誰があの娘をNPCにしたんだ！？
作者: さわやかタイプのコーラ© WebNovel
章節 1: 救いの道はその中にある
編輯: Pactera-novel
「ザザス、ザザス……蘇れ、我が親分！」
白木芙（しらき ゆう）は少しいらいらしていた。
なぜなら、さっきからずっとかすかな声が彼女の耳元でささやき続けているからだ。
寝ようとしてここに来たのに、いったい何のつもりだ？
極度のいらだちの中で、彼女は一瞬で布団の「結界」を突破し、目を見開いて周囲を見渡した。
視界に飛び込んできたのは、まだらな石壁、明滅する電灯、そして喜びのあまり涙を浮かべる見知らぬ顔だった。
「親分、ついに目を覚ましましたね、よかった！」
私が目を覚ました？
白木芙は無意識に傍らの鏡を見た。そこに映っていたのは、愛らしい黒髪の少女だった。
マジかよ。
彼女は衝撃を受けた。
ただ寝ただけなのに、どうして長所が短所に取って代わられているんだ？確かに優れた部分はより際立っているけど、それは償いにはならない！
その瞬間、無数の記憶が一気に押し寄せてきた。
白木芙は思い出した。数日前、『星団の上』というゲームがパブリックテストを開始し、ゲーム機器を買いに行く途中、コミュニティで他のプレイヤーたちが開発者の母親を罵倒しているのを見ているうちに、うっかり大きな事故に遭ったのだ。
その時、彼女は赤ん坊のような深い眠りを体験した。
そして目が覚めると、ゲームの世界に飛び込んでいた。
彼女はゲームの主人公になったわけでも、悪役やその友人になったわけでもなく、今の彼女は独立した紹介ページすら持たない端役だった。
とはいえ、普通の端役に比べれば、彼女の立場はほんの少しだけ上だ。
なんと言っても、専属の部下が一人いるのだから。
白木芙は振り返り、緊張した面持ちで自分を見つめる少女を見た。
そう、これが彼女の唯一の部下だ。
安藤雅、身長130センチ、食べることと寝ることが得意で、ゴミ捨て場から拾ってきた子だ。今は彼女と一緒に近くの最大の悪の組織、野火帮に加入している。
なんという災難だ！
特に自分の戦闘力を確認した後、白木芙は絶望感に襲われた。
芙一人 ≒ 雅十人。
このゲームの世界では、この実力は突出しているどころか、むしろ取るに足らない存在だった。
一昨日、野火帮の借金取り立てに行った時、債務者のクソジジイに額を殴られ、丸二日間も気を失っていたのだ。
こんな戦闘力では、この世界で頭角を現すことなど想像できない。
実際、頭角を現すどころか、生き延びることさえ難しいだろう。
『星団の上』は、言うまでもなく新作オープンワールドアドベンチャーゲームだ。ゲームは宇宙を舞台にした危険な世界で展開される。
中間部分は忘れた。
とにかく、プレイヤーは異星からの旅行者として、遠い辺境の初期の星から旅を始め、『星団の上』の真相を徐々に解き明かしていく。
ここには凶暴な星空の巨獣、狂気の霊能魔道士、野心に満ちた邪悪な組織がいる…
彼らが一撃を放てば、その戦闘の余波だけで星を引き裂くほどだ。
しまった。
白木芙は戦闘の余波に巻き込まれて、簡単に死んでしまうかもしれない。そんなのごめんだ。
あれこれ考えた末、彼女はあの手を使うしかないと思った。
「出てこい、俺のチート能力！」
反応なし。
いや、来た……来た！
突然、淡い青色の光のスクリーンが白木芙の前に展開された。
【名前】：白木芙
【年齡】：20
【種族】：人間
【テンプレート】：普通
【経験】：0
【メイン職業】：無職Lv2（421/500）
【副職業】：なし
【HP】：50/50
【属性】：力4、敏捷3、体質5、知力3、精神4、インスピレーション3
【スキル】：なし
【天賦】：なし
【属性ポイント】：0
【名声】：1
まさかポイント振り分けシステム？
強力だ、本当に強力だ！
白木芙は喜んだ。
弱小姫から大姫覇者へ、これが彼女の無敵への道だ！
しかしすぐに、状況がおかしいことに気づいた。このインターフェースはプレイヤーのステータスパネルとまったく同じだった。
彼女が素早く確認すると、案の定、隣には【任務】、【地図】、【コミュニティ】などの様々なボタンがあった。
白木芙は理解した。
彼女はプレイヤーパネルを持つNPCになったのだ。最大の違いは、彼女のパネルには普通のプレイヤーにはないNPC専用の【テンプレート】があることだ。
テンプレートは良いものだ。上位テンプレートのボーナスがあれば、NPCは同じ属性の普通テンプレートの相手を簡単に倒せる。
しかし喜んでばかりもいられない。なぜなら、それ以外に彼女はNPCとしての機能を何も持っていないからだ。
彼女はクエストを発注できず、師匠にもなれない。さらに好感度システムもない。つまり、あの有名な神田大樹（かんだ だいき）師匠のように、これらの機能を使ってプレイヤーから金を稼ぐことができないのだ。
彼女はプレイヤーパネルを持つNPCというより、復活できない特殊なプレイヤーのようだった！
いいぞいいぞ、これがこのゲームの遊び方か。他の人が普通のネットゲームをやっている間、私は一発勝負のハードコア挑戦をしているわけだ。
白木芙は怒りで気を失いそうになった。
彼女はゲームの達人でもなければ、転生者のようにゲームのストーリーを知っているわけでもなく、キャラクターのテンプレートも普通だった。
彼女に一発勝負の挑戦をさせる？
生きてはいるが、実質的に死んでいるも同然の人もいるということだ。
「もうやめた。このゲームは全然面白くない。私を外に出して！」
返答はなかった。
白木芙は力強く額をこすった。
こんな時こそ、慌ててはいけない。
彼女は安藤雅の方を向き、まずは外の状況を聞いてみることにした。
「最近、外で何かあった？」
安藤雅は白木芙をじっと見つめ、自分に質問していると確認してから答えた。「親分、この二日間は大したことはありません。ただ、西からいきなり一群の人々がやって来ました」
「どんな人たち？」
雅は憤慨して言った。「とても変な人たちです。みんな似たような服を着ていて、おしゃべりで、人に会うたびに質問攻めにします。人の家に入って物色し回るし、刀で自分を刺して遊ぶ人さえいます」
白木芙の表情が奇妙になった。
この描写を聞くと、まさにプレイヤーそのものだ。
雅は続けた。「親分、この連中はとても悪質で傲慢です。野火帮の備蓄箱まで開けるなんて。野火帮の頭領は、彼らは単なる流民ではないと言い、厳しく対処すべきだと言っています！」
雅の話を聞いて、白木芙の顔色が青ざめた。。
プレイヤーに厳しく対処したら、プレイヤーは戦車で報復してくるぞ。
「駄目だ、あの連中には絶対に手を出してはいけない。こうしよう、すぐに野火帮の頭領に会いに行って、無謀なことは考えないように言うんだ」
雅は困惑した顔で言った。「親分、なぜ彼らに手を出してはいけないんですか？野火帮の頭領はもう何人かを自ら倒したし、私たちにも一緒に対処するよう呼びかけていますよ。参加すれば報酬がもらえるし、貢献が大きいほど、もらえるお金も多いって！」
そう言いながら、彼女は興奮して拳を振り回した。
戦闘 ＝ 報酬 ＝ 爽快！
白木芙の心臓が止まりそうになった。
もう戦いが始まっていた？
子供よ、これは笑い事じゃない！
もうだめだ。
プレイヤーたちは、道端のミミズですら縦に真っ二つにするような連中だ。野火帮の一員である彼女が早く逃げ出さなければ、灰すら残らないだろう。
問題は、どう逃げるかだ。
彼女がいる居住地は廃棄冷却工場と呼ばれ、祖源星という初心者用の出生星にある。
百年前、祖源星で戦争が勃発した。
戦争はほぼすべてを破壊し、祖源星は『Fallout』シリーズのような状態になった。人々は居住地に住み、居住地の外は恐ろしい汚染と怪物で満ちていた。
白木芙は、自分の実力では居住地を出たらすぐに死んでしまうだろうと思った。
運良く数日生き延びたとしても、後のストーリーで起こる様々な災害には耐えられないだろう。
冷静に、すぐに考えなければ！
「NPCはどうすれば長く生き延びられるか？」
非常に良い質問だ。白木芙の脳は高速で回転した。
実力だけではまだ不十分かもしれない。もし開発者に生贄にされたり、ボスとしてマークされたらどうする？
結局のところ、NPCの運命は開発者の設定次第だ。
数値の化け物より、仕組みの化け物になる方がいい。
彼女はコミュニティの投稿を思い出した。内部テストでは、あるNPCが登場してすぐに死んだが、プレイヤーの間での人気が予想外に高かったため、ゲームは批判を受けてそのNPCの死亡エンディングを変更せざるを得なかったという。
実際、彼女が以前遊んでいたゲームでもよくあることだった。
長期運営のゲームでは、キャラクターの人気が高まると、簡単には死なせてもらえなくなる。仮に死んだとしても、高確率で復活し、端役ですら急遽大量のストーリーが追加されて重要なキャラクターになる。
おお！悟った！
白木芙の思考は一気に開かれた。
もし彼女が無名の端役からプレイヤーのお気に入りキャラになれば、内部テストのあのNPCのように強化されるのではないだろうか？
断言はできないが、試してみる価値は大いにある。
救いの道は、まさにその中にあるかもしれない！
プレイヤーに愛されるキャラになる方法を、彼女ほど理解しているNPCはいない。
なぜなら彼女自身が元プレイヤーであり、コミュニティに潜入して盗み見することもできるからだ。プレイヤーが何を好むかを知り、自分をそのように変えられる。要は、聞き分けの良さがポイントなのだ。
そう考えて、白木芙は安堵のため息をついた。
子供たちよ、私の突撃が始まるぞ！
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