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0.77% 悪役の憧れの人になってしまった / Chapter 4: 雨の日も風の日も欠かさなかった

Chapter 4: 雨の日も風の日も欠かさなかった

Editor: Inschain-JA

渡辺水紀は、希望の光を見た気がした。

それからは毎日、同じ道を辿って高橋浩の宮殿へ通い続けた。雨の日も風の日も欠かさなかった。

たとえ浩が返してくるのが、いつも決まって「出て行け」の一言だけだったとしても。

蟻が大木を揺るがすことはできなかった。

けれど、この世に絶対はなかった。

塵も積もれば山となる――少しずつでも、彼の心に自分への好意を積み上げられるかもしれない、と水紀は思った。

少なくとも、この頃には水紀ははっきり言葉を話せるようになっていた。

ちょうどその時――

「お父様が恋しかった……」

水紀の声は、その名のとおり、やわらかく優しい響きがあった。

だが、浩はまた冷ややかに笑い、「そうか」と答えた。

彼が依然として不機嫌そうに見えるのを見て、

水紀は心の中で首をかしげた。彼は一体、何を考えているのだろう。

この気難しい老人――本当に、

自分がどこで怒らせたのか分からなかった。

この間、水紀はほとんど背が伸びなかった。

見た目はまだ小さく、幼い餅のように丸っこかった。

やっとの思いで、再び彼の足元にたどり着いた。

水紀はゆっくりと顔を上げ、いつものように白く丸い両腕を彼に向けて広げた。

「お父様、抱っこ」

その可愛らしく純朴な姿に、細く柔らかな声が重なった。

だが、娘の甘えにも

浩は表情ひとつ変えず、口を開いた。

「抱かぬ。さっさと出て行け」

けれど水紀は、厚かましくも聞こえなかったふりをした。

そして彼の袖の端にそっと手を置いた。

浩は眉をわずかにひそめた。

「お前は毎日、何をしに来る」

そう言いながら彼は彼女の顔を持ち上げ、冷たく見つめた。

「帰れ」――その声は鋭かった。

水紀は本当に怯えたように見え、

振り返りもせずに「タタタ」と駆け出した。

だが、すぐにまた戻ってきて、彼の前に立った。

「えっと……道に迷ってしまった。どう行けばいいのでしょうか」

「これほど何度も僕の宮殿に来ておきながら、まだ迷うのか」

その冷たい顔と言葉には、あからさまな嘲りが込められていた。

しかし水紀は恥ずかしがることもなく、

首を傾げて長い間考えるふりをした。

「ただ、急に思い出したことがあって」

浩は気にも留めず、奏折を読み続けた。

やがて、水紀は哀れっぽく顔を上げた。

「……あの、良い夢を見ました。お父様の夢を」

憧れるような眼差しで彼を見つめた。

浩は顔を上げもせず、「ふん」と気のない返事をした。

「……」

空気に気まずい沈黙が広がった。

水紀は困り果て、

それ以上言葉を続けられなかった。

俯いて小さく肩を落としたとき――

「それで?」

「えっ?」

「聞いている。夢で何を見たのだ」

こうして水紀は、あれこれと作り話を並べ始めた。

彼が外見ほど冷淡ではないことは、

水紀自身にも分かっていた。

その時

その声は細く、やわらかく温かかった。

意外なことに、

浩は彼女を追い出すこともなかった。

話の途中で、水紀は彼が心ここにあらずのように見えた。

彼女は口を止め、

少し躊躇った後で小さく呼びかけた。

「……パパ、聞いているか?」

その一言に、浩はふと顔を上げた。

そして奏上書を机の横へ放り出した。

「今、お前は僕を何と呼んだ?」

「お父……」水紀は不安そうに袖をいじった。

彼の眉が寄せられた。

「違う」

「……パパ」

「これからは、そう呼べ」

「???」


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