翌日、私は何かに取り憑かれたかのように、そこへ行った。
城西の旧市街は、私が育った場所だ。その後、家族で引っ越してからは、街の忘れられた一角となっていた。
篠原悠真のチームは小さく、五、六人しかいなかったが、皆プロフェッショナルで情熱に満ちていた。
私はすぐに没頭した。
毎日機材を担いで町を歩き回り、まもなく移転する古くからの住民たちにインタビューした。
彼らの過去の物語を聞き、未来への不安を記録する。
疲れたが、充実していた。
まるで大学時代の、映画に情熱を燃やしていた自分を取り戻したようだった。
悠真は素晴らしいパートナーだった。彼は専門的で鋭く、常に最も心動かされる瞬間を捉えることができた。
彼が私を見る目には、いつも励ましと賞賛が込められていた。
「美桜、君はこの仕事に向いている」と彼は何度も私に言った。
彼の前では、加藤家の令嬢である必要も、斎藤彰人の付属品である必要もなかった。
ただの加藤美桜でいられた。
撮影は順調に進み、私はもう彰人とのあの嫌なことから完全に前に進めると思い始めていた。
その日まではー。撮影クルーと一緒にカメラを担いで、祖母が住んでいる路地の入り口まで来た時だった。
そこで、私は巨大な赤い立ち退き通知を目にした。
祖母の古い家の、風化した木の扉に貼られていた。
頭の中が「ボン」と鳴り、真っ白になった。
私は駆け寄った。
立ち退き通知には、はっきりと黒字で書かれていた。
プロジェクト名:城西旧市街地再開発事業
デベロッパー:清彰キャピタル
「清彰キャピタル」という文字を見つめ、全身の血が冷たくなるのを感じた。
また彼らだ。
斎藤彰人と林清雅。
いつまでも付きまとってくる。
私は狂ったように古い家に駆け込んだ。
祖母は中庭に座り、老眼鏡をかけ、震える手で古い品々を整理していた。
私を見て一瞬驚き、それから無理に笑顔を作った。「美桜、どうしてきたの?外は日差しが強いわよ」
そのしわだらけの顔と、必死に作った笑顔を見て。
もう涙が止まらず、ぼろぼろと流れ落ちた。
「祖母...」私は彼女の前にひざまずき、何も言葉が出なかった。
祖母はため息をつき、しわだらけの手で優しく私の髪を撫でた。
「馬鹿な子、何を泣いているの。この家も古くなったし、取り壊すべき時なのよ。開発業者の条件は悪くないし、新しいマンションと交換できるのよ」
私はさらに激しく泣いた。
この古い家が祖母の命綱であり、祖父が残した唯一の形見であることを知っていた。
彼女が手放したいはずがない。
「祖母、引っ越したくない!私が彼らに会いに行く!ここを壊させるわけにはいかない!」私は赤い目で言った。
しかし祖母は首を振った。
「美桜、行かないで」彼女は私を見つめ、かつてないほど真剣な表情で言った。「あなたは彼らには勝てないわ。祖母の言うことを聞いて、諦めましょう」
私は固まった。
その瞬間、祖母がすべてを知っていたことに気づいた。
私と彰人の別れも、開発業者が彰人であることも、そして、これらすべてが私を狙ったものだということも。
悠真とチームのメンバーも後に続いて入ってきた。
この光景を見て、みんなは黙り込んだ。
悠真は静かにカメラを回し始め、あの刺すような立ち退き通知に向けた。