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章節 2: 第2章

彼はその協議書を凝視し、そして顔を上げて私を見た。彼の視線は複雑で、私には読み取れなかった。

「こんなに簡単なのか?」彼は尋ねた。その声には、かすかに不機嫌さが滲んでいた。

「他にどうしろっていうの?」私は反問した。「それとも膝をついて、あなたの寛大さに感謝しろっていうわけ?」

彼は私の言葉に詰まり、表情はさらに険しくなった。

「神崎美咲」彼は何かを思い出したかのように、冷酷な笑みを浮かべた。「君は忘れているようだな。俺たちの間には、まだ片付けるべきものがある」

彼は振り向くと、書斎から箱を抱えて出てきた。

「ドン」という音と共に、私の足元に投げつけた。

中には私と彼に関するものがすべて入っていた。

私たちの唯一の写真。私が彼に何度もお願いしてようやく撮ったもの。今や、フレームのガラスは割れていた。

私が彼のために編んだマフラー。彼は一度も身に着けたことがなかった。

彼の誕生日のために私が選んだカフスボタン。まだ美しい箱の中に納まったままだった。

そして…あの鮮やかな赤色の結婚証明書。

「これらのものは、目障りだ」彼はさらりと言った。まるでゴミを処分するかのように。

そして、私の目の前で、彼は暖炉のそばの火箸を取り、私が宝物のように大切にしていたそれらを、一つずつ、燃え盛る暖炉へと投げ込んだ。

写真は炎の中で丸まり、黒くなっていく。かつての笑顔は歪み、恐ろしいものに変わっていった。

マフラーはすぐに灰になった。

あの上品なカフスボタンは、炎の中で輝きを失った。

最後は結婚証明書だった。

彼は火箸で赤い冊子をつまみ、火にかざし、そして手を離した。

「これはそもそも本物じゃなかった」彼は炎を見つめながら、冷たく言った。「これで、正式に終わりだ」

炎は彼の冷たい横顔を照らし、そして私の死んだような目も照らしていた。

私は自分の二年間の青春と愛が詰まったそれらのものが、炎の中で灰になるのを見ていた。

涙は、もう出なかった。

心も、完全に死んでいた。

この瞬間、私はようやく理解した。

彼は物を整理しているのではなかった。

彼は私が存在したすべての痕跡を消し去っていたのだ。

彼の目には、神崎美咲という私も、この二年間の結婚生活も、いつでも消去できるエラープログラムでしかなかった。

私が温もりだと思っていたものは、高級道具に対する定期メンテナンスに過ぎなかった。

私が愛だと思っていたものは、私一人の独り芝居に過ぎなかった。

私は静かに見ていた、最後の火の粉が消えるまで。

藤堂彰人は私が崩壊すると思っていた。ヒステリックになると。

でも違った。

私はただ振り向いて、静かに彼に言った。

「いいわ。分かったから」

この予想外の冷静さに、彰人のその氷山のような顔に、初めてひび割れが生じた。

彼はきっと理解できなかっただろう。なぜ一瞬前まで言い争っていた私が、この瞬間にこれほど恐ろしいほど冷静でいられるのかを。

私は彼をもう一度見ることもなく、スーツケースを引きずって、私を二年間監禁していたこの豪華な牢獄を出た。

玄関を出た瞬間、私は振り返った。

別荘は明かりで輝いていた、私が初めて来たときと同じように。

ただ、もうその中に私の居場所はなかった。

ふん。

いいじゃない。

今日から、神崎美咲は死んだ。

生き残ったのは、復讐のために生まれた、全く新しい怪物だ。


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