しかし、この瞬間、美咲は知らなかった。
葉山翔平の喉から流れ出た血が体内に入った時、それはすべて体内の血色の宝石に吸収されてしまったのだ。
元々暗赤色だった宝石は、たちまち艶やかな血の色の霞光を放った。
そして、まるで深淵の底から聞こえるような悪霊の「ケケケ」という奇妙な笑い声がかすかに響いてきた。
「ハッ、ハッ、ハッ……俺はついに目覚めたぞ、お前らは覚悟しておけ……」
「ハハハ……」
続いて、葉山翔平の体内に吸着していた血色の宝石は、一瞬で光の流れとなり、翔平の脳へと突入した。
それに続いて再び「ケケケ」という奇妙な笑い声が響く。「小僧、魂吸い開祖の俺に乗っ取られるのもお前の運命だ!」
「お前は外のあの小娘が好きなんだろう?俺がお前の体を乗っ取ったら、あの娘を俺の最初の媒介にしてやる。そうすればお前の願いも叶うというものだ!」
今、血色の宝石は葉山翔平の神識の心底に現れていた。
濁った心底の空間には、薄い七色の光の塊が空中に浮かんでいた。
かすかに七色の光の中に薄い人影が見えた。
魂吸い開祖の奇妙な声とともに、血色の宝石はその七色の光の塊へ急速に突進していった。
明らかに、光の塊の中には翔平の霊魂が包まれており、今、魂吸い開祖がしようとしていることは翔平の霊魂を飲み込み、体を乗っ取ることだった。
そうなれば、翔平はこの世界から完全に消え去ることになる。
光の塊の中で、翔平の霊魂は魂吸い開祖の奇妙な笑い声を聞き、恐怖で胸がいっぱいになった。
「お前は誰だ?なぜ俺の体の中にいるんだ!」
しかし、魂吸い開祖の「ケケケ」という奇妙な笑い声を聞いて、この突然現れた魂吸い開祖が自分を乗っ取って飲み込もうとしていることを知った。
さらに美咲さんを媒介にしようとしていると知り、翔平は本能的に恐怖の叫びを上げた。
「いや……許さない、俺の体を乗っ取って、美咲さんを傷つけるなんて絶対に許さない!」
血色の宝石が七色の光の塊に向かっている時、光の塊の中の翔平の霊魂が突然ヒステリックな怒りの咆哮を発した。
「魔物め、死んでも俺はお前の思い通りにはさせない!」
「くそっ、お前と徹底的にやるぞ!」
すると、七色の光の塊が血色の宝石に向かって突進した。
「ケケケ……本当に分をわきまえない小僧だ。俺がお前を乗っ取ろうとしているのに、真の神でさえお前を救えないぞ!」
「ガハハ……」
「小僧、おとなしく運命を受け入れろ!」
魂吸い開祖の甲高い奇妙な笑い声とともに、血色の宝石は一瞬で七色の光の塊と衝突した。
しかし、翔平の霊魂が魂吸い開祖の魂に勝てるはずもなかった。
宝石が七色の光の塊に突入するやいなや、中の翔平の霊魂を吸い込んだ。
「ああ……このやろう……魔物め、悔しい……悔しい……」
「お前と死に物狂いでやるぞ……」
「ハハハ……悔しくても仕方がない、俺に飲み込まれて乗っ取られるのはお前の幸運だ!」
しかし、魂吸い開祖が予想もしなかったことに、彼が翔平の霊魂を無理やり飲み込もうとした時、突然翔平の霊魂から金色の炎が爆発した。
「ああ……どうして……」
「天火……お前の霊魂の中にどうして上界の天火が……」
「ああ……悔しい、悔しい……」
突然爆発した金色の炎は瞬時に魂吸い開祖の霊魂を包み込み、あっという間に魂吸い開祖の魂は突然現れた天火によって浄化された。
そして、血赤色の小さな人影が翔平の弱々しい霊魂の近くに浮かんだ。
しかし奇妙なことに、血赤色の小人は突然砕け散り、無数の光の粒子となって、徐々に翔平の霊魂に溶け込んでいった。
「魂吸い開祖……」
「悔しい……悔しい……」
「ああ……」
「美咲さん……」
突然の悲痛な叫び声は、ベッドの傍らで眠っていた美咲を目覚めさせた。
「翔平……翔平、どうしたの……」
「お姉さんを怖がらせないで……」
病床に横たわる翔平が、目を固く閉じ、顔に苦痛と苦悩の表情を浮かべているのを見て、美咲の赤く腫れた目から再び涙があふれ出た。
「翔平……」
特に、翔平が夢の中でさえ自分の名前を呼んでいるのを聞いて、美咲はますます胸が刺されるような思いだった。
しかし、そのとき、病床の翔平が突然目を開き、一瞬、奇妙な血色の光がその目に閃いた。
そして翔平は病床から飛び起き、「ああ……俺は死んでない……」と叫んだ。
「翔平……」
泣き崩れていた美咲は、突然翔平がベッドから飛び起きるのを見て、思わず驚きの声を上げた。
「美咲さん……」
我に返った翔平は、涙にくれる美咲を見て、まるで別世界で再会したかのように、彼女を強く抱きしめた。
「よかった……美咲さん、俺は死んでない……あの魔物に乗っ取られなかった……」
「うう……翔平、ついに目覚めたのね……」
「よかった、ついに目覚めたわ……」
心身ともに疲れ果てた美咲は、目覚めた翔平を見て、思わず嗚咽を漏らした。
しかし、そのまま美咲は翔平の腕の中で気を失った。
「美咲さん……美咲さん……どうしたの……目を覚まして!」
突然美咲が腕の中で気を失い、翔平は大いに驚いて、目に涙を浮かべながら必死に呼びかけた。
病室での大騒ぎは当然、病院の当直看護師と医師の注意を引いた。
看護師と医師が急いで駆けつけると、翔平が目覚めているのを見て、皆は一瞬驚いた。
しかし、気を失った美咲を見て、当直医師は急いで前に出て、美咲の目を開いて診た。
「お姉さんは疲れ果てて気を失っただけだ。少し休めば目が覚めて何の問題もないよ」
医師はそう言うと振り返って歩き去った。
心配していた翔平は、医師の言葉を聞いてほっと息をついた。慌てて美咲をベッドに横たわらせ、自分は傍らに座って見守った。
涙に濡れた美咲の顔を見つめながら、翔平は心の中で感慨深く、先ほどの魂吸い開祖との死闘の場面を思い出していた。