船頭は私を一目見て、私の指示がないと離れようとしませんでした。
私はテーブルを叩いて、大声で叫びました。
「お前たちには法も秩序もないのか!」
「真昼間から良家の娘を虐めるとは。」
従姉は私が突然向かい側に怒鳴りつけたのを見て、少し怖がっていました。
私の手を引っ張って、座らせようとしました。
向かいの船の数人が私たちの方を見てきました。
そして、汚い言葉を私たちに投げかけてきました。
「お嬢さん、見たことない顔だね。言葉遣いも南洲の人じゃなさそうだ。」
「俺たちの船に来て、一緒に遊ばないか。」
「はは、兄弟たちでしっかりもてなしてやるよ。」
こんな言葉を聞いて、私は本当に可笑しくなりました。
彼らの冗談には取り合わず、優雅にお辞儀をしました。
「私は鈴木家の者ですが、皆様は私の家をご存知かと。」
向かい側の人々は一瞬凍りついたようになりました。
「まさか、鈴木家には一人娘しかいない。それは俺の近々娶る妻だ。」
その人渣の言葉を聞いて、従姉は目を見開きました。
従姉の目には信じられない様子が浮かんでいました。
すぐに涙で溢れました。
「なるほど、鈴木家の未来の婿殿でしたか。私が分不相応でございました。」
私は従姉が可哀想で、すぐに屋敷に戻るよう命じました。
彼女にこの男がこんなにも品性の欠けた人間だと目の当たりにさせました。
従姉は数日間意気消沈していました。
私は彼女のその様子を見過ごせませんでした。
人を連れて行って、その未来の義兄をひどく殴りつけました。
従姉の生年月日を取り返しました。
この縁談は私の手で破談になりました。
姫君の母上様がこの件を知ると、兄を後始末に寄越しました。
「お前も大したものだな。」
「この侯爵様の目を離れた途端に、面倒を起こすとは。」
私はある人に大きな白眼を向けました。
本当に、どこにでも彼がいるのです。
「お兄様、私は面倒を起こしてなんかいません。従姉を助けただけです。」