私の行動は、その場にいた全員を一瞬で驚かせた。柳田青葉の酔いも少し覚めたようで、私を見る目にはちらつきがあった。
「わ、渡辺辰哉、来てくれたのね……私、飲みすぎちゃって……」
青葉はすぐに私に抱きついて、全身を預けてきた。
すごいな、酔っていても演技を忘れないとは。
なら私も協力しないとね?
私はかつての温厚で穏やか、害のない姿に戻った。
彼女を抱きかかえて立ち上がり、周りの人たちに軽く謝意を示した。
「すみません、妻が飲みすぎてしまって、ご迷惑をおかけしました」
彼女の友人はようやく安心したように私に紹介してきた。
「渡辺さん、この方は大学の先輩で、私たちにとても良くしてくれる人なんです。今日は出張から戻ってきて、ちょうど私たちの集まりに合流したんです。青葉は飲みすぎただけだから、誤解しないでください……」
以前の私なら、おそらくその場で発狂して、この「先輩」を日常生活もままならないほど殴りつけていただろう。
でも今の私は、ただ何でもないように笑うだけだ。
傍らで江口輝が私を見る目には、面白がるような探るような色があった。
私は彼に礼儀正しく微笑みかけた。
「先輩、こんにちは。この数年、海外で苦労されたんですね。ビデオで見るよりもさらに風格が増されていますね」
一言言い終えると、個室内は完全に静まり返った。
皆、様々な表情で顔を見合わせていた。
輝は気にする様子もなく笑って、テーブルの上のフルーツ皿に手を伸ばした。
すると、さっきまで私にしがみついていた青葉が突然顔を上げて叫んだ。
「あなたマンゴーアレルギーだから、食べられないわ!」
輝の伸ばした手が宙に止まり、彼女の真剣な表情を見て可笑しそうに笑った。
優しい声で言った。「君は十年前と同じだね、お馬鹿さん。これはスイカだよ、君は酔っているんだ」
その瞬間、私の頭の中で何かが轟然と爆発したような気がした。
私は魚介類アレルギーなのに、彼女がデートで選ぶのはいつも海鮮レストランだった。
そして毎回私にこう言うのだ。
「私、海鮮が好きなの。あなた、私に合わせてくれないの?」
そうか、彼女はわがままなお姫様ではなく、ただ優しさを他人のために取っておいただけなんだ。
私は無表情で彼女を抱えて外に出た。階下でタクシーを呼ぼうとしたとき、輝が追いかけてきた。