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章節 9: 第9話

頼みの用心棒も全滅し、自身も致命傷を負ったブエルは、恥も外聞も無くガークとリリィに向かって命乞いをする

俺はその命乞いに応じ、リリィの精霊術により引きちぎられた四肢を復元してもらった

「リリィ、助かった・・・思う所もある相手だったろうに・・・すまなかったな・・・」

【いえ・・主様のご随意に・・・・】

リリィに向き直り、その肩に両手を乗せ労うとリリィは不意に意識を失い黒い髪は元の金髪へと戻る・・・リリィが倒れない様、咄嗟に抱きかかえた

その時

「馬鹿がぁぁぁぁ!死ねぇ!!!ガーク!!」

ブエルは、俺が背中を向けた瞬間を狙いすまし、用心棒が使っていた剣を拾い上げ手にすると、大きく振りかぶり俺に向かって振り下ろして来た

!?

ブエルの声に気づいて振り返った時には、目前にブエルの振り下ろした剣先が迫っていた

「危ないにゃぁ!!」

ドン!と横から突き飛ばされ、剣先が俺の左肩を少しかすめる

「ぐっにゃぁ!!」

女性の悲鳴と共に俺はリリィを抱きかかえる様に倒れ込む

「!?き、君は!?」

上体を起こし、振り返ると背中に深い傷を負った猫人族の女性が倒れていた

「おのれぇぇぇ!寸前で邪魔しやがってぇぇ!まずはテメェからくたばれ!!」

剣を持ち替え、猫人族の女性に向け剣を突き刺そうとするブエル

「っ!?」

咄嗟にブエルに飛び掛かり、突き刺そうとした剣の根本を掴む

「ガークぅぅぅ!!」

血走った目のブエルと、近距離で睨み合う・・・剣の根本を掴んでいる俺の手からはポタポタと血が滴り剣先を通じ銀髪の猫人族の女性の顔付近へと滴り落ちる

剣の束を挟んで、歯を食いしばり両手の指先の肉が刃先によって切り裂かれる感覚を抑え込み力を込める・・・が

押し込んでいるブエルは全体重をかけて、剣を押し込もうとしている・・・徐々に剣先は下に下がり猫人族の女性の顔へと近づく

(だ、だめだ・・・血で滑る・・このままでは・・)

何とか左右に軌道をずらそうと力を込めるも、その都度ズルっと血糊で手が滑り剣先が押し込まれた

諦めかけたその瞬間、部屋の空気が一気に冷え込んだ様に寒気がした

いや、実際に自身の吐く息も白くなり、流れる血も剣先も霜が降りた様に冷たくなる

(なんなんだ?)

急な温度変化に気づいているのは俺だけの様で、目の前で俺を狂気の目でにらみつけるブエルは獣の様な息遣いでヒューヒューと喉を鳴らし涎をたらしていた

心配になり目線を下げ銀髪の猫人族の女性を確認すると

ドクン、ドクン、ドクンと背中が上下に激しく脈動し銀髪で表情が見えないが、僅かに見える口元の犬歯の隙間から漏れる息が白くなっていた

「き、君・・・大丈夫か!?」

!?

そう声をかけた瞬間

猫人族の女性はガッと目を見開き、一瞬でその場から消えた

「!?き、消えた!?」

次の瞬間

「がハッ!?・・・な、なにが・・・!?」

突如口から血を吐き、さっきまでの血走った目が白めに変わるり力なく俺の方へと倒れ込んで来るブエル

「!?」

咄嗟に体を横にそらし、ブエルを避けると背中を鮮血に染めたブエルは倒れたまま動かなくなった

倒れたブエルから視線を上げ、見上げると右手で手刀を作り鮮血で真っ赤に染めた猫人族の女性が俺を見つめ立ち尽くしていた

「これは・・・君が・・・・」

「血、血の盟約・・・今より私はお前の眷属・・・銀豹姫ミーナの名において、その血脈が尽きるまで・・・御傍に」

よく見ると、不敵に笑う猫人族の女性の口元へは糸を引くように俺の血の跡がついていた・・・そして、狂気を宿したその目は真紅の満月の様に怪しく輝く

「き、君は・・・・」

俺は、何かに引き寄せられる様にミーナと名乗る猫人族の女性の胸元から見える隷属の紋章へと手を伸ばした

【奴隷鑑定システムを発動します】


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