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高橋隆の姿が人混みの後方から現れ、警備隊員たちは自然と彼のために道を開けた。
彼はきちんとアイロンのかかった新しい服を着て、ブーツまでピカピカに磨かれていた。周囲の血まみれの人々との鮮明な対比を成していた。
私は壁の隅に身を縮め、無意識に服の裾を強く握りしめ、力を入れすぎて指の関節が白くなっていた。
お腹の子供が危険を感じたのか、軽く私を蹴った。
隆は私の前にしゃがみ込み、手を伸ばして乱れた前髪をかき上げた。
「夕子」
彼はため息をつくように私のあだ名を呼び、指の腹で私の腫れた頬を撫でた。
「痛いか?」
温かい息が耳たぶをかすめ、しかし口から出る言葉は毒を含んでいた。
「お前は俺の妻だが、みんなを死なせた。もう許せない」
彼は自ら私に罪を宣告しに来たのだ。ゾンビを引き寄せて全員を死なせた妻という罪名を着せられれば、私は堂々と処刑されるだろう。
そうすれば、彼が全ての男たちを連れ出し、シェルターの防衛力を空にした責任を問う者はいなくなる。
隆のブーツが私の腹部に強く蹴りを入れた時、私は命の砕ける音を聞いた。
私は地面に身を丸め、爪をコンクリートの隙間に食い込ませた。
温かい血が足の間から溢れ出し、灰色の地面に目を刺すような小川を描いていた。
震える手で下腹部に触れると、そこにあったはずのわずかな膨らみは、今や恐ろしいほど平らになっていた。
五ヶ月の命、十七回の胎動、超音波写真を見ながら独り言を言っていた夜々。それら全てがこの一蹴りの下で、血の水と化した。
鈴木柔はさらに側で油を注ぐように言った。
「佐藤さん、あなたやりすぎです。私は隆兄とちょっと接触が多かっただけで、隆兄の心の中で一番大切なのはずっとあなたなのに」
「こんな残酷な方法で冗談を言うべきじゃないわ!」
彼女はまばたきし、絶妙なタイミングで一滴の涙を流した。
隆が手を上げて警備隊に私の処理を指示しようとした時。
「止めて!」
聞き覚えのある声が響き、皆が振り向いた。
義理の妹の高橋雨子が大勢の子供たちを連れて歩いてきた。