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2.17% 誰があの娘をNPCにしたんだ!? / Chapter 10: こんなNPC、見たことある?

章節 10: こんなNPC、見たことある?

編輯: Pactera-novel

大剛兄さんが白木芙の姿を目にした瞬間、その胸は言葉にできない感動で満たされた。

特に、自分が窮地に陥った時、口先では「親分」と持ち上げていた部下たちが誰よりも早く逃げ出したことを思い出すと、戻ってきて自分を救ってくれた芙への感謝の念が一層強まった。

苦境にこそ真の友情が試される。

あの卑怯な連中と、芙とを比べてみよ……

大剛は突然自分の頬を平手で打った。

間違っていた。芙を、あのような輩と同列に扱うこと自体が芙への侮辱だ!

これは芙を褒めることではなく、明らかに芙を侮辱することだ!

「まだ行ってなかったのか?」大剛はにこやかに笑いながら近づいた。

「余計な話は後で。ここにいるとよそ者たちに追いつかれる。早く私について来て!」芙は急かすように言った。

その通りだ、今はそんなことを考えている場合ではない。

大剛はおとなしく芙の後についていった。

二人は前後に並び、黙ってうつむきながら歩いた。

いくつもの曲がり角を過ぎた後、芙は足を止めた。

「どうした?」大剛が尋ねた。

芙はため息をついた。「ここまで来れば、あのよそ者たちがすぐに追いつくことはないでしょう」

大剛は周囲を見回した。この辺りには覚えがあった。地形に不慣れなよそ者なら、確かにすぐには見つけられまい。

ありがたい、これで助かった!

「感謝する。この命はお前が救ってくれた。今後は何でも言うことを聞く!」大剛は感激のあまり声を震わせた。

芙は慌てて首を振った。「とんでもない。あなたは私の“一番のお兄さん”なんだから。感謝すべきは私の方です」

一番のお兄さん?

大剛は少し困惑した。芙がポケットに手を入れているのを見て、彼は思わず身を乗り出した。

数秒後、芙が手を差し出した。

彼は片目を大きく見開き、ようやくはっきりと見えた——芙の手のひらには、紛れもなく小さな袋に入った石灰があった。

待て、石灰?

しまった!

大剛は危険を察知したが、すべては遅すぎた。

芙は力いっぱい石灰を振りまき、それは彼の顔全体を覆った。

焼けつくような痛みに、大剛は悲鳴をあげた。

このクズめ、さっきの感動を全部返せ!!!

大剛が地面でもがき苦しむ中、芙は躊躇いなくナイフを手に襲いかかった。

彼女が苦労して大剛をここまで連れてきたのは、プレイヤーの獲物を横取りするためだ。

もう少し遅れれば、プレイヤーが大剛の悲鳴に引き寄せられてくる。そうなれば努力が水の泡だ。

とにかく刺す!

ナイフが次々と突き立てられ、「-13」「-9」といった数字が浮かび上がるにつれ、大剛のHPはみるみる減り、名前の横には新たな状態異常が並んだ。

【出血】【虚弱】【障害】

もう終わりだ。

全てが終わった!

足が動かなくなった大剛は泣き叫びたかった。

いったい誰が悪い?人の良いふりをした芙を見抜けなかった自分が愚かなんだ。

確かに、彼は自分を捨てて逃げた手下たちと芙を比べるべきではなかった。

“卑劣さ”という点では、あの四人が束になっても、人間らしい外見をした芙の足元にも及ばない。

なんという業だ!

このままでは、いったいどれだけの者が芙の偽りの姿に騙され、罠にかかって死んでいくのか?

想像しただけで、大剛は怒りに全身が震えた。。

しかし、よく考えればこの結末も悪くはない。

どうせ死ぬなら、芙一人に殺されるより、大勢で芙に騙されて死ぬ方がまだましだろう。

そう悟ると、重傷で息も絶え絶えの大剛は静かに息を引き取った。

【大剛兄さんを倒した。貢献度56%。レベル差補正後、経験値560を獲得】

通知を受け取った芙はこぶしを強く握った。

爽快だ!

さらに嬉しいことがあった。

彼女が大剛のポケットを探っていると、再びゲーム通知が鳴った。

【繰り返し可能な隠しクエスト「秩序の鉄拳」を完了。報酬:経験値1000、属性ポイント1】

【秩序の鉄拳】

【クエスト説明:廃棄冷却工場には秩序を乱す小集団がはびこっている。彼らを討ち、秩序を守る決意を示せ!】

【クエスト目標:危険度「黄色」以上の混沌勢力を1つ倒す。繰り返し可能】

マーティンから受けた【借金返済】クエストと合わせると、大剛を倒した芙は合計3560の経験値を獲得した。

あと200ほど経験値を貯めれば、【霊能見習い】を一気にLv5まで上げられる。

そうなれば、大剛兄さんだろうが小剛だろうが、プレイヤーの助けがなくても一撃で跪かせ、「親方」と呼ばせることができる!

「これでやっと“初心者村の雑魚”という肩書から脱却できる」

芙は深く息を吐いた。

遠くから慌ただしい足音が聞こえてきた。十数秒後には、プレイヤーたちの話し声がはっきりと聞こえるようになった。

「悲鳴はこっちだ!」

「急げ!」

「ちっ、誰が俺の獲物を横取りやがった!」

まるで戦場特派員と化した発掘姫は、黒虎の福助や大友大成らを率い、廃墟の中を駆け抜けていた。

彼らはもう見失ったかと思っていた。

しかし歩いていると、遠くから悲鳴が聞こえた。その方向へ走り出した瞬間、大剛が討たれたというゲーム通知が届いた。

いったい誰が?

角を曲がると、発掘姫は突然立ち止まった。

「どうした?」大成が不審そうに尋ねた。。

発掘姫は無言で指をさした。

残っていた十数人のプレイヤーが一斉に顔をのぞかせ、その場に釘付けになっ

崩れかけた高い壁の下、瓦礫が積み上がるその上に、血まみれの死体が横たわっていた。

その傍らで、白い人影が壁にもたれて立っている。冷たい光の中、彼女の衣服と手の甲に染みついた鮮血がひときわ生々しく映った。

配信のコメント欄が沸き立った。

【カッコよすぎ!】

【世界の名画!】

【服と手が汚れてる……舐めてきれいにしてあげる】

【何舐めてんだ!発掘、早く謎の少女Xが無事か確認しろ!】

発掘姫は我に返り、急いで路地の奥へ駆け寄った。

「あ、あの……大丈夫?謎の少女……」

「私は白木芙。日に撇る白、樹木の木、芙に従う、と書くの。名前で呼んでくれて構わないわ。大丈夫、ちょっとした傷よ」

芙は背筋を伸ばし、疲れた顔に微笑みを浮かべた。

その姿に、プレイヤーたちの保護欲が一気にかき立てられた。

【謎の少女Xの名前は白木芙なのか、可愛い!】

【芙芙、私の芙芙……どうして傷ついてしまったの、側で守れなくてごめん】

芙は軽く咳払いをした。

「みんなのおかげよ。あなたたちが奮闘してくれなければ、私は……だが、残念なことに……多くの仲間を失ってしまった。私の責任よ。彼らを守れなかったこの私が悪い」

話すうちに彼女の微笑みは消え、首を振りながら深い悲しみを浮かべた。

発掘姫は慌てて慰めた。「大丈夫、彼らはすぐに復活するから!」

「そうだ、あれは本当の死じゃない。自分を責めないで」大成は棍棒を肩に担ぎながら続けた。

プレイヤーたちは口々に芙を励まし、誰一人として獲物を横取られたことなど気にしていない。

しかし芙はまたため息をついた。「そんな風に慰めなくていいの。私にはわかっているから」

彼女はポケットから一握りの信用コインを取り出した。

信用コインは廃棄冷却工場で使われる通貨だ。近隣の超大居住区「リン」が発行しており、質が高く偽造が難しいため流通している。

「これは彼のポケットから見つけたお金よ。私には必要ない。あなたたちが受け取ってください」

発掘姫たちも、配信を見ている他のプレイヤーも、芙のこの行動に言葉を失った。

そう、これが白木芙だ。プレイヤーを全身全霊で守るNPC。戦闘前にはプレイヤーの安全を案じ、戦闘後にはその死を自らの責任とし、さらにエリートモンスターから奪った金すらプレイヤーに慰謝料として渡す!

【こんなNPC、見たことある?】

【泣ける……みんな、泣け!】

【前に芙ちゃんの悪口言ったこと謝る。今日から俺は芙保護!】

【芙ちゃんの前に狂わない者などいない。ただ耐えているだけだ】

【クソ、この金、受け取れるかよ!】

配信ルームのプレイヤーは熱狂した。

芙は満足そうに頷いた。

幸い、機転を利かせてプレイヤーが到着する前に体に血を塗り、傷ついたふりをしておいて正解だった。でなければ、ここまで簡単にプレイヤーの同情を引くことはできなかっただろう。

これでよし。

彼女は大剛からプレイヤーの分け前を全て奪い、そのうちの一割にも満たない金をプレイヤーに分け与えた。そしてプレイヤーは彼女に感謝しなければならないのだ!


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