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Chapter 9: 第9章

黄ばんで黒ずんだ日記の表紙には、びっしりと名前が書かれていた。

【城戸 洸也】

彼の名前が、ページ全体を埋め尽くしていた。

全身を震わせながら、洸也は次のページをめくった。

この瞬間、まるでパンドラの箱を開けたかのようだった。

何が待ち受けているかを知りながらも、洸也はためらうことなく先に進んだ。

【2014年11月8日】

【今日、洸也が告白してくれた。本当に99通の恋文を集めてきたなんて、すごく嬉しい!でも私は彼を受け入れられない……】

【私は世界でも珍しい病気なの。洸也を巻き込むわけにはいかない。そんな自分勝手なことはできない。彼にはもっと素晴らしい未来があるから。】

【2015年11月19日】

【私が退学して去った後、洸也が飛び降り自殺をして足を一本怪我したって聞いた。痛かったよね?】

【洸也に会いたい、抱きしめたい。でも私はもう3日間も集中治療室で横になっている。】

【2016年12月9日】

【洸也、この冬、小さな犬を拾ったの。全身が暖かい黄色で、コーラって名前をつけようと思う。】

【2023年7月1日】

【洸也、手術がとても痛い!今日はあなたの誕生日。お誕生日おめでとう。】

【2024年11月9日】

【洸也、医者が私の病気は治ったって言ったの。東京へ会いに行くべきかな?】

【2024年11月12日】

【洸也、こっそりあなたを一目見るだけ。もしまだ私のことを覚えていたら、必ず伝えたい。愛してる……丸10年間ずっと。】

【2024年11月13日】

【良い知らせ:洸也はまだ私を覚えていた。悪い知らせ:洸也は私を憎んでいる。】

【2025年10月8日】

【洸也、コーラが死んだ……私の病気が再発した。もうあなたを愛したくない……】

日記はこのページで終わっていた。

洸也の目から涙が落ち、以前の私の涙で濡れた場所と重なった。

黒い文字が、再びにじんだ。

洸也はノートを抱きしめ、ついに大声で泣き出した。

「佐々木 南帆……」

「南帆、帰ってきて……」

何度も私の名前を唱え続け、洸也はまるで取り憑かれたようだった。

力尽きて、もう言葉を発することができなくなっても。

洸也はなお私の名前を呼び続けた。

彼はそのまま城戸家の邸宅の裏庭で三日三晩座り続けた。


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