：四書文一篇、経文一篇、五言六韻の試帖詩一首、律例の暗記二百字以上、そして二つの格致題。
高さんによれば、院試の大復試では、時文の問題は通常一つ以上あり、一つを選べばいいとのことだった。
しかし李阿囡は五枚の問題と全ての紙を見たが、選択可能という文字は見つからず、選択可能だという告知も聞こえなかった。
この学政は常識にとらわれず、受験者に難題をふっかけるのが好きだ。李阿囡は勝手に選んで捨てるのを恐れ、一通り見た後すぐに頭を下げて書き始めた。
顧硯は尉学政について、ゆっくりと歩きながら見回った。
受験者たちはみな緊張していた。この大復試の内容は本試験の倍もあるのに、時間は本試験の半分もなかった！
ああ、魔王のような学政！
顧硯は李阿囡の横に歩み寄り、わずかに頭を傾けて彼女を見た後、さらに前に進んだ。
午後の第五場の試験では、律詩か賦かどちらか一つを選ぶ問題だけだった。李阿囡は律詩を選んだ。
顧硯は李阿囡の机の横に立ち、苦しげに韻を探して詩を絞り出そうとする李阿囡を見た。そして李阿囡が草稿用紙に書いた二行を見て、表情をコントロールできず、二本の眉が一緒に上がり、驚きの表情を浮かべた。
綠袖は詩歌においてとても才能があり、湧き出る泉のような文才で、素晴らしい詩句を多く生み出し、格調も高雅だった。この小娘が書いたこの二行が、詩と言えるだろうか？
何かがおかしい……
一本の線香が燃え尽きると、李阿囡はようやく一首の律詩を絞り出した。
ああ、彼女の詩賦の才能は砂漠の千年枯れ胡楊のように干からびていた。
答案を提出して出てくると、李阿囡は李金珠のすぐそばにくっついて古い木の下に立ち、心配しながら発表を待った。
今日の午前の試験はほとんど書き終えられなかったし、午後に作った律詩は……
ああ、あれを詩と呼ぶなら、「詩」という文字への侮辱だ。
彼女はとても心配だった。
科舉試験場内で銅鑼が鳴り、群衆が騒がしくなった。
李金珠と李阿囡は一緒につま先立ちになった。
今年の合格者リストは例年より半分以上も短く、壁に貼られるやいなや、誰かが大声で読み上げ始めた。
第十六位「李学棟」の三文字を聞いた時、李金珠は目を丸くした。
「急いで！」李阿囡は李金珠を引っ張り、二人は人混みをかき分け、走るように宿へと急いだ。
急いで戻って、急いで着替えなきゃ！急いで急いで！
………………………………
顧硯は本当に尉学政についてまわり、朝から晩まで、真面目に二日間の試験を見守った。これだけでも尉学政を大いに驚かせたが、顧硯が一日おいて行われる進学宴会への参加を快諾したとき、尉学政は感動のあまり目が潤み、顧硯の腕を何度も叩きながらも、言葉が出てこなかった。
なるほど、普段は墨を惜しむように書かない姉がこんなに長い手紙を書いたわけだ。この甥っ子は本当に分別をわきまえるようになったのだ！
顧硯は目元を何度も押さえる叔父を横目で見て、しばらくして黙って空を見上げた。
彼が最初の「三字経」を暗唱し、最初の詩を詠み、最初の時文を書いた時も…
この叔父はいつもこうして涙を浮かべていたのだ！
母の言葉によれば：「叔父の涙はあまりにも多すぎる！」
「坊や」尉学政は顧硯を見ながら、少しおずおずと笑いかけて尋ねた。「お母様から聞いたが、史家との縁談を断ったそうだね？どうして……」
顧硯の視線が斜めに向けられるのを感じ、尉学政は急いで言い直した。「お母様がね、こんなに分厚くて長い手紙を書いてきたんだよ！史家のあの娘さんは、お母様が見守って育てた子で、お前とあの子は小さい頃から……」
尉学政の予想に反し、顧硯はパッと扇子を閉じ、とても真面目に答えた。「あまりにも慣れすぎているんです。根っこから何もかも知りすぎていて、そんな女を娶ったら、面白みがない」
「え？」尉学政は一瞬呆然とし、すぐに言葉を失った。
なんということを言うのか？
「私の縁談のことで、叔父が心配する必要があるでしょうか？母が相談するなら、叔母に相談するはずです。母のあの手紙は、叔母に書いたものですよね？」
尉学政は顧硯を横目で見て、一声鼻を鳴らした。
この甥は何もかも良いのだが、人の弱みをつくという一点だけが良くない。
「あちらで、どの受験者が県に留まり、どの受験者が府に送られるか、叔父は本来そちらを心配すべきでしょう。それこそ叔父の本当の仕事です」顧硯は折り扇で尉学政をつついた。
「すべて決まりがあることだ」尉学政はそう言いながら、顧硯と前後して部屋の反対側にある長机へと向かった。
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