窓の外では雨が降っていた。
雨水が窓を叩いていた。
桐山恭弥が私の向かいに座っている。あの年と同じように、彼の目は優しく、渇望に満ちていた。しかし、あの日のように、また別の人のために私に問い詰めに来たのだ。
雨足が強くなってきた。
私が先に沈黙を破った。
「何か用があるの?私に言いたいことって」
私は恭弥にもう会いたくなかった。心理医師は、絶対に冷静さと平静さを保つ必要があると言った。城之内譲と国外へ行く約束をする前に、私の生活が波立つのは避けたかった。
私はここに座り、恭弥に尋ねた。
「たぶん、これが私たちの最後の対面になるわね」
恭弥の目が揺れ、目尻が赤く染まった。彼はポケットから小さなボイスレコーダーを取り出し、私の目の前で再生した。
雷鳴とともに聞き覚えのある声が強引に私の耳に入り込んできた。私の魂さえも震えた。
「恭弥」
「睡眠薬はスープに入れて」
父の声だった。
時の流れの中で消え去ったはずなのに、長い間私の魂に付きまとっていた父の声。
「将来、詩織がお前を誤解するかもしれないが、それでもやる気があるか?」
窓の外で稲妻が光った。
ボイスレコーダーの中の雷鳴と重なり合う。
「はい」
「篠原さん」まだ若々しい恭弥の声が響く。「お嬢様の安全のためなら、何でもします」
「すまないな、坊や」
音声は突然途切れた。
私と恭弥は向かい合って座っていた。彼はさらに監視カメラの映像を取り出した。映像には、私が清白を失ったあの日、私の部屋に侵入してきたのが映っていた。他の誰でもない、恭弥だった。
つまり、ずっと他の誰でもなく、恭弥だったのだ。
彼は目を赤くし、脇に隠した手は震えていたが、それでも私に告げた。
「詩織、愛していたのは本当だ」
「一度も嘘じゃなかった。浮気したのは俺が悪かった。子供のことも、認めたくなかったのも俺だ。この数年、お前はどんどん優秀になって、外の人間までお前の方が能力あるって思うようになった」
「だから嘘をついて自分を欺いた。本当はお前を愛してなんかいないんだって。美秋を使って自分を麻痺させたけど、本当にお前と別れようと思ったことはなかった」
私が恭弥と別れた日。
一晩中雨が降り続けた。
城之内が私にコートを掛け、車の中で隣に座り、突然尋ねた。
「お嬢様、後悔したことはありますか?」
— 新章節待更 — 寫檢討