セレン・ヴァリネアは揺るぎない決意をもって前へ進んだ。彼女の歩みは重くも確かなもので、馬車の行く手を遮った瞬間、広場は沈黙に包まれた。彼女の傍らの武装兵たちは、命令を受けるまでもなく中央の馬車を取り囲んだ。
その瞳は曇っていながらも揺らぐことはなく、胸を張り、響き渡る声が鋭く広場を貫いた。
「アルヴァレン・デイロス! 出て来い!」
中央の豪華な馬車の扉がゆっくりと軋みながら開いた。灰色の髪をした上品な男が姿を現した――老いてなお自信に満ち、嘲るように微笑んで。すべての視線が彼に集まった。
「おや…セレン・ヴァリネア。」彼は嘲弄を込めて言った。「そろそろ訪ねてくる頃だと思っていたよ。」
セレンの声が再び広場を揺るがす。
「腐敗。幼子との婚姻の企て。脱税。暗殺者との共謀。奴隷制度…他にも口にするのもはばかられる罪の数々。あなたを逮捕する。」
アルヴァレンは含み笑いを漏らした。「本当に? 一枚の羊皮紙だけで? 他に何がある?」
セレンは一歩前に出た。その声はもはや脅しではなく――支配していた。
「すでに兄アーサー王のもとへ書簡は届いている。軍はすでに進軍中。自ら従うか…引きずられるか。選ぶ権利はない。」
アルヴァレンの笑みが一瞬揺らいだ。彼は鞄から青銅の角笛を取り出し、力いっぱい吹き鳴らした。
瞬時に静寂が打ち砕かれた。
屋根や路地、通りすがりの荷車から、黒衣の暗殺者たちが一斉に飛び出した。
アルヴァレンは馬車の扉を叩き閉め、最後の命令を叫んだ。
「皆殺しだ! 目撃者は残すな!」
セレンの瞳が一瞬だけ遠のいた――だがすぐに戻る。彼女は白兜の将軍に向かって叫んだ。
「防御陣! 三重槍壁の陣形を取れ!」
兵士たちは訓練された精度で動いた。最前列が膝をつき、盾を石畳に突き立てた。第二列は槍を前方へ構えた。
戦闘が勃発する中、ヌジャは必死に荷を探った。役立つものはないか――その時、誰かの手が彼の腕を掴んだ。
エリアンが現れた。小さな弓と数本の矢を手にして。
「兄ちゃん、これを――大したものじゃないけど、使えるだろ。」
ヌジャは驚いて顔を上げた。「お前は…誰だ? どこから来た?」
「今は説明してる暇ない!」エリアンは急いで言った。「裏の通路から来た。誰にも見られてない。後で話す。」
ヌジャは目を細めた。「お前は――いや、今は構ってられない。地下へ行け。隠れろ。絶対に見つかるな。」
「わかった!」
エリアンは現れた時と同じ速さで姿を消した。ヌジャは弓を強く握り、息を整え、混乱の渦中へ再び向き直った。
第三列の兵士たちは後方に下がり、弓兵支援の列を形成した。敵の第一波が襲い掛かる前に、壁は完成していた。
三人の暗殺者が盾の壁にぶつかった。槍が盾の隙間から突き出され、胸を貫いた。
さらに数人が壁を飛び越えようとしたが、兵士たちは槍を上に突き上げ、宙を舞った体を串刺しにした。
側面から回り込もうとした者たちは、背後からの第二隊の槍兵に挟撃され、討たれた。
ヌジャは荷から瓶を取り出し、即席の導火線に火をつけた――火炎瓶だ。敵の通路に向かって投げつけた。
瓶は衝撃とともに爆ぜ、三つの通りに炎が走り、暗殺者たちを炎の回廊に閉じ込めた。
煙にむせ、敵は互いの姿を見失った。混乱の中、仲間を誤って刺す者も現れた。
三人の暗殺者が槍壁を突破した。ひとりは後列の兵に即座に斃され、もうひとりは将軍の刃に両断された。
最後のひとりはセレンに迫った。彼女は短剣を投げ放ち、敵の喉を正確に貫いた。
左翼で突破口が生じた。セレンは駆け寄り、兵士の盾を両手で支えながら槍を突き出させた。
炎を逃れようと石道に再集結しようとした暗殺者たちは、背後からの援軍に阻まれ、包囲の弧の中に閉じ込められた。
ひとりが後方の隙間から抜け出そうとしたが、若い兵士が待ち構えていた。片膝をつき、槍を突き上げる。暗殺者は地に叩きつけられ、動かなくなった。
霧の中から最後の影がセレンに忍び寄った。刃が振り下ろされる寸前、将軍が身を投げ出し、背に短剣を受けた。その叫びと共に槍を振るい、襲撃者を斬り伏せた。
やがて、通りは静まり返った。
聞こえるのは炎の爆ぜる音だけ。屍はまだ温かかった。
戦いは終わった。だがアルヴァレンは逃げた。
セレンは血に濡れた槍の柄を握り、遠くを見据えて立ち尽くした。
「言ったでしょう…突破は許さないと。」
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敵の司令官は肩に突き刺さった矢を引き抜き、苦痛に顔を歪めながらも急いで傷を布で縛った。血が布を濡らし広がっていったが、その声は力強く響いた。
「退却せよ! 全員、退け!」
敵の陣形は恐慌に陥り、瞬く間に崩れ去った。街路は一瞬の静寂に包まれた。
ヌジャは階段を駆け下り、周囲の混乱を見渡した。
「エリアン! どこだ?!」
茂みの中からかすかな囁きが上がり、エリアンが青ざめた顔で息を切らしながら頭を出した。
「ここだよ、兄さん!」
ヌジャは駆け寄り、切迫した声を絞り出した。
「ライラはどこだ?!」
息を荒げながら、エリアンは素早く答えた。
「逃げようとしたんだ…でも捕まった。部屋に閉じ込められてる!」
ヌジャは頭を垂れ、拳を固く握った。
「わかった。ここにいろ。動くな。誰にも見つかるな。」
彼は再び街路を横切り、セレン・ヴァリネアのもとへ走った。
ヌジャの姿を見た瞬間、セレンの顔が輝いた――指揮官が兵士を迎えるのではなく、大切な者の無事を確かめた少女のように。彼女の表情は心からの安堵に満ち、笑みを浮かべて手を振った。
「そこにいたのね! 来て! よくやったわ!」
傍らの将軍は力強くうなずいた。
「お前がいなければ犠牲はもっと増えていた。王子の言葉は間違いなかったな。」
息を切らしながら、ヌジャは言った。
「妹が…家に閉じ込められている。急がなきゃ。」
セレンの表情が変わった。喜びは消え、鋭い集中へと移った。彼女が言葉を発する前に、将軍が低く厳しい声で告げた。
「この騒ぎは大きすぎた。奴らの耳にも届いているはずだ。姫様、我らは六十名で先行する。残りはあなたを守れ。子供は四人の兵で護送する。ヌジャ、お前は我らと来い。」
セレンは一瞬だけ迷い――すぐに鋭く頷いた。
将軍は振り返り、命令を轟かせた。
「A隊、T隊、我に続け! 目標:ヴァンテス邸! 残りは姫を守れ!」
ヌジャが一歩前に出た。
「抜け道はまだある。昔、そこから抜け出していたんだ。」
隊は素早く動き、焼け焦げた路地や倒れた荷車を縫って進み、屋敷の裏へ到達した。煙がまだ建物にまとわりついていた。ヌジャは前へ走り、石壁の一角に手を当てた。仕掛けがカチリと鳴り、石が奥へとずれた。
「ここだ。」
将軍が合図する。二人の兵士が刃を抜き、先に入った。残りも音を立てず続く。
中は暗く、湿っていた。空気は重く淀み、一歩ごとに雷鳴のように反響した。ヌジャが囁く。
「右の二つ目の石。その奥に階段がある。上へ続いてる。」
一人ずつ昇っていく。上の家は静かだったが、中で何かが動いていた。
ヌジャが進むと、廊下の奥から足音が響いた。見張りだ。
彼は戸棚に身を隠した。将軍が二本の指を上げる――合図。
兵士が矢を放つ。音はなく、見張りは即座に崩れ落ちた。
彼らはライラの扉に辿り着いた。まだ施錠されていた。木の向こうから震える声がした。
「お兄ちゃん…?」
ヌジャは身を寄せる。
「ライラ! 俺だ。扉を開けろ!」
将軍は迷わず命じた。
「破れ。」
二度の打撃。
扉は内側へと弾け飛んだ。そこには膝をついたライラがいた。涙で目を大きく見開き、恐怖に凍り付いていた。ヌジャは駆け寄り、彼女を抱きしめた。
「俺だ。迎えに来た。」
将軍は振り返らずに言った。
「動くぞ。静かに、速く。」
だが屋敷の奥から複数の兵が雪崩れ込んできた。短く激しい戦闘が起き、一人の兵が負傷したが、一行は押し返し、再び抜け道を通って脱出した。
外に出ると、夜明けが訪れていた。カルヴェンホルドの空は橙と金の光で染まっていた。
遠くから角笛の音が鳴り響いた。
アーサーの軍が来ていた。
セレン・ヴァリネアはそれを遠くに認め、足を止めた。瞳を見開き、息を呑む。
そしてゆっくりと――美しく微笑んだ。
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セレンがライラの囚われていた屋敷に近づいたその時、前を行く兵の一人が突然悲鳴を上げて倒れた。足を滑らせ――隠された地下道に落ちたのだ。そこにはジレルダが潜んでいた。
ジレルダは闇から影のように飛び出した。倒れた兵を即座に斬りつけ、さらに数歩のうちに次の二人を正確無比な一撃で葬った。その顔には仮面などなく――ただ死そのものが宿っていた。
短剣を手に、彼女はセレン・ヴァリネアに向かって突進した。霧の中の狼のように、暗殺者たちも周囲を取り囲む。セレンは凍り付いた。叫ぶことも、逃げることもできない。刃は胸に迫っていた。
だが――
「もう二度と繰り返させない!」ヌジャの声が静寂を引き裂き、全力で突進した。背後からジレルダに体当たりし、彼女を脇へ弾き飛ばした。素早く剣を蹴り飛ばし、全身で押さえ込み、動きを封じようとした。
その時、周囲の伏兵を片付けた将軍と部隊が駆けつけた。将軍はすぐにセレンを引き寄せ、A隊の盾壁の背後へ押しやった。
しかし――カサールがヌジャの背後から現れ、槍を深々と突き立てた。
「裏切りの代償は……死だ。」冷たく言い放つ。
ヌジャは膝をつき、霞む視界の中でセレンを探した。唇から血が溢れ、呼吸は浅くなる。
将軍が咆哮した。
「A隊! 王子と子供たちを守れ! 残りは――俺と来い! 奴らを討て!」
兵たちは激烈な突撃を開始した。カサールは無慈悲に三人を斬り伏せ、ジレルダの前に道を開く。彼女は最後の一撃をセレンへ放とうとした。
だが盾兵たちが彼女を囲み、叫んだ。
「三……二……一!」
掛け声ごとに間合いを詰める。そして「一」で最後の号令。
「今だ!」
四方八方から槍が盾の隙間を貫き、ジレルダの体を突き刺した。彼女は喉を詰まらせる叫びをあげ、膝をつき、そのまま崩れ落ちた。
カサールはなおも突き進み、さらに三人を斬り伏せた。倒れたジレルダに歩み寄ろうとした瞬間――
将軍がその前に立ちはだかった。
「カサール、お前の命は俺がもらう。」
カサールが槍を振り下ろす。将軍は咄嗟に身をかわし、死の弧を避けた。
将軍の反撃が閃き、短剣がカサールの腕を裂く。
カサールは呻きながらも止まらず、肩で将軍を弾き飛ばし、二人は石畳に叩きつけられた。
体勢を立て直した将軍が低く薙ぎ払う。カサールは飛び退く。槍を回そうとしたその瞬間、将軍の蹴りが膝を打ち、体勢を崩させた。
一瞬で将軍は間合いに入り込み、カサールを地に叩き伏せた。
そして最後の一突き――槍はカサールの胸を深々と貫いた。音もなく、終焉は訪れた。
戦場は静まり返った。将軍は崩れ落ちたカサールを一瞥し、セレンとヌジャへと振り返った。
セレンは血に濡れた石畳を踏みしめ、ヌジャのもとへ駆け寄った。彼は地にねじれた体で横たわり、浅い呼吸を苦しげに繰り返していた。セレンは膝をつき、その頭を膝に抱き上げた。震える手で彼の顔の血を拭った。
セレン(囁き、声を震わせて):「いや…いやよ、行かないで…ここにいるわ。目を閉じないで、お願い…」
ヌジャは激しく咳き込み、喉を詰まらせる音を漏らした。口端から暗く濃い血が溢れた。何度か言葉を試みたが、声にならなかった。
ヌジャ(血に咽び、かすかな笑みを浮かべて):「君の声は…まだ…俺の知る中で…一番の音だ…」
震える冷たい手がセレンの頬に伸び、指先がかすかに触れた。彼女はその手を押し当て、涙を流しながら頬に添え続けた。
ヌジャ(途切れ途切れに、低く):「もっと…君と…時間が…欲しかった…」
セレン(涙に濡れながら):「十分よ…だって、私たちだったから。」
ヌジャはかすかな笑いを漏らしたが、それは激しい咳に変わり、血が顎を濡らした。
最後の瞬間、彼の視線が鋭さを取り戻した。瞳にはわずかな悪戯心と反抗の光。歯を食いしばり、魂の残りを声に込めた。
ヌジャ(血を滴らせながら):「あの狂人どもは…もう君のものだ、姫様。信じてる。」
そう言うと、体は力を失い、最後の息が抜けていった。
セレンは叫ばなかった。動かなかった。ただ彼を抱きしめ、その涙だけが燃え盛る沈黙に響いた。だがその心の奥深くに、最後の約束を抱いていた――血と愛に刻まれた、永遠の誓いを。