章節 2: 井上彰人との初対面
編輯: Pactera-novel
ホテルの入り口近くの陰に、もう二人の男が高級車に寄りかかっていた。めったに出会わないほどかっこいい男だ！
彼らも真奈の方の状況を見ていたが、手助けに行く様子は微塵もなかった。
一人のベージュのコートを着た男が溜め息をついた。「ちっ、こんなに綺麗な女が！もったいないねぇ！」
心配そうな口調だったが、その不良じみた態度は、むしろ見て楽しみたいというようにも見えた。
「あのさ、あの女……あれ？まさかお前、彼女に目をつけたのか？」ベージュのコートの男は隣の男に意見を聞こうとしたが、横の男が真奈から目を離さず見つめていることに気づいた。
白石輝（しらいし あきら）は心の中で驚いた。まさか春が来たのか？思わず冗談めかして言った。「井上家の御曹司が、いつからこんな目で女を見るようになったんだ？てっきりお前、本当に女に興味ないんだと思ってたのに！」
井上家の御曹司、井上彰人（いのうえ あきと）は家では次男だが、井上家の真の後継者だ。月山市の一番の名家として、井上家が第二だと言えば、第一を名乗る者はいない。
名家の井上家と並んで有名なのは、その御曹司が「女性に興味がない」という噂だ。
二十二歳の彰人は今まで、美女との噂話は一つもなかった。
「黙れ」彰人は輝に視線も与えず、黒い立ち襟のコートで顔の半分が隠れ、さらに冷たい印象を与えていた。
「わかった、わかった、黙るよ。でもさ、本当に手出ししないの？あの美女、路地に入ったぞ。もっと危険だ！」
彰人はまだ黙っている。
真奈はわざとより人気のない路地へと歩いていった。
チンピラ共はさらに興奮した。なんてこった、棚から牡丹餅だぜ、美女が降ってきやがった！これこそ好機満載だ！
彼らは足早に歩み、真奈を取り囲んだ。「お嬢さん、一人で夜道を歩くのは危険だぜ。俺たち、部屋取ってるんだぜ？一緒に来ないか？」と茶化した。
「寂しいなら、俺たちと遊ぶのもいいぜ！」一人がニヤニヤと笑い、よだれが垂れそうになっていた。
「寒いんじゃないか？俺のところは暖かいぜ、おいでよ、抱きついて暖まってけよ」と言いながら太い手が彼女に伸びてきた。
「このクズ共が！」真奈は内心思いながら、体を素早くひらめかせ、その下品な手を避けた。
同時に、彼女は自分の体力が以前の十分の一にも満たないことに気づき、この三人の男を相手にするには油断ならないと、最適な攻撃のタイミングを心の中で計算していた。
「こっちが好意で声かけてんのに、罰が当たるぞ、俺を怒らせたら、後でひどい目に遭わせてやる！」
「このあま、こっちが相手してやってるのに生意気な、俺たちの手に落ちてまだ清純ぶるつもりか！」
三人のチンピラは真奈の絶世の美しさ、白い肌、曲線的なスタイルを見て、すでに思考が下半身に支配され、冗談を言う余裕もなくなっていた。
三人が一斉に飛びかかってきたとき、真奈はタイミングを見計らって、素早く一人の首を掴むと、そのまま投げ飛ばし、もう一人に激突させた。瞬時に「ドン」という音とともに二人が脇に吹っ飛んでいった。
もう一人を蹴り飛ばそうとしたが、今日はタイトスカートを履いているのを忘れていて、足が上がらなかった。
失策だった！横によけるしかなく、「ビリッ」という音とともにが引き裂かれ、裂け目は太ももまで達した。
たちまち、細く長い白く美しい脚が、薄暗い光の中にくっきりと浮かび上がった。
車の側で見ていた二人の男は、それでも動かなかった。
輝は認めざるを得ななかった、こんな真奈は本当に色気たっぷりだと。
彰人の頭には、それ以上の賛美の言葉は浮かばず、ただ思った。この脚は、本当に白い！
三人のチンピラは真奈が裂いたスカートを見て、思わず唾を飲み込んだ。真奈はそのチャンスを掴み、体を回転させ、残りの一人の男を蹴り飛ばし、ちょうど地面に倒れた二人の上に叩きつけた。
真奈は三人に近づき、「ドン、ドン、ドン」と彼らの股間を強く踏みつけた。
たちまち、豚の悲鳴のような声が静かな夜に響き渡った。
真奈は落ち着いて、路地から出てきて、視線をまっすぐ彰人と輝に向けた。「見物は終わった？」
この二人の見た目が良い男は最初からここにいたのに、手を貸してくれると思ったら、見物していただけだった。
輝は無意識に姿勢を正した。まだ衝撃から覚めやらないのに、心の中では喜んだ。「この女、恐ろしく強いな、俺の好みだ！あの三人の男はもうセックス生活終わりだろうな。」
「ハハ、俺たちも助けようと思ったんだが、まさかお嬢さんがあっという間に片付けちゃうとは思わなかったよ。すごいね！どこかで会ったことないか？」輝はすぐに彼特有のユーモラスな態度に切り替え、誠実な笑顔で、まるで自分の言葉が真実であるかのように振る舞った。
彰人はまだ黙ったままだが、その目には探るような光が宿っていた。何かを思い出そうとしているか、確認しようとしているようだ。
真奈が先ほど見せた武術は、彼には理解できない。現代の彼が知っている跆拳道や総合格闘技、その他の武術ではなく、見知らぬ流派のものだ。
そして彼女の顔、彼は見たことがある！
この女は本当に謎だらけだ！
真奈が二人を無視して立ち去ろうとしているとき、彰人は薄手のコートを差し出した。「服が破れてる」
真奈は自分の破れたスカートを見て、体に冷たい空気が入り込むのを感じ、手を伸ばしてコートを受け取った。
「ありがとう、連絡先を教えて。後でコートを返すので」
「ポケットに名刺が入ってる、そこの番号に直接連絡して」
輝はこの時すでに呆然としていた。今日はどうしたんだ？彰人が女を口説いている！
おむつを卒業してから今まで、こんなことは初めて見た。驚かないわけがない！
だから、真奈がいつ去ったのか、輝には印象に残っていなかった。
しかし彰人は真奈の姿が見えなくなるまで、深い思索の視線を引き戻さなかった。
「なあ、お前、本当にあの子に気があるのか？」
「俺の書斎に飾ってある絵を覚えてるか？」
「あれはお前の宝物だろ？少し印象に残ってるけど、なんで急にそれを？」
「あの絵の女と、今の女は、まるで瓜二つなんだ」
輝は驚いて言った。「そうだな、だから先ほどからあの女に見覚えがあると思ったんだ。美女を見過ぎて、みんな同じに見えるのかと思ってたよ！」
「それで、どうする？彼女が誰か調べる？」
「いや、また会えるさ」
そう言いながら、二人は高級車に乗り込み、走り去っていった。
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