章節 8: 人間のクズ
編輯: Pactera-novel
エレベーターの中には監視カメラがあるだけでなく、いつ誰かが入ってくるか分からない。秦野幸子の顔は元々青白かったが、今はもう血の気が全く失せていた。
彼女は我慢の限界に達し、歯を食いしばって「クズ」という二文字を吐き出した。
唐沢新は冷たく笑った。「クズでも耐えるしかないだろう！」
エレベーターがチンと音を立てて部屋のフロアに到着すると、新は幸子を担ぎ上げ、大股で中に入った。
服はバラバラと床に落ちていった。
……
……
唐沢は様々な方法で長い間彼女を弄び、ようやく秦野を解放した。
彼は、まったく動かずに横たわる彼女を見つめていたが、やがて彼女は何とか力を振り絞り、這うようにして起き上がり、一枚ずつ、ゆっくりと服を身に纏っていった。
幸子は自分のバッグを手に取り、新の方を見た。声は硬かった。「帰るわ」
新は呆れて笑った。「わからずや！」そして長い指でドアを指した。「出ていけ」
……
吉田健に今の姿を見られたくなかったので、幸子は彼に迎えに来てもらうのではなく、スマホアプリで配車サービスを呼んだ。
すでに夜遅くで、しかも郊外だったため、車はほとんど通っておらず、幸子は道端で立ったまま約30分も待って、やっと車を捕まえた。
車に乗り込み、少しずつリゾートから離れていくにつれて、幸子の硬直した体はようやく少し柔らかくなった。彼女は頭を垂れ、両手で顔を覆った。
そして、肩が少し震え始めた。
誰だって、玩具扱いされて平気でいられるわけがない。容赦ない屈辱を浴びせられて、傷つかない人間などいない。それが、新だというのならなおさらだ。かつては彼女にだけ温もりをくれて、暗い世界に差し込んだ唯一の光だったのに。
頭の中に、あの悪夢の続きが勝手に蘇ってきた。
新が彼女にあの女子たちと一対一で戦うように言った後、女子たちは一人ずつ彼女と対決した。彼女は双拳では四つの手に勝てず、大勢には敵わなかったが、一対一なら恐れることはなかった。
相手が何人いたのか、彼女にはもう覚えていないが、命がけで掴みかかり、引きずり倒し、とにかく全員を地面に這いつくばらせた。その記憶だけは、はっきりと残っていた。
もちろん、彼女もひどい怪我を負った。顔も体中も傷だらけで、かろうじて立っていられるほどだった。
彼女は歯を食いしばって耐え、一歩一歩、ずっと壁にもたれて見物していた新の前まで行った。「次はあなたの番」
彼に勝てば、彼女は行くことができるはずだった。
新の顔には驚きなのか、おもしろがっているのか分からない表情が浮かび、しばらく彼女を興味深げに見つめた後、腕を組んで結論を下した。「お前には俺は倒せない」
「それでも試してみるわ」
新は首を振りながら笑った。彼は体を起こし、長い腕を彼女に伸ばした。
けれど、彼の手は彼女に向かっては来なかった。結局その大きな手は彼女の頭にそっと置かれ、くしゃりと優しく揉まれた。「今度にしよう」
今度……
この「今度」が、彼女の悪夢の始まりとなった。
幸子の手はさらに強く握りしめられた。
もし後に起こることを知っていれば、彼女はあの女子たちに殴り殺されても、新と知り合うことなど望まなかっただろう。
……
秦野は翌日、起きようとしたが何度試しても起き上がれず、健に電話をかけてさらに数日の休暇を求めた。
健は心配そうにあれこれ質問してきたので、彼女は頭を抱えながら適当に受け答えした。
彼を安心させた後、幸子は電話を切って寝直そうとしたが、健はもごもごと言い始め、何か言いたげな様子だった。
幸子はもう彼と言葉遊びをする元気もなかった。「言いたいことがあるなら言って」
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