「――――」
気が付くと、シーンはすでに地面に立っていた。
「ここが異世界……?」
目を開け、目の前の光景を見つめるシーンは、呆然としていた。
今、シーンは緑に囲まれた森の中に立っている。
周囲は木々に囲まれ、上からは穏やかな日差しが降り注いでいる。
見たこともない植物があちこちに生えており、鳥や動物の鳴き声は一切聞こえない。空気は重く、まるでシーンという異物がここに来ることを歓迎していないかのようだった。
「……まさか、すごいところに来てしまったのか?」
これがシーンの異世界に対する第一印象だった。
正直、シーンはまだ混乱していた。
自分に何が起きたのかは覚えているものの、突然異世界に来て、まったく見知らぬ場所に投げ込まれて、常識的なこと以外は何も知らない。しかも、この世界についても全くの無知。そんな状況で混乱しないわけがなかった。
だが、シーンには誰にも負けない特技があった。
それは、どんなに理不尽な状況でも、すぐに受け入れてしまうことだった。
それこそが、シーンが自分の運命を受け入れ、女神の頼みを聞いてこの異世界に来た理由だった。
「これも前世がこんな人間だったからなのか、それとも一度死んだことで心が変わったからなのか……」
シーンは自嘲気味に独り言をつぶやいた。
その時、シーンは手に違和感を覚え、無意識に目線を手元に移した。
その瞬間、シーンは驚愕した。
なんと、いつの間にかシーンの手の中に一振りの剣が現れていた。
それは全体が輝いており、同じく光を放つ宝石のような輝きを持つ剣だった。
大剣の形をしており、柄は金色で、柄の先端には金色の宝石がはめ込まれている。剣身は白く輝き、絶えず流れる光がその美しさを引き立てていた。
その剣を見て、シーンは思わず目を見開き、圧倒された。
だが、驚きの中で、シーンはその剣から何か異様な感覚を感じ取った。
それはまるで、この剣と自分が一体化したような感覚で、まるで互いが分かちがたく、ひとつであるかのように感じられた。
その感覚は、まるで自分を見ているかのような錯覚を覚えるほどだった。
さらに驚くべきことに、その剣を見つめていると、シーンの頭の中に一つのメッセージが現れた。
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【聖剣】
・専属:シーン。
・レベル+100。
・全スキルレベル+10。
・すべてのダメージを99%軽減。
・すべての負の状態免疫。
・鋭さは最大レベル。
・耐久度は最大。
・邪悪な存在に大きなダメージを与える。
・邪悪な力を浄化し、追い払う効果を持つ。
・使用者限定、譲渡不可、破壊不可、改造不可、干渉不可。
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「……冗談だろ?」
シーンは一瞬、茫然とした。
直感的に、シーンはこの剣がただ者ではないことを感じ取った。
女神の言っていたことに従えば、シーンはどうやら勇者らしい。その勇者には自分だけの聖剣があるのは、まあ、納得できることだろう。しかし、こうも効果が強力すぎるのではないか?
この世界でこの剣がどれほどの力を持つのかは分からないが、この効果の数々を見る限り、シーンは確信した。この剣は絶対におかしい。
具体的には、もしこれがゲームの武器だったら、バランスが崩れ、すぐに開発者が非難されること間違いなしだ。
しかも、それだけでは終わらなかった。
聖剣以外にも、シーンの頭の中にはさらに別のメッセージが現れた。
メッセージは二つの部分に分かれていた――【レベル】と【スキル】。
そのゲームのような表示に、シーンは眉をひそめた。
そして、シーンは意識を使って、これらの状態を自由に確認できることに気付いた。
まず、【レベル】の状態を確認してみる。
そこには「lv.1」と表示されていた。
シンプルで分かりやすく、シーンは自分がまさに初心者であることを理解した。
次に【スキル】の状態を確認すると、そこには現在シーンが持っているスキルと、「スキルポイント」というものが表示されていた。
スキルポイントの数値は「100」となっており、シーンにはそれが多いのか少ないのかも分からなかった。
そして、シーンが持っているスキルは二つだった。
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【天恩】
・ユニークスキル。
・アップグレード時、全能力タイプが最大値に。
・アップグレード時、スキルポイントの獲得量が最大値に。
・全てのスキルの取得条件が最小に。
・全てのスキルのアップグレード条件が最小に。
・永久有効、いかなる方法でもキャンセル不可。
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【至高神の祝福】
・特殊スキル。
・世界の加護を受ける。
・神族のみ有効、全ての条件が満たされる。
・神族のみ有効、全ての干渉を回避。
・神族のみ有効、全ての司職が発揮。
・神族のみ有効、全ての効果が増強。
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「……」
シーンは言葉を失った。
やはり、この二つのスキルがただ事ではないことを、シーンは強く感じていた。
具体的にどれほど強力なのか、この世界のことを何も知らないシーンには分からなかった。
だが、スキルの効果を見ただけでも、これはちょっと異常だと感じざるを得なかった。
まさか……?
「女神は、レベル1の俺に魔王を倒せって言いたいんじゃ……?」
シーンはその可能性を深く疑った。
しばらく悩んだ後、シーンは考えすぎても仕方ないと決め、こう考えた。
「まずは一歩ずつ進んでいこう。」
魔王を倒すにしても、まずは魔王を見つけないといけない。
そして、シーンは自分がその魔王を倒せるとは到底思えなかった。
そもそも、戦い方すら分からないのだ。伝説の聖剣を持っているからといって、無双できるわけではない。
魔王を倒せだって?
その姿を想像するだけで、シーンは震え上がる。
「魔王を倒すなんて非現実的なことより、まずはこの森をどうやって抜けるかを考えたほうがいい。」
周囲を見渡し、シーンはここに長くいるべきではないと判断した。
天候を確認し、太陽の位置から時間帯を推測した後、方角を決め、高い木に登ってしばらく周囲を見渡し、一つの方向を選んだ。
その後、シーンは聖剣で道を切り開きながら、森の中を進み始めた。
そのシーンの背後で、空を黒い影が素早く横切り、森の中を歩くシーンに鋭い視線を向けていた。