葉山昭平は美穂を腕に抱え、ぽっちゃりして見えたが、抱くと重くはなかった。
葉山昭平の腕の中に入った途端、先ほどまで騒いでいた美穂はすぐに静かになり、おとなしく葉山昭平の腕の中で横たわって、泣きも騒ぎもせず、じっとしていた。これに葉山昭平はなんだか達成感のようなものを感じた。
「お前、そんな年でまだ乳飲んでるの?」
葉山昭平は高橋おばの手にあった哺乳瓶を一瞥し、尋ねた。
美穂は首を横に振った。
「美穂ちゃんは三歳だよ。もうご飯食べられるの」
「俺もちょうどまだ食べてないし、一緒に食べに行くか?」
美穂は考えるまでもなく、すぐにこくこくとうなずいた。
葉山昭平は笑顔で美穂を抱きかかえ、大股でキッチンへ向かった。
美穂はご機嫌で葉山昭平の服にしがみついた。よし、成功だ!
葉山昭平は今はまだ学生で、しかも奇抜なハイライトを入れている。
しかし、小説を読んだ美穂は知っていた。
これらは全部見せかけだ!
彼は五年後には、全国トップクラスのハッカーになるのだ!
あなたの口座のお金を一銭残らずハッキングすることなど、朝飯前なんだぞ!
そんなレベルの大物を取り入ることは、一分でも遅れるわけにはいかないのだ!
葉山昭平は美穂を抱いたまま、食卓に座った。
朝食だけなのに、お金持ちの待遇はやはり違う。
普通の朝粥一杯でも、中には何種類もの具材が入っていて、彼女の哺乳瓶の中の味気ないミルクとは大違いだ。
葉山昭平は一口食べてみた。これはシーフード粥だ。
「食べるか?」
美穂は先ほど高橋おばが無理やり持たせた哺乳瓶を抱え、ちびちびと二口飲んだ。
「ちょっと試してみるか?」
葉山昭平は美穂を自分の膝の上に座らせ、片手で美穂を支えながら、もう片方の手で小さなスプーンを取り、軽く吹いて冷まし、それから美穂の口に運んだ。
美穂はちょっと躊躇したが、それでも口を開けた。
そしてもぐもぐと小さな口を動かした。うん、なかなかいい味だ。
兄妹二人は楽しそうに、一人が食べさせ一人が食べ、その光景は微笑ましいものだった。
やはり小さな子どもなので、粥を半分も食べないうちに、美穂はまん丸なお腹をさすりながら言い出した。
「美穂ちゃんはもう食べられないよ」
葉山昭平がスプーンを置くと、美穂は手を上げて葉山昭平の持っているスプーンを取ろうとした。
葉山昭平は美穂を見た。
「お腹いっぱいじゃなかったのか?」
美穂は首を横に振り、スプーンを持って一生懸命すくい、息を吹きかけて冷まし、葉山昭平の口元に差し出し、そして甘い笑顔を見せて言った。
「お兄ちゃんも食べて」
葉山昭平は自分の胸を押さえた。
クリティカルヒット!クリティカルヒットだ!
可愛すぎる!
俺の妹がどうしてこんなに可愛いんだ!
葉山昭平は思わず美穂の顔を両手で包み、頬にぎゅっとキスをした。
そのとき、美穂は突然背筋に悪寒を感じた。
強烈な威圧感だ!
「いつ帰ってきた?」
葉山猛の低い声が背後から響いた。
葉山昭平は驚いた鳥のように飛び上がった。
「お父さん、どうしてこんな時間に帰ってきたんですか」
葉山猛の視線は何気なく葉山昭平の腕の中の美穂に向けられた。
二人の仲はもうこんなに良くなったのか?
昨日まで「パパが一番好き」と言っていたじゃないか?
ふん、ちびっ子め。
「また授業をサボったのか?」
葉山猛の放つ気圧は恐ろしく低く、美穂でさえ体に悪寒を感じるほどだった。
葉山昭平は首をすくめ、慌てて説明した。
「サボってません。先生が病気になって、休みになったんです」
「ほう?どんな病気だ?」
葉山猛は目を細め、葉山昭平を見透かそうとするようだった。
「骨……骨折……」
葉山昭平は思わず腕の中の美穂を見た。
美穂はほぼ一目で葉山昭平の目に宿る救助信号を見抜き、葉山猛に向かって手を伸ばし、抱っこをせがんだ。
「パパ〜抱っこ」
葉山猛は淡々と一瞥した。
ほほう、連携プレーまで覚えたのか?
葉山猛がちょうど口を開こうとしたとき、突然立ち止まり、眉をひそめ、美穂の腕をつかんだ。
「これはどうしたんだ?」
美穂はうつむいた。もともと白くてつやつやした二本の腕に、いつの間にか小さな赤い斑点が浮かび上がっていた。