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0.76% 運命の妊娠:社長、優しくして / Chapter 2: 息絶えた夜の記憶

章節 2: 息絶えた夜の記憶

編輯: Pactera-novel

美月は目を細めたが、視界はぼやけ、迫ってくる影の正体を見分けることはできなかった。

次の瞬間、その影は容赦なく彼女へと飛びかかる。

本能では拒絶しようとしたはずだった。大声で助けを求めるつもりだった。

しかし──抱き寄せられた瞬間、熱に浮かされた身体が求めていたものを悟る。欲しいのは拒絶ではなく、抱擁だった。

抑えきれない衝動に任せ、彼女は男の肩に手を回し、乱暴に唇を重ねる。

視界は依然として霞み、相手の顔立ちは判然としない。

だが、もはや理性は働かなかった。

──身体が爆ぜる。

(苦しい……)

気がつかないうちに長い時間が過ぎていた。

浴室には熱気が漂っている。

痛みに襲われた刹那、美月は一瞬だけ正気を取り戻す。

だが目に映ったのは、男の胸に刻まれた、三日月のような痕跡だけ。

次の瞬間には、熱の奔流に呑み込まれ、すべては白い靄に消えていった。

夢のように──彼女は落ちていった。

目を覚ますと、美月は裸のままベッドに横たわっていた。肌に残る痕跡が、昨夜の出来事を鮮烈に思い出させる。

「……っ!」

彼女は慌てて身体を起こし、シーツを掻き寄せて身を隠す。

部屋を見回すと、暗がりにいたはずの海斗が、蒼白な顔で床に倒れていた。

昨夜の出来事が断片的に蘇る。

甘ったるい香り、浴室の冷水、そして──押し寄せる熱に任せて受け入れてしまった誰か。

「まさか……彼が、伊藤海斗?」

この部屋には二人しかいなかった。そう考えるしかなかった。

震えが止まらない。

父と継母に売られ、ここに送り込まれた。何もせず逃げられると思っていたのに──初日にして薬を盛られ、余命わずかな男と結ばれてしまうなんて。

「……いや……」

顔から血の気が引き、涙が大粒となって零れ落ちた。

その時。

ガチャリ。

ドアが勢いよく開き、メイド服の女たちが数人入ってきた。

「海斗様、もう翌日になりましたので……お掃除に参りました」

恭しく告げる声。

海斗は返事しなかった。

美月は反射的に顔を上げ、必死に涙を抑え、衣服を探しながら、ドアが開いているうちに離れようとした。

しかしベッドにも、床にも何もない。

仕方なくシーツを纏って立ち上がった。

一方でメイドたちは、床に倒れる海斗に気づき、慌てて駆け寄る。

「海斗様!どうなさったのですか?」

そのうちの一人が彼の鼻先に手を当て、青ざめた顔で飛び退いた。

「……息が……ない……!海斗様が……呼吸してない!」

絶叫が、部屋中に響き渡った。


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