葉山修は三歳の子供がそれほど大人しくいられるとは期待していなかった。会議が終わると、彼はのろのろとした足取りで戻り始めた。
頭の中では既にオフィスの様々な光景を想像していて、それが彼を悩ませ、一度は戻って直面したくないとさえ思った。
彼が重度の強迫観念と潔癖症を持っていることは周知の事実だったが、この道はとても短く、どんなに歩いても直ぐにオフィスの入り口に着いてしまう。
修はドアの前で立ち止まり、深いため息をついた。彼がドアノブを回してドアを押し開けると、そして……
少し呆然とした。
彼のオフィスは依然として整然としていて、想像していたような汚れや散らかりはなかった。
そしてその小さな子供は大人しくソファーで丸くなって眠っており、誰かの親切な看護師の上着が掛けられていた。
彼女は半分うつ伏せになって熟睡しており、赤い小さな唇が時々もぐもぐと動き、桜色の可愛らしい頬がぷっくりと小さな手の上に押し付けられていた。
修はじっと彼女を見つめ、そして思わずその頬をつついてみた。
柔らかい……
見ていると少し可愛いと思えてきた。やはり素直な子供は嫌われることはないな。
彼は思わずもう一度つついてみた。
美穂がぼんやりと目を開けると、修は凍りついたように、ぎこちなく手を引っ込めた。
二人の目が合い、一方は静かさの中に少しの慌てを、もう一方は朦朧とした中に目覚めの戸惑いを感じていた。
まずい、修は思った。
この子が泣き出すに違いない。彼が全身を緊張させて警戒していると、美穂は小さな口を開けて、だらしなくあくびをした。
「あ……はぁ」美穂は上着を羽織ったまま起き上がり、小さな手で眠たげな目をこすった。
彼女のお腹がタイミング悪くぐぅっと鳴り、その音は二人にもはっきり聞こえた。
修は明らかに驚いた様子だった。
美穂の最初の反応は自分の小さなお腹を押さえることだった。ぐぅるるる……
また一度空腹の音が鳴り、美穂は恥ずかしそうに少し笑い、頭をかいて堂々と口を開いた。「お兄ちゃん、おなかすいた!」
驚いた後、修はまた不思議そうに固まった。「じゃあ……食べに行こうか」
普段は食堂で一人で食事をとる葉山主任だが、今日は突然小さな子供を連れていて、行き交う同僚たちは皆、好奇の目を向けてきた。