章節 9: 第9章

「林莉奈が君たちを呼んだんだろう、彼女が行方不明になったとでも言うのか？」

二人の警官は顔を見合わせ、真剣な表情で彼を見つめた。

「いいえ、彼女は亡くなりました。」

「今回お会いしたのは、病院で遺体の確認をしていただくためです。」

篠原智也はようやく彼らの姿に気づいたが、次の瞬間、より狂気的な笑みを浮かべた。

「江川美咲が死んだだって？」

彼は信じなかった。数日前まで彼につきまとい、オーロラを見に行きたいと言っていた私がどうして死ぬことがあるだろうか。

でも私は本当に死んでいた。胃がん。痛みに苦しみながら死んでいった。

智也は信じず、病院にさえ行かなかった。病院は最終的に私の両親に連絡するしかなかった。

両親は私の遺体を確認した後で智也を探し出した。二人とも涙を浮かべ、顔色は一段と老けて、智也に対する以前の喜びはもうなかった。

母は顔を上げ、智也の頬に平手打ちをくらわせた。

それは私が初めて彼女が怒る姿を見た瞬間だった。

「篠原智也、私の娘を返して。」

智也は顔を横に向け、ようやく私が本当に死んだことを理解した。

「お母さん、林莉奈は……」

智也は最後に私に会いたいと申し出たが、母にきっぱりと拒否された。彼女は智也の偽善を激しく非難した。

「あの子が病院に十日間いたのを知っているの？病院から電話しても出なかったって。篠原智也、あなたは私たちの娘を一体何だと思っていたの。」

彼はよろめきながら思い出した。私から電話をもらったあの日のことを。

しかし世界に後悔薬はなく、ましてや彼は自ら「死んでくれればいい」と言ったのだ。

あの日から智也は家に戻ったが、何の意味があっただろう。彼がどれだけ隅々まで探しても、私はもういなかった。

私は男がベッドの端に座り、つぶやくのを見ていた。

「莉奈、いつまで遊んでるつもりなんだ？」

彼は虚ろな目で、何度も何度も私に電話をかけた。

智也は変わった。美咲からのメッセージにも返信しなくなった。

彼が自責の念に駆られていることは分かっていた。あの日言った言葉を後悔していたのだ。

十二日目、私の音声メッセージが時間指定で送信された。

智也は私の着信音を変えていた。それまで私からの通知をずっと消音にしていたことに気づいた。