Chapter 5: 5 かつてないほど素かつてない最高のスタート晴らしいスタート
Editor: Pactera-novel
配信ルームのコメント欄が沸き立つ様子は、白木芙の予想通りだった。
あの格好良い登場演出と、特別に仕込んだ「白髪バフ」でプレイヤーの心を掴めなかったら、もう豆腐に頭をぶつけて死んだほうがマシだ。
とはいえ、具体的にどこまで人気を集められるかは、もう少し経過を見る必要がある。
白木芙はゲーム画面を開いた。
筋肉質の男を倒した報酬である150ポイントの経験値が加わり、ちょうどレベルアップの条件を満たしていた。
【【無職】がLv3に上昇。力+1、体質+1、属性ポイント+1】
白木芙のステータスに少し変化が現れた。
【テンプレート】：普通
【経験】：71
【メイン職業】：無職Lv3（0/1000）
【副職業】：なし
【HP】：60/60
【属性】：力5、敏捷3、体質6、知力3、精神4、インスピレーション3
【スキル】：なし
【天賦】：なし
【属性ポイント】：1
【名声】：1
白木芙は自由属性ポイントを体質に振り、体質7を得た。これでHPは一般の雑魚キャラの倍になり、立派なエリートモンスターと言えるほどになった。
悪い知らせは、「無職」という白紙状態の職業の上限がLv5だということ。これ以上強化するには、新たな職業を習得する必要がある。
良い知らせは、このゲームに職業数の上限はなく、自由に学べることだ。
これは『星団の上』が他のゲームと一線を画す点だ。プレイヤーは経験値を消費して新たなメイン職業スロットを解放し、より多くの職業を学ぶことができる。
ただし、普通は多くの職業を同時に学ぶことは推奨されない。人間には限界があり、聖雄肝帝のような強者でも、多数の職業を同時に育成すると経験値が分散し、メインストリームの進度から大きく遅れ、多くの大型イベントを逃す羽目になる。
初期段階では特定の職業に集中し、上級スキルや天賦を獲得してから、職業の組み合わせを考えるのが得策だ。
自身の今後の育成方針について、白木芙には既に考えがあった。
いわゆるマルチクラスとは、寝ながらでも習得できるようなものではないのだ。
ステータス振りは、体質をメインに、サブで敏捷を重視。勝てない場合は奥の手を使い、撤退を主眼に置く。
メイン職業の選択には最も頭を悩ませた。『星団の上』には現在、四大系統——科技流、体修流、霊能流、精神流——が開放されており、各系統には膨大な数のメイン職業が存在する。
彼女がいる祖源星は「荒廃地」をテーマにした初心者向け惑星で、一部の科技流、体修流、霊能流のメイン職業しか学べない。
現段階では、白木芙は後者2つに傾いていた。
科技系が弱いわけではない。後者2つの方がコストパフォーマンスに優れているからだ。
まずは、前衛職業か自己強化系のサポート職業を習得し、生存率を高めたい。
その後は、人気の高まりと、プレイヤーが運営からどれだけの「強化」を引き出してくれるか次第だ。
ゲーム画面を閉じ、白木芙は星遊社の廃棄冷却工場分区を開いた。
入った瞬間、プレイヤーたちが騒ぎ立てているのが目に入った。
「白髪お姉さん、俺に最終靴舐め制裁をくださあい！」
「足フェチの変態は死ね！」
「盗撮とはどういうことだ？モラルは？下限は？彼女の住所は？」
「もう何分待ってるんだ？ギャロップまだ6にならないのか？」
見ているうちに、リンクが一つ目に入った。
「隣の総合版で女性NPC人気投票スレ立ったぞ！みんな投票に行こう！ここ↑」
「クソが、フィッシングサイトだ。本物のリンクはこちら：***」
白木芙は口元をピクッとさせた。
彼女はリンクをクリックせず、自ら総合版を開いた。
事の経緯はこうだ。数日前、廃棄冷却工場エリアのプレイヤーが白木芙の動画を総合掲示板に投稿し、彼女を『星団の上』最高の美女NPCだと主張した。
これに触発され、多くの動画やスクリーンショットが集まった。
その後、あるプレイヤーがこれらの素材を集め、新たな投票スレを立てた——
『第一回 星団の上 人気女性NPCコンテスト』
スレッドは立ち上がるとすぐに、無数のプレイヤーの注目を集めた。
彼らはその場でネット論戦を繰り広げた。
「可愛さは色気の前では無力だとしか」
「ありえない！俺の嫁、マリーローズは無敵だ！」
「笑わせるな、ティファこそが至高」
「金持ち令嬢の美しさを君たちは知らないんだな」
「なんで宣伝PVのあの巨大メカが候補にないんだ？彼女が女性だって誰が証明できる？」
「俺はメカ娘に一票。彼女こそが民意だ！」
白木芙がスレに入った時、議論はまだ熱く続いていた。
参加者は全43名。1時間以上に渡る戦いの末、1位と2位はほぼ確定していた。
宣伝PVに登場した巨大メカが独走状態で、圧倒的な支持を集めていた。
その後に続くのは内部テストで、プレイヤーの突撃の後に運営が復活させたNPCだった。
3位以降は激しく順位が入れ替わっていた。
白木芙がスクロールしていくと、15位に自分の名前を見つけた。
【卑怯な謎の少女X】
「強豪が揃ってるな」
このランキングはかなり良い。彼女より上位にいるのはゲームのPVに登場したか、内部テストですでに人気を集めていた者たちだった。
彼女のような新参者がランクインするだけでも珍しい。
しかし、一連の演出のおかげで、彼女は強引に上位陣に食い込んだのだ！
白木芙は静かにうなずいた。
惜しい。登場時の演出がもう少し派手なら、もっとランキングを上げられたかもしれない。
彼女がスレを更新すると、驚くべきことが起きた。彼女の得票数が一気に108票も増え、15位から14位に躍り出たのだ。
えっ？
白木芙は目を疑い、慌ててもう一度更新した。
間違いではなかった。票数はさらに30票以上も増えている。
おかしい。
さっきまで1票、2票の微増だったのに。もしかして、誰かが票をまとめて投入したのか？
白木芙はスレッドを探り、ようやく状況を把握した。
発掘姫が大技を放っていたのだ。
発掘姫は静かに投票していたが、あるプレイヤーが「きれいなだけじゃすぐ飽きられる」と白木芙を評するのを見て、激怒した。
私の大好きな謎の少女Xを侮辱するな！
発掘姫はスキル【過剰解釈】を発動した。
「断言する。謎の少女Xは間違いなく重要なストーリーNPCだ！」
白木芙の登場はわずか数分、台詞もほんの数行だったが、彼女は2000字を超える小論文をしたため、白木芙がただ者ではないことを論じた。
「私の分析では、彼女は何らかの組織から野火帮に送り込まれた潜入捜査官だろう。メインストーリーに関わるかどうかは今後の検証が必要だが」
発掘姫を知らないプレイヤーはこの投稿に震撼した。
特に論文に悩む学生プレイヤーは、その筆力に脱帽するばかりだった。
なんでこんなに書けるんだ？
発掘姫を知るプレイヤーは即座に否定した。
「みんな解散しろ。発掘姫がまた発症した」
「発掘姫が当たることもあるが、発掘姫が当てられる確率は低い」
批判に対し、発掘姫は冷静そのもの。
どうでもいい。
嵐は倒れた木をさらに倒すことはできない！
「信じられない？ならば見ていなさい」
外れても知らんぷり、当たったら大きく宣伝すればいいだけだ！
発掘姫のこの【過剰解釈】は見事に効果を発揮し、白木芙に大量の注目を集めた。
本気で彼女のファンになった人もいる。
単に面白がっている参加する者もいる。
しかし目的がどうであれ、彼らは皆、白木芙に投票した。
1票、また1票、白木芙はその場で上昇した。
15位、14位、12位！
「10位だ、やばい、トップ10入りだ！」
「クソ！なんで投票しないんだ！投票しろ、全員投票しろ！」
他のNPCの支持者はこの状況に慌てふためいた。
審判！イカサマだ！
考える暇もなく、彼らも急いで援軍を求めた。
誰も、この当初はさほど注目されていなかった投票が、ゲーム開始以来最も熱いイベントの一つになるとは思っていなかった。
「6位だ！みんな！お前たちの熱意を俺の嫁に分けてくれ！」
「結束の力で、全ての障害を打ち破れ！」
わずか20分で、白木芙は15位から7位まで急上昇！
しかし、これが限界ではなかった。
30分で6位！
47分で5位！
4位を目指す過程で、激しい抵抗に遭った。
だが、それがどうした！
「我々は団結する！」
30分間の綱引きの末、白木芙は相手の票を使い果たし、投票終了時間ギリギリに4位を確保した。
そう、4位だ！
これは4人が試験に参加して4位という意味ではなく、43人中4位なのだ！
投票時間がもう少し長ければ、白木芙はあの露出の多い衣装で琴を弾く姐御を抜くことも可能だったかもしれない。
琴女はその圧倒的なビジュアルで、熱狂的な支持者を集めていたが、茶番を愛する者たちの刃も鋭い！
最終結果を見て、白木芙を支持する全てのプレイヤーが歓喜した。
「俺たちの勝利だ！」
「クソ！すげえ！」
もちろん、納得いかないプレイヤーもおり、3位と4位の優劣を延々と議論した。
「4位で満足しろ。3位とは大差なんだから」
「謎の少女Xがお前に何かしたか？」
「典型だな」
「お前、悔しくて仕方ないんだろ？」
「滑稽だ」
両者の争いは長引いたが決着はつかず、最後は「第二回で決着をつけよう」で落ち着いた。
「琴女こそ最高だ！」
「ふざけるな、謎の少女Xこそが最高だ！」
この論争は、結果的に白木芙にさらなる注目をもたらした。
白木芙：「いいね」
発掘姫は本当に慧眼の持ち主だ。
自身の登場がここまでの人気を呼ぶとは思っていなかった。これほど素晴らしいスタートはかつてない。
しかし、彼女はこの人気がいかに脆いものかも理解していた。
茶番を追う者たちは、すぐに去っていく。
今の彼女は、幼稚園の運動会で4位を取ったようなものだ。ゲームのストーリーが進むにつれ、より多くの強者が登場する。
バージョン1.0【暗星萌動】だけでも、『星団の上』はプレイヤーが自由に選択できる複数のテーマ別初心者惑星を開放する。
これらの惑星にはそれぞれメインストーリーがあり、その外にも多くの魅力的なサブストーリーが隠されている。そこからどれだけの人気NPCが生まれることか。
さらに、ゲーム公式サイトに名前の挙がる「転生帝国」「超新星戦団」「タイタン工業」といった宇宙規模の勢力が支配する居住惑星は、ガンジス川の砂の数ほど存在する。これら無数の星から、どれほどの英雄やヒロインが現れるだろう？
数えきれない。本当に数えきれない！
白木芙は心に決めた。
クソ。やってやる。
必ずや這い上がってみせる。
まずは実力を高めつつ、急増した人気を確固たるものにしていく。
白木芙は発掘姫の投稿を思い出した。
潜入捜査官？
悪くない設定だ。
発掘姫に感謝の意を込めて、この設定をお借りしよう！
そう考えながら、白木芙は自宅の近くまで来ていた。
顔を上げると、夕焼けに縁取られた道路脇の、染みだらけの【令去工場】の看板の下に、ひとりの人影が立っていた。
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