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甘は嬉しそうに手を離した。
そのとき、佐藤浩二の娘も入ってきた。彼女は美しく鮮やかなドレスを着ていた。
その華やかな姿は、汚れて破れた服を着た甘とは不釣り合いに見えた。
娘は好奇心を持って甘を見つめた。
「パパ、この小さな物乞いは誰?すごく汚いね?」
甘は彼女の言葉に震えながら、思わず反論した。
「私は鈴木甘よ。物乞いなんかじゃないわ!」
そう言うと、涙でいっぱいの目で鈴木瑛を見つめ、母親が自分の名誉を守ってくれることを期待した。
しかし瑛は冷たい目で彼女を睨みつけただけだった。
「いつも汚れてるから、人にゴミ箱から這い出てきたって言われても仕方ないわね」
そう言って、彼女は袖を払って出て行った。
甘はその場に立ち尽くし、小さな手で無意識に自分の指をいじっていた。
悔しさの涙がぽろぽろと落ちた。
かつて「甘は世界で一番素晴らしい子よ」と抱きしめてくれた母親が、なぜ自分をこんなに嫌うようになったのか理解できなかった。
彼女は考えた。自分は本当に母が言うように駄目な子なのだろうか、だから母は自分を捨てたのだろうか?
娘の境遇を見て、私の心は刃物で切られるように痛んだ。胸を強く押さえ、息ができないほどの痛みを感じた。
泣きたかったが、魂には涙がない。
浩二は笑みを浮かべて甘を見つめた。
「お母さんがなぜお前を好きじゃないか知ってるか?」
甘は呆然と顔を上げた。
「お前のお父さんを愛してないからだよ。女は愛する男との間に生まれた子供しか可愛がらないんだ」
甘は一瞬固まった後、激しく浩二を押した。
「嘘つき!ママがパパを愛してないなんてことないわ。ママはパパが一番好きだって言ってたもの!」
「私は物乞いじゃない。私はママの大切な宝物よ!」
浩二の表情が険しくなり、手を上げようとした時、助手が慌てて駆け寄ってきた。
「佐藤さん、大変です!山本さんの隠し子報道が出ました!」
さっきのパパラッチが隠れて、瑛と甘のやり取りを全て撮影して公開したのだ。今やニュースは爆発的に広がっていた。
浩二は目を回し、すぐに驚いたふりをした。
「なんてこと!瑛の隠し子のニュースがどうして漏れたんだ?」
浩二は慌てた様子で周囲を見回し、最後に甘を見つめ、信じられないという口調で言った。
「甘、お前がわざとパパラッチを楽屋に連れてきたのか?」