Chapter 14: 第14章 タスクの提出
小川詩織は汗だくになっていたが、指を少しも止めることはできなかった。
今がまさに重要な時だった。
あと数分すれば、このプログラムを完成させることができるのだ。
「よし、できた！」
終わらせると、詩織はようやく一息ついた。
彼女はすでに、自分の隣に立っている長正の存在に気づいていた。
ただ、お互いに声をかけて邪魔することもなく、彼女も当然、集中力を切らして長正のことを気にすることもなかった。
「何をここに立っているの？今後は私の許可なく、私の部屋に入ってこないで」
長正に対する時、詩織はいつも針のあるハリネズミのようだった。
長正もそれを見抜いていないわけではなかった。
しかし詩織が冷たくすればするほど、彼の心の罪悪感は増すばかりだった。
なぜなら詩織の冷淡さは、彼らが以前どれほど酷いことをしたかを常に思い出させるからだった。
「詩織、さっきはプログラムを修復していたのか？」
長正は南朋から送られてきた返信を見ていた。
まさか南朋が詩織に才能があると褒めるとは思わなかった。
南朋が直々に詩織を指導してくれればいいのだが。
しかし、それが不可能なことは分かっていた。
南朋が最も可愛がっているのは妹の美優だった。
普段から美優のせいで、詩織に対しても十分に嫌悪感を示していた。
今まで美優のせいで詩織を侮辱することはなかったが。
彼に詩織を指導させるなんて、南朋はおろか、おそらく詩織も同意しないだろう。
だが南朋でさえ詩織に才能があると言うなら、この件は真剣に考えなければならない。
良い素質を持つ子を無駄にはできない。
「詩織、コンピューターでそんなに才能があるなら、将来はこの分野で働くつもりなのか？」
詩織はこの言葉を聞いて目を回した。「どう思う？」
「いいわ、何か用があるの？」
長正はため息をついた。「特に何もない。ただ食事に降りてきてほしくて。もう冷めそうだ」
「わかった。先に出て行って」
長正はこの件についてもう少し詩織と話したかった。
詩織に何か考えがあるか聞きたかった。
だが詩織のこの様子では、彼を歓迎していないのは明らかだった。
これ以上居座るのも気が引けた。
居続けても詩織の嫌悪感を買うだけだろう。
多くのことは徐々に進めるしかない。
焦りすぎると逆効果になる。
長正が去った後、詩織はウェブページを開いてタスクを提出した。
予定の三時間より二十分も早く終わった。
詩織は額の汗をぬぐった。このAランクタスクは確かに難しかった。
多くのプログラムの脆弱性に対処するのは少し不快だった。
このような修復作業では、一つのコードがプログラム全体を崩壊させる可能性があった。
だから細心の注意を払わなければならなかった。
長正がまた来て扉をノックするのを防ぐため、詩織はタスクを提出した後、すぐに階下へ降りた。
彼女が提出した後、ハッカーフォーラムが再び騒然となっていることなど知る由もなかった。
ハッカーフォーラムでは毎日多くの人がタスクを受けていた。
しかしAランクタスクを受ける人は非常に少なかった。
Aランクは報酬も経験値も高かったが、失敗すると除名される可能性が高かった。
多くの人はハッカーフォーラムのURLを得るのに苦労し、幾重もの選別を経てようやくアカウントを登録したはずだ。
突然アカウントが削除されれば、それまでの努力が無駄になってしまう。
そのため、大多数の人は慎重にレベルの低いタスクを選んでいた。
だからこそ、Aランクタスクが誰かに引き受けられた時、これほど注目を集めたのだ。
「まさか本当にタスクを提出するとは」
「審査にも時間がかかるだろう。もう少し待ってみよう。もしかしたら審査に通らないかもしれない」
「なぜか上の人は審査に通らないことを望んでいるように感じるけど。嫉妬してるんじゃない？」
「嫉妬なんかしてないよ！その人が男か女かも知らないのに、なぜ嫉妬する？」
「もういい、みんな黙って。しばらく待って審査結果を見よう」
「審査結果が出るまであと5分だ。誰か賭けようか？この人は絶対に審査に通らないと賭ける」
「そんなに断言するなよ。いくら賭ける？」
「全財産の3000元だ！」
ハッカーフォーラムでは多くの人が自発的に賭けを始めていた。
以前も何かあれば賭けをしていたが、遊びの一環だった。
しかし今回は初めてこれほど激しく争っていた。
5分という時間はあっという間だったが、彼らにとっては長く感じられた。
ランキング上のAランクタスクの横には緑色のマークがついていた。
これはこのタスクが承認されたことを意味していた。
すでに清算も始まっていた。
この光景を見た人々は皆、信じられない気持ちだった。
まさか新規アカウントがAランクタスクを完了するとは？
「うわ、これは百年に一人の逸材じゃないか？」
「こんな優れた才能は私の弟子にしないと！もう友達申請した！」
「自分のレベルも見ないで弟子を取ろうとするなんて！」
…………
…………
その時、海外にいる男は口に棒付きキャンディーをくわえたまま、コンピューターの前で呆然とこの光景を見ていた。
「すごいな！」
男もまたサークル内では指折りのハッカーだった。
普段からハッカーフォーラムで非常に活発に活動していた。
「普段活発に活動してるとこんな良いこともあるんだな。この逸材は私のものだ」
男が一行の文字を打ち込もうとした時、ふと別のことを思い出した。
「南朋のやつ、弟子を取りたいと言ってなかったか？」
「この人はぴったりじゃないか」
「彼に恩があるしな」
男は少し残念そうにため息をつき、国内の番号に電話をかけた。
「小川南朋、いい知らせがある！」
「以前弟子を取りたいと言ってなかったか？」
電話の向こうの南朋は少し沈黙した後、言った。「あの時は冗談だよ。弟子を取るつもりはない。余計な時間があるなら、妹とたくさん過ごしたいからね」
男は口角を引きつらせた。「せっかくいいことがあると思って連絡したのに、前から俺を軽く見てたのか？」
南朋は眉を上げた。「どんないいこと？教えてくれよ」
この話題になると、男の声は興奮したものになった。
「聞いてくれ、ハッカーフォーラムで百年に一度、いや千年に一度の逸材を見つけたんだ！」
「その人はハッカーフォーラムに登録したばかりで、すぐにAランクタスクを受け、それを完了させたんだ」
「信じられないだろうが、ハッカーフォーラムは今大騒ぎになっていて、みんなこの逸材を弟子にしようと争ってるんだ」
「こんないいことがあったら、まず小川様に知らせないとと思ってね」
「君は普段ハッカーフォーラムではあまり活発じゃないけど、何と言ってもレベル50の大物だからな」
南朋はこの話を聞いて、しばらく考え込んだ。
こんなに凄い新人がいるのか？
この新人はかなりすごいな！
「その新人のアカウントを送ってくれ」
「おや？小川様、突然興味が湧いたのか？」
「結局この新人を弟子にするつもりなのか？もし考えがないなら、俺が手を出すぞ？」
「君に恩があるから譲ろうと思ってたんだが、こんないい素材なら譲れないな」
男はぶつぶつ言った。
「何を急いでるんだ？まずその新人の情報を送ってくれ。見てみるよ」
「弟子を取るにしても、素性の分からない人は取れないだろう？どんな顔をしているのか、男か女かくらい知っておきたいだろう？」
「小川様はいつから見た目にこだわるようになったんだ？」
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