章節 7: 薄情

編輯: Pactera-novel

生まれてこの方、彼女は名門森田家の唯一のお嬢様だった。家には兄か弟しかおらず、実際には従兄弟であっても、彼女はもう彼らを実の兄のように思っていた。常に羨望の的であったが、今日のような屈辱を味わったことは一度もなかった。

やはり、「唯一」から「唯二」になるというのは、本当に最悪な気分だった。

これからは最悪の状況だけでなく、さらに悪い状況になるだけだろう。

彼女には伯母と貴明がどうしてそんなに薄情になれるのか理解できなかった！

「また不機嫌になって。その態度、私の前ならまだいいけど、絶対に他の人に見られないようにね。特におばあさまには」優子の目には冷たさが浮かんでいたが、口元には笑みを浮かべながら、ゆっくりと喜美の襟元を整えた。「あなたは森田家のお嬢様なのよ」

喜美は優子のその様子を見て、ぞっとし、足の裏から寒気が這い上がってきた。なぜなのかはわからなかった。

しばらくして、喜美は小声でもごもごと言った。「凪紗が帰ってきたわ」

「誰……って言ったの？」優子は喜美の肩甲骨をつかむ手に力を込めた。喜美は顔をしかめて痛みに耐えた。優子はようやく少し手を緩めたが、それでも手は危うげに首の近くに置かれたままだった。

いつもは落ち着いている母親さえも取り乱していることに、喜美は急に興奮してきた。「伯母さんの家の、十数年前に行方不明になった娘よ！お母さん、あれ偽物だと思うでしょ？そんなに長い間いなくなってて、見つかるはずがないわ」

もしこの凪紗が偽物なら、彼女こそが森田家の唯一のお嬢様になれる。

三人の兄たちも、結局は彼女のものということになる！

優子の手は少し白くなり、長い間喜美の言葉に応えなかった。

3日後、詩織が凪紗を燕の都中学校に入学させると約束した日がやって来た。

詩織は本来彼女を連れて行くつもりはなく、言いたげな表情を浮かべていたが、娘があまりにも向上心が強かったため、仕方なかった。詩織は、娘が「学校」や「試験」といった普通の生徒なら恐れる言葉を聞いて、逆に普段は無表情な顔に微かな興奮の色を浮かべるのを見ていた。

はぁ、これから先のギャップで彼女の熱意が打ち砕かれませんように。

校長室の入り口に向かって歩いていると、突然副校長に出くわした。副校長は急いで近づいてきて、詩織の腕を引っ張った。「森田さんのお母様、数日後に来るようにとお伝えしたはずですが、なぜ私の言うことを聞いてくださらないのですか？あなたのためを思ってのことなんですよ」

彼は困ったように優しい顔をしていた。

森田家は巨大な財力と影響力を持ち、手を出せない存在だった。学校に図書館まで寄付していたのだ。校長が出張している数日間を利用して、この転校生の入学手続きを静かに済ませようと思っていたのだが、なんと校長が予定より早く戻ってきてこの件を知り、今まさに激怒している最中だった。副校長はもちろん、この荒波の中で火に油を注ぐようなことはできなかった。

「森田家の方か？入ってもらいなさい」校長はどうやら聞いていたようだ。副校長は絶望して顔を覆った。森田家の運が悪かったとしか言いようがない。数日後、この件が収まれば何とかする手もあったのに、よりによって今日来てしまうとは。

詩織は校長が何を言うか予想できた。彼女は凪紗を入り口で止め、優しい声で言った。「凪紗ちゃん、少し待っていて。すぐに戻るから」

「うん」凪紗は感情なく返事をした。これから起こるであろう状況がどれほど彼女を傷つけるか察知できないほど世間知らずなのか、それとも既に多くの傷を負っているため心が疲弊しきって、もう何も気にしなくなっているのか、わからなかった。

詩織は目に涙をにじませながら、副校長と一緒に中に入った。

オフィスには喜美もいた。生徒代表として、次の学校祭について校長と相談するためだった。

詩織と副校長を見て、喜美はまったく驚かなかった。伯母は何としても凪紗を燕の都中学校に入れようとしているのだ。

校長は詩織と副校長を見るなり、表情を曇らせた。「森田さんのお母様、あなたの気持ちはわかります。しかし、我が燕の都中学校は何という場所ですか？市内最高の高校です。一度例外を作れば二度目も出てくる。この先どうやって校長を務めればいいのですか？」

彼は副校長の方を向き、さらに容赦なく言い放った。「今日この前例を作らせるなら、校長の座は降りる。代わりにあなたがやりなさい」

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